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『チャイコフスキーの妻』

2024年09月25日 | 映画(た行)
『チャイコフスキーの妻』(原題:Zhena Chaikovskogo)
監督:キリル・セレブレニコフ
出演:アリョーナ・ミハイロヴァ,オジン・ルンド・バイロン,フィリップ・アヴデーエフ,ミロン・フョードロフ,
   ヴァルヴァラ・シュミコワ,ウラジーミル・ミシュコーフ,アレクサンドル・ゴルチーリン他
 
仕事帰りにテアトル梅田にて2本ハシゴの1本目。
 
眠くなりそうで避けていたロシア/フランス/スイス作品なのですが、
その昔、が自分のお葬式ではチャイコフスキーの曲をかけてほしいと言っていたため、
ならばチャイコフスキーの映画を観ておこうと思い直して。
 
ロシアの天才作曲家と崇められるピョートル・チャイコフスキーは、
その妻アントニーナとの関係に苦しんだことで知られています。
と言っても私は知らなかったので、鑑賞前にウィキを読み、付け焼き刃の知識のみ。
 
ある宴に出席したさい、アントニーナは輪の中心にいたピョートルにひと目惚れ。
8つ上の彼になんとか振り向いてほしいと思い、ラブレターを送り続けると、
女性にはまるで興味のなかったピョートルがやってきて、
兄妹のような関係ということでよいならばとアントニーナに求婚する。
 
1877年に挙式して夫婦となるが、ピョートルにとっては苦痛でしかない時間が始まる。
彼に尽くそうとするアントニーナのことがただただ鬱陶しいうえに、
一応は地方貴族だった彼女が用意するはずだった持参金が聞いていた額と違う。
ひとりならば働かずともなんとかなっていた暮らしの質がどんどん下がり、
このままでは家ごとアントニーナに持って行かれそうだと考え、離婚を願う。
 
アントニーナの顔も見たくないピョートルは家を出たまま帰らず、
ふた月ともたずにふたりの結婚生活は破綻。
しかしアントニーナは「チャイコフスキーの妻」であることに固執して……。
 
演奏のシーンはほとんどないので、音楽映画をイメージして観に行くと残念に思うでしょう。
チャイコフスキーの即興演奏や、モスクワ音楽院に学んだアントニーナのささやかなピアノ演奏、
あとはいくつかの演奏会のシーンがあるのみです。
 
アントニーナは悪妻と言われているようですが、きっと誰と結婚してもチャイコフスキーは変わらなかった。
結婚そのものが彼には不向きで、家族も友人たちもそれをわかっているから、
別れるようにとアントニーナに忠告するけれど、彼女は聞き入れることができません。
 
そもそも彼女がここまで彼に入れ込む理由がわかりません。
ほかに類を見ない大人の男性を感じたからなのか、チャイコフスキーだから近づいたのか。
彼が偉大な音楽家だなんて私は知らなかったのよと言うけれど、嘘ですよね。
 
冒頭はチャイコフスキーの葬儀のシーンで始まります。
あくまで彼の妻としての存在感を放っていたかったのに、死んだ彼から顔も見たくないと言われる。
ここまで嫌われても愛し続けるのは、イカれているとしか言えないかも。
 
彼の死後はほとんど精神病院で過ごしたというアントニーナ。哀れです。
本作の鑑賞前日に観た『アビゲイル』では“白鳥の湖”が流れていたのが奇遇。
私がチャイコフスキーに呼ばれたか。

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