夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『あんのこと』

2024年06月23日 | 映画(あ行)
『あんのこと』
監督:入江悠
出演:河合優実,佐藤二朗,稲垣吾郎,河井青葉,広岡由里子,早見あかり他
 
なんばパークスシネマにて2本ハシゴの2本目。
 
入江悠監督が目に留まった三面記事をモチーフに撮った作品。
『愛なのに』(2021)を観て以来、大注目している河合優実は、今や大変な売れっ子のようで。
 
幼い頃から母親に虐待され、売春で金を稼いでくることを強いられていた杏(河合優実)、21歳。
覚醒剤を打って体を売っているときに相手の男が倒れたことから警察に捕まる。
 
彼女に更生の道を示したのが刑事の多々羅(佐藤二朗)。
一匹狼で態度もでかい彼は組織には馴染まず、よく思わない者が多いが、
生まれて初めて信用できる大人に出会った杏は、次第に多々羅に心を開きはじめる。
 
多々羅の友人で週刊誌記者の桐野(稲垣吾郎)もそんな杏のことを気にかけ、
3人でラーメンを食べに行くなど、行動を共にすることが増える。
 
しっかりと更生への道を歩んでいるかに見えた杏だったが、
彼女を稼ぎ手としか考えていない母親の春海(河井青葉)は、杏を家に連れ戻そうと必死。
自分に優しい祖母の恵美子(広岡由里子)の力にはなりたいと、
介護職の資格を取ろうと真面目に働く杏のもとへ春海が乗り込んできて……。
 
機能不全家族というのですね。
河合青葉演じる母親は『市子』(2023)の母親像とかぶるものの、あっちがマシにすら思えます。
あっちは障害を抱える娘のためという面がまだあったけれど、こっちは一切なし。
小学生の娘に体を売らせる母親ってどんなですか。娘を愛していると言えますか。
 
せっかく毒親から離れて一人暮らしを始めても、コロナ禍がそのじゃまをする。
小学校すらまともに行かずに読み書きが難しい杏が学ぶことに喜びを見いだすと休校になり、
働いていた介護施設も職員を減らさざるを得なくなる。
生きることが本当に大変でもがき続ける杏を見ているのがつらい。
 
ひと筋の光も見えません。
小さな記事の中にいた杏が、今こうして映像の中の主人公となったことで少しは救われたかどうか。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ハロルド・フライのまさか... | トップ | 35回目の『トップガン マーヴ... »

映画(あ行)」カテゴリの最新記事