夜な夜なシネマ

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夏休みに読みたい本

2013年08月09日 | 映画(番外編:映画と読み物)
シャンシャンやかましい蝉の声を聞くと、夏を描いた児童文学が読みたくなります。
私が子どもだったころは、シャンシャンよりもミンミンだった気はしますけれども。

数年前に読んだ湯本香樹実の『夏の庭 The Friends』が大のお気に入りですが、
今年も何冊か、小学校時代の夏休みが恋しくなる本に出会いました。

1冊目は笹生陽子の『ぼくらのサイテーの夏』。
小学6年生のぼく(桃井)らは、1学期の終業式の日、「階段落ち」ゲームで他クラスと対決。
ぼくが負傷したせいで、危険なゲームが先生にバレ、こっぴどく叱られる。

罰として夏休み中のプール掃除をさせられることに。
仲良しの同級生はなんだかんだと言い訳を並べて逃げ出してしまい、
結局一緒にプール掃除をしてもいいと挙手したのは、他クラスの栗田。

先生の「モモクリ3年と言うし」などというアホな冗談にげんなりしながら、
ぼくは仕方なくプール掃除にかよいはじめるのだが……。

同級生が噂好きの母親から仕入れてきた話によれば、栗田の家庭はホーカイ中。
ホーカイの意味もわからないのに、掃除から逃げた奴らは言いたい放題。
それをちょっと冷めた目で見つつ、でもなんとなく栗田に話しかけられずにいるぼく。

そんなぼくも、実はいつホーカイしてもおかしくない家庭にいます。
エリートコースまっしぐらだったはずの兄がひきこもり、たまに暴れる。
母親は落ち着きをなくしておろおろ、父親は単身赴任中。
誰かにぼやきたくとも噂の的にはなりたくありません。

ぼくが栗田のことを信用できるかもと思ったそもそものきっかけは、
栗田が時間を守るやつだとわかったから。
のちに栗田が笑って語る、父親からの教え。
「世間に信用されたかったら、まず約束を守ること、人の時間を盗まないこと。
 時間は目に見えないけど、でも、ぜったい盗んじゃダメだって」。

栗田の妹は心の病にかかっていますが、ぼくの兄が彼女の絵の才能を見いだします。
ぼくが兄を遊園地へ連れ出して過ごす時間にも胸がキュンキュン。

終始一人称でぼくの心情を可笑しくも細やかに描く、サイコーの夏の物語です。

2冊目は佐藤多佳子の『サマータイム』。
小学5年生のぼく、進は、1つ上の姉、佳奈とふたり姉弟。
夏休み、今にも雨が降りそうな天気の日、進はプールへ。
案の定どしゃぶりの雨に遭い、そのなかでもがくように泳ぐ男子を見かける。

彼は事故で左腕をなくした2つ上の広一。
進と同じ団地内に住んでいるとわかり、プールからより近い広一の家で服を借りることに。
ピアニストの母親と暮らす広一は、右手だけで力強い“サマータイム”を弾いてみせる。

後日、服を返しに広一宅へ向かうと、なぜか佳奈までついてくる。
自転車に乗ることをあきらめていた広一に、佳奈は乗り方を教えると言い出し……。

ぼくの夏の話ではじまりますが、季節は移り変わり、主人公も佳奈や広一へ。
語り手が変わるたびに明かされるあんな出来事こんな気持ちに切なさも。

どちらも夏が来るたびに読みたくなりそうな本でした。

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