『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(原題:The Holdovers)
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ,ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ,ドミニク・セッサ,キャリー・プレストン,
ブレイディ・ヘプナー,イアン・ドリー,ジム・カプラン,ジリアン・ヴィグマン,テイト・ドノヴァン他
TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『九十歳。何がめでたい』の次に。
これが6年ぶりの監督作となるアレクサンダー・ペイン。
ペイン監督といえばやっぱり『サイドウェイ』(2004)で、あれを超える同監督作品は私の中では未だなし。
だけど、同じくポール・ジアマッティを主演に起用した本作はとても好きになりました。
1970年12月。
生徒はもとより教師の大半もそれぞれの実家へ帰るなどして休暇を過ごそうというなか、
歴史学のベテラン教師ポール・ハナムは校長から「子守役」を命じられる。
ほぼ全員が寮を去るといっても、家庭の事情から5人だけが居残ることになったから。
バートン校には富裕層の子どもたちが多い。
親は多額の寄付金を積んで、息子がたとえアホでも良い成績をつけるよう学校に望んでいる。
教師たちは皆そのとおりにするが、ハナムだけはまったく迎合せず正直に採点。
そのせいで生徒たちから嫌われるのはもちろんのこと、教師の間でも嫌われている。
そんなハナムと共に2週間を過ごすはずだった5人の生徒たちだったが、
うち1人の親が予定を変更して息子をスキーに連れて行きたいと、ヘリコプターで迎えに来る。
ほかの生徒たちも一緒に連れて行ってもよいとのことで、
ハナムがそれぞれの親に電話したところ、うち3人の親が了承。
しかしアンガス・タリ―の親とだけは連絡がつかず、親の承諾なしには行かせられないと、
タリーひとりがハナムと寮に残ることを余儀なくされてしまい……。
“holdovers”とは「残留物」の意味なのだそうです。
寮にはハナムとタリーともうひとり、息子をベトナム戦争で亡くした料理長メアリー。
ハナムは頑固で皮肉屋のうえに見た目も冴えなくて、斜視でトリメチルアミン尿症。
好かれる要素なんてひとつもないからこんな嫌みったらしい人間になるのか、
それともこんなに嫌みったらしいから好かれないのか。
たとえ魚の腐ったようなにおいがしようとも、メアリーだけがハナムに普通に接します。
一方のアンガスもたいした皮肉屋。
だけど家庭のことで深い傷を抱えているのだと察せられます。
厄介なハナムとタリー、そして優しくて適度に厳しいメアリー。
彼らの過ごす時間がとてもいい。
ボストンの美術館で、ハナムがタリーに古代史について説明するシーンは
思わず真剣に耳を傾けたくなりました。ホント、授業がこんなだといいのに。
ペイン監督のことだから、超ハッピーエンドとはいかないところも切なくて○。
ハナムの行く先に小さくてもいいから幸せが転がっているように祈るのみ。
この余韻が大好きです。