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『福田村事件』

2023年09月09日 | 映画(は行)
『福田村事件』
監督:森達也
出演:井浦新,田中麗奈,永山瑛太,東出昌大,コムアイ,木竜麻生,松浦祐也,向里祐香,
   杉田雷麟,カトウシンスケ,ピエール瀧,水道橋博士,豊原功補,柄本明他
 
シネ・リーブル梅田にて。
同日、森達也監督があちこち飛び回って舞台挨拶に臨んでいらっしゃった模様。
第七藝術劇場の舞台挨拶付きの回は早々とチケット完売し、
シネ・リーブル梅田でも同じく舞台挨拶付きの回は完売していました。
私は北新地でひとりランチした後に、通常上映の回を前日に予約して鑑賞しましたが、
こちらも入場時には満席になっていました。いやはや、凄い話題作になっています。
 
森監督といえば、オウム真理教関連の『A』(1998)、『A2』(2001)、
東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんを追った『i 新聞記者ドキュメント』(2019)など、
これまでは社会派のドキュメンタリー作品を撮ってこられた方。
本作は実在の事件を基にはしていますが、同監督初の劇映画なのだそうです。
 
1923(大正12)年、千葉県東葛飾郡福田村(現・野田市)。
日本統治下の京城に教師として赴任していた澤田智一(井浦新)は、
妻の静子(田中麗奈)と共に郷里であるこの村に戻ってくる。
 
同時期、四国から関東に向けて出発したのが沼部新助(永山瑛太)ら15人。
彼らは、薬売りの行商の旅に出て、やがて福田村に到着する。
 
9月1日、関東大震災に見舞われると、村にさまざまな流言飛語が飛び交う。
「朝鮮人が襲ってくる」などという噂を聞いた村人たちは、自警団を結成して一帯を警戒。
そこを折悪く通りかかった新助らのことを朝鮮人ではないかと疑うと、
村人を落ち着かせようとする村長の田向龍一(豊原功補)や船頭の田中倉蔵(東出昌大)を振り払う。
村人たちは15人を取り囲むと斬りつけたり撃ったり、皆殺しにしようとして……。
 
おぞましいです。
事実が忠実に再現されているのだとしたら、まともな思考回路を持っていた人もいるにはいる。
けれども、疑念に囚われて暴徒と化した人々には何を言っても無駄。
子どもや妊婦まで躊躇することなく殺してしまうとは、どうなっているのか。
 
新助らはもともと被差別部落の出身で、その日暮らすのも稼ぎがなければ無理だから、
富山の薬売りのように後から薬代を回収する商売の仕方では生きていけません。
生まれたときから差別を受けて、行商先では朝鮮人と疑われて殺されて。
しかし、「この人たちが本当に日本人だったらどうするんだ」という声に対して、
「朝鮮人だったら殺してもいいのか」と叫ぶ新助の声に、その通りだよ、そもそもおかしいよと思う。
 
この事実は村の秘密として長らく隠されていたそうで、50年以上経ってようやく調査が始められたとのこと。
そして昨年、犠牲者の追悼式がおこなわれ、100年経った今、本作がつくられました。
 
なかったことにはできません。知っておかなければいけない事実。

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