『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』(原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry)
監督:ヘティ・マクドナルド
出演:ジム・ブロードベント,ペネロープ・ウィルトン,リンダ・バセット,アール・ケイヴ,
ジョセフ・マイデル,モニカ・ゴスマン,ダニエル・フログソン,クレア・ラッシュブルック他
平日も終業後に劇場通いを再開しました。
なんばパークスシネマにて2本ハシゴの1本目。
原作はイギリス出身の作家レイチェル・ジョイスの世界的同名ベストセラー小説、2012年の出版。
面白いのはこのあと数年空けて、本作の主人公ハロルドが会いに行ったクイーニーの視点と
10年空けてからハロルドの妻モーリーンの視点で書いた小説も上梓していること。
定年退職して年金生活を送るようになって久しいハロルド・フライ。
ある日、ビール会社で働いていた頃の同僚女性クイーニーから手紙が届き、
クイーニーに返事を書き、投函しようと出かけたハロルドは、ふと考える。
このままクイーニーに直接会いに行くのはどうだろうか。
そしてハロルドは本当に、クイーニーがいるホスピスを目指して歩きはじめて……。
郵便ポストへ行っただけのはずの夫が帰ってこないから、妻のモーリーンは当然心配します。
投函するべき手紙と財布だけを携えて出かけた夫。携帯電話は家のテーブルの上。
捜索願いを出そうと警察に出向いて「夫は認知症」と言うと動いてくれそうになるけれど、
「医者にそう診断されたわけではないけれど、携帯を置いて出かけたから」と告げると、
そんなことでは認知症ということにはならないと呆れ顔をされてしまう。
ハロルドは後ほどちゃんと公衆電話から連絡してきて、
クイーニーに会いに行くことにしたのだとモーリーンに話します。
そんなこと言われたってモーリーンは納得できません。
だって、家からホスピスまでは800キロも離れているのですから。
実はハロルドとモーリーンは一人息子を喪っています。しかも息子の自死。
それを受け入れられない妻は夫を責め立て、以来ふたりは仮面夫婦でした。
夫が同僚だった女性に会いに行くとなると、そりゃ気持ちは微妙でしょう。
しかもモーリーンは以前クイーニーがハロルドに会いに来たことを隠したまま今まで来てます。
わざわざ歩いて行かなくてもと思うところ、歩いている間にわかることもある。
会いに行ったところでクイーニーの病が治るわけもない。
着くまで生きていろと言われたってと思うけれど、
そういえば私も母が「『また』あるかなぁ」というたびに、
「私が来るまで待っててくれるでしょ」と言ったのを思い出します。
ガラスのきらめきが綺麗でした。誰もがきっと、このきらめきを思い出す瞬間がある。