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2022年11月に読んだ本まとめ

2022年12月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2022年11月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2971ページ
ナイス数:886ナイス

■今宵も喫茶ドードーのキッチンで。 (双葉文庫)
コロナ下にあってこその物語。この連作短編集に登場する主人公たちは、ていねいな暮らしや免疫力、ワクチン接種、在宅勤務、オンライン会議などにさまざまな思いを抱いているようです。喫茶ドードーの店主は相当変わり者とお見受けしますが、飲み物とお料理お菓子が彼女たちの心を癒やす。絵本にでもなりそうな雰囲気で、イラスト入りで読みたかった。第4話までは店主の様子を描くときだけ「ですます調」なのも面白い。ご存じでしたか、ブータンってインフラは進んでいないけどネット環境は発達していて、江戸時代にスマホがあるみたいな国だって。
読了日:11月01日 著者:標野 凪

■その本は
160頁目で「悪魔にも若気の至りがあるのか」と笑い、第12夜174頁目でさざなみのような感動が押し寄せる。そうだ、だから本がある、私は本を読むのだと。メッセージを受け取る人が世界にたったひとりであっとしても、本がこの世に存在する意味があると。エピローグ、王様逝去の様子にまた胸打たれていたのに。189頁目で「やられた」とひっくり返って笑いました。又吉さんとの共著ゆえ油断して、ヨシタケさんの絵本にオチが付き物だということを忘れていた。たとえどこにも行けなくても、その本を開けば世界中いつの時代へも飛んでゆける。
読了日:11月03日 著者:ヨシタケシンスケ,又吉直樹

■Aではない君と (講談社文庫)
心身共にそれなりに元気なときじゃないと読めない薬丸さん。妻と離婚したものの仕事は絶好調だし、新しい彼女もできて毎日が楽しい。唯一の気がかりは妻が引き取った息子のことぐらいだが、会うのは数ヶ月に一度。そんな折、息子が同級生を殺した罪で捕まったとしたら。両親、特に父親が「どうするどうする」と悩むだけの約470頁と言えなくもありません。だけど一緒になって深く考えさせられてしまう。心と体、どちらを殺すほうが悪いのかについては父親の返答に唸りました。著者が誰であろうと京極さんの選評にはついつい注目してしまう私です。
読了日:11月08日 著者:薬丸 岳

■むらさきのスカートの女 (朝日文庫)
変ですよね、むらさきのスカートの女。でもそれよりももっと変なのが、むらさきのスカートの女に異常に執着している語り手。むらさきのスカートの女のために席を空け、求人誌をさりげなく置き、自分の勤め先に彼女が就職するのを待ちわび、日々の彼女をつぶさに観察しつづける。あなたの生活こそどうなっているのですかと言いたくなる。正体がわかるシーンは予期せぬサスペンスを見せられた気分。芥川賞作家なのに読みやすく、だからってどんな小説だったかと人には説明しづらく、なのにクセになる作家。まさにスルメイカのような人。ずっと書いて。
読了日:11月13日 著者:今村 夏子

■ミュージアムグッズのチカラ
博物館に勤めています。自分が働いている博物館が出ているとなるとついつい嬉しくて買ってしまう。楽しい本ではありますが、熟読するには字が小さめでツライ。写真中心に眺めては気になる箇所を拾い読みする感じになり、1冊読みましたと言うのは後ろめたいような気が(笑)。載ってますよとミュージアムショップに言いに行ったら、該当する販売品の前にドーンとこの本が鎮座ましましていました。撮影しに来られているのだから当たり前か。失礼しました~。ウキウキわくわくするミュージアムグッズ。毎年クリスマスセール期間が来るのが楽しみです。
読了日:11月14日 著者:大澤夏美

■母性 (新潮文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】5年以上前に読んだ本の内容を覚えているはずもなく、とても不愉快な気分になりながら読んで最後に呆然としたことだけを思い出す。とすると、この映画版はずいぶんと救われるラストだから、原作とは趣を異にしているのか。高畑淳子演じる義母が菓子をほおばるシーンや、大地真央演じる母親の最期のシーンはあんなに写さなくてもいいのに。戸田恵梨香のこんな疲れた顔を見ると結構堪えます。どれだけ虐められようが、義母に敬意を払うよう努める姿は凄い。所詮、幸か不幸かなんて人が決めるものじゃない。
読了日:11月24日 著者:湊 かなえ

■渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
地味に公開されてひっそり終映になった感のある映画ですが、とても気に入ったので原作を購入。良い感じに歳を取っているエリック・バナに見惚れ、そのイメージで原作も読む。自殺を装って銃殺してバレないものなのかというのは映画版を観たときにも引っかかったことですが、それが瑣末なことに思えるぐらい面白かった。ただ、映画版を観ていなければ、読むのにもっと時間がかかったことでしょう。この分厚さならやはり先に映画版を観たい。あっと驚く真相。こんな職業の人が犯人であるはずがないと頭のどこかで思っているのかもしれません。余韻大。
読了日:11月26日 著者:ジェイン ハーパー

■ファミリーランド (角川ホラー文庫)
生まれも育ちも阪急宝塚沿線の者としてはタイトルからしてウキウキ。しかし内容は決してウキウキできるものではありません。澤村さんってこんなSFも書いちゃうのか。連作短編とまでは言わないけれど、あらこの人という人物が後のお話にもちらりと姿を現します。日々の生活も出産も葬式もシステム化されて人間の考える余地なし。果たして狂っているのは誰なのでしょう。会話にしばしば登場する映画の名前や亡くなった芸能人=逸見(いつみ)さんを知っていれば、その頃が懐かしくてノスタルジーを感じたりも。今のお葬式の良さを改めて教えられる。
読了日:11月27日 著者:澤村伊智

■背中の蜘蛛 (双葉文庫 ほ 10-03)
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』(2014)と『スノーデン』(2016)を公開当時に観ています。最初に観たとき、スノーデン氏のことを被害妄想に囚われたおかしな人だとか思えませんでした。事実だと知って、こんな恐ろしいことがあってよいものだろうかと衝撃を受けました。犯人は誰かと推理しながら読むはずだった本作も、読み始めたら犯人のことはどうでもいい。こんなふうに自分のやることなすことすべてが政府に監視されているのだとしたら怖すぎる。犯罪に無関係の気にくわない人を潰すことも可能。メール一語にも気をつけて。
読了日:11月30日 著者:誉田 哲也

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