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『有り、触れた、未来』

2023年03月22日 | 映画(あ行)
『有り、触れた、未来』
監督:山本透
出演:桜庭ななみ,碧山さえ,鶴丸愛莉,松浦慎一郎,高橋努,宮澤佑,舞木ひと美,高品雄基,
   谷口翔太,岩田華怜,金澤美穂,原日出子,仙道敦子,杉本哲太,手塚理美,北村有起哉他
 
109シネマズ箕面にて。
 
何の前知識もなく観に行きました。他作品はすでに観たものばかりだったから。
そうしたら、東日本大震災で大切な誰かを亡くした人が多く登場する作品でした。
原案は斎藤幸男の『生かされて生きる 震災を語り継ぐ』。
 
震災だけではなく、事故で亡くなった誰かや病で死にゆく誰かを想う人たちの群像劇です。
10年前の当時と
 
佐々木愛実(桜庭ななみ)は、一緒にバンドを組んでいた恋人・安田和樹(松代大介)を交通事故で失う。
10年後、保育士として働いている彼女は、中学教諭の吉田悠二(宮澤佑)と婚約中。
捨てられずにいた和樹の遺品をようやく処分することにしたが、
パソコンの中に和樹が作詞作曲した新譜を見つけ、この曲を演奏したいと考える。
過去のことを何もかも知っている悠二は、自分たちの結婚式で演奏するよう、愛実に提案する。
 
悠二は自分が担任を務めるクラスの女子生徒・里見結莉(碧山さえ)のことが気がかり。
三者面談の希望日を教えてほしいと伝えているのだが、
どうやら結莉の家庭はそれを相談できるような状況ではないらしい。
 
結莉は父親の健昭(北村有起哉)、祖母の文子(手塚理美)と三人暮らし。
震災で母親と兄、祖父をいっぺんに失って以来、健昭は仕事にたまに行く程度で後はずっと酒浸り。
このままだと自分が進学できないかもしれないと結莉は思っている。
 
愛実と結莉を軸に、さまざまな繋がりがあることが私たちにはわかってきます。
 
愛実の両親は離婚していて、父親は居酒屋を営む本堂真治(杉本哲太)、母親は佐々木有美子(仙道敦子)。
末期癌に冒されている有美子は、今も頼れる元夫を訪ねます。
なんとか愛実の結婚式には元気な姿で参列したいと思いながら。
 
悠二とその兄・光一(松浦慎一郎)は震災で両親を亡くし、光一は悠二にとって兄であり親でもある存在。
仕事をしながらボクシングを続ける光一は、ランキングほぼ最下位に近いプロボクサーですが、
妻・若菜(金澤美穂)の理解を得て、自分の拳が誰かに届くまではやめないと誓っています。
 
愛実の親友・大島蒼衣(舞木ひと美)は地元の小さな劇団に所属し、
「魂の物語」を演じるため、団員たちと意見を戦わせながら奮闘中。
そんな彼女がふと見かけたのは、今にも電車に飛び込もうとしている結莉でした。
 
和樹を轢き逃げした犯人で、その後はヤクザになった男性・須藤昇降(高橋努)。
泥酔して路上で倒れていた健昭を起こしてやるのが彼。
何があったか知らねえけど、人間転がり始めたら止まらねぇよと健昭を諫めます。
 
震災を絡めた話は少し苦手だったりします。
偽善であっても何もしないよりはいいとわかってはいるけれど、偽善に思えてしまうことも多くて。
 
でも本作はいろいろなシーンが心に沁みました。
北村有起哉演じる健昭のダメ男っぷりが凄いのに、強くは叱らない彼の母・文子。
甘いよなぁなんて思っているときはまだ震災の傷だなんてわかりません。
ついに結莉が学校から呼ばれ、文子が同行して赴いたとき、
淵上泰史演じる学年主任の口から発せられる信じがたい言葉。
愛情不足だとか、家族みんなで頑張ってとか、よくもそんなことを。
それに対して、文子は結莉をその場から帰らせ、震災の日のことを語り始めます。
生きているだけで、頑張っていることになるんですよと。
 
立ち直れない父親を見て、自分が死んでしまえばよかったと結莉。
ようやく前を向いた父親に結莉が抱きつくシーンでは涙がこぼれました。
 
バーのママ役に麻生久美子、光一のトレーナー役に萩原聖人、和樹の母親役に原日出子
ほとんどカメオ出演ですが、何気なく豪華なキャストです。
 
北村有起哉といえば、実の奥様である高野志穂と共演したAmazonプライムのCMが、
キモいなどと言われて不評だったという話を聞いたとき、
そりゃ確かにイケメンには程遠いけどさぁ、凄い役者なのよ北村さんは。
キモいなんて言うのは役者としての彼を知らん人だよねぇと心を痛めた私です。(^^;

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