『スペンサー ダイアナの決意』(原題:Spencer)
監督:パブロ・ラライン
出演:クリステン・スチュワート,ジャック・ファーシング,ティモシー・スポール,
ショーン・ハリス,サリー・ホーキンス,ステラ・ゴネット,エイミー・マンソン他
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
「実際の悲劇に基づく寓話」だというテロップが最初に表示されます。
英国王室の中で追い詰められていくダイアナ妃の心情に迫った作品です。
公開直前の時期にまさかエリザベス女王がお亡くなりになるとは。
1991年のクリスマスシーズン。
ノーフォーク州サンドリンガムにあるチャールズ3世の別邸“サンドリンガム・ハウス”に
エリザベス女王をはじめとする英国ロイヤルファミリーが集まる。
チャールズ皇太子の不倫が取り沙汰されているが、皇太子自身が責められることはない。
皇太子妃であるダイアナは誰にも思いを打ち明けられず、孤立した状態。
衣装係のマギーだけがダイアナの話し相手なのに、チャールズはマギーを解雇しようとする。
息子の王子ふたり、ウィリアムとハリーは、母ダイアナのことを案ずるが、
やりたくない狩猟も父チャールズから命じられてはやらないわけにいかない。
そんな息子たちを見ていて、ダイアナはあることを決断するのだが……。
ダイアナ妃を演じるのはクリステン・スチュワート。
わりとやさぐれたイメージがあるので、こんな気品を要する役に抜擢されたことに違和感がありました。
事実、冒頭で彼女が自ら車を運転してサンドリンガム・ハウスに向かう途中、
道に迷って立ち寄ったダイナーで言葉を発するシーンを見たときは無理でしょと思ったほど。
ところが時間が経過するにつれて、彼女が本物らしく見えてくる。
ヴェールをかぶった顔など、ダイアナ妃にとても似ていました。
ひとりでイライラを募らせて、ロイヤルファミリーが一堂に会す場には必ず遅刻。
不機嫌な表情を見せて退席したかと思えば、トイレで吐いていたり。
衣装係がシーン毎に用意した服をわざと間違えて着たり、そりゃもう周囲は困るでしょう。
わがままし放題の印象も受けますが、こんな堅苦しい日々を送る彼女に同情したくなる。
ロイヤルファミリーの慣習もわかって面白い。
クリスマスにサンドリンガム・ハウスに到着するとまず体重測定。
帰りにまた体重を測り、1キロ以上増えていれば「楽しんだ」ということ。
体重が楽しんだかどうかの目安になるなんて。
衣装にしても、自分ではいっさい選べない。
朝食の席に着くとき、教会に礼拝に行くとき、すべて事細かに決められています。
パパラッチに狙われないように、着替えるときは必ずカーテンを。
それを怠った衣装係は無能の烙印を押されるわけですね。
ダイアナ妃が愛読していたのは、16世紀に処刑されたイングランド王妃アン・ブーリンの伝記。
そちらにも興味が湧きます。
ダイアナ妃は何を想う。