2022年10月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2802ページ
ナイス数:974ナイス
■#真相をお話しします
記憶に残る話かと言われるとそんなことはない。余韻に浸れそうな話かと言われるとそれもそんなことはない。すぐに忘れてしまいそうではあるけれど、今の時代に本当にあっても不思議じゃない話で、しかもとても嫌な感じ。目の前に血まで飛んできそうな話もあります。特に面白かったのは最終話の「#拡散希望」でしょうか。生まれたときから自分がこんなものに使われていたと知ったら、そりゃもう親を抹殺したくなる。そしてそれすらネタになる。著者のファンにはならないとしても、この読みやすさ。この手の怖い短編をこれからもお待ちしています。
読了日:10月04日 著者:結城 真一郎
■ワニの町へ来たスパイ (創元推理文庫)
CIAエージェントの女性が訳あって田舎町に身を隠すことに。しかも自分とは真逆のタイプになりすまして。私は頭の中にシャーリーズ・セロンを思い描きました。もっと若い女性なのでしょうけれど、アラフィフになっても美しく颯爽としている彼女のイメージがピッタリ。ひたすら目立たないようにしなければならないのに、彼女が立ち寄る先では何かが起こる。舌打ちが聞こえて来そうで可笑しい。婆様ふたりが最高です。チャーミング保安官にはジョシュ・デュアメルとかどうでしょ。もうちょっと知名度の高い俳優のほうがいいかしら。とにかく楽しい!
読了日:10月07日 著者:ジャナ・デリオン
■傑作はまだ (文春文庫 せ 8-4)
幾度も書いていることですが、私にとっては「心が疲れているときには瀬尾まいこ」。たいてい、ありそうでなさそうな、なさそうでありそうな設定で、本作は若かりし頃に一夜だけ共にした女性との間に子どもができちゃった。しかし双方結婚は望まず、女性がひとりで子どもを育てる。それが25年経ったある日、息子だという青年が突然訪ねてきてひと月同居することに。軽くて非常識に見えるわが息子。だけど常識がなかったのは自分のほう。スタバで大声で注文する女子の話は目からウロコ。そういうふうに人を見られる人間になりたいとちょっと思った。
読了日:10月11日 著者:瀬尾 まいこ
■Qrosの女 (講談社文庫)
ゴシップ記事って、追われるほうも追うほうもこんなに過酷なのですね。どちら側からも複数の人の視点で語られるので、同じシーンを違うほうから見ることができて面白いものの、同じシーンが何度も出てくるせいで頁が増える。「はいはい、さっきも見たよそれ」てな感じになってきたところ、ラスト30頁でまったく予期していなかった展開に。そうですかそうですか。嫉妬は何も女性特有ではない。アナタがそんなにも黒い気持ちに染まっていたとは。じゅうぶん満足なヤラレタ感。断罪して終わりじゃなく、すべての人にとって良いように。鮮やかです。
読了日:10月17日 著者:誉田 哲也
■オトナ語の謎。 (新潮文庫)
オトナ語なんて使っていたつもりはなかったけれど、ここに挙げられている言葉どれもこれも使っていることに驚きました。ちょっと涙目になったのは「なるはや」。6月に癌で亡くなった弟が、まだ意識のはっきりしているときに連絡してきたなぁ、「爪切り持ってきてもらえますか、なるはやで」って。母にこの本を見せながら、「なるはやでって言ってたよ(笑)」と言ったら、「なるはや」なんて言葉を使ったことのない母が「へ~っ、そう」と感慨深げにうなずいていました。弟よ、空の上でほかにほしいものはないか、なるはやでは届けられないけど。
読了日:10月20日 著者:糸井 重里,ほぼ日刊イトイ新聞
■いけない (文春文庫 み 38-5)
以前ほかの本でも見かけた蝦蟇倉市。何度も見かけると実在の町かと思ってしまう。各章を読む→最終頁の写真を見る→隠された真相発見。となるらしいのですが、はぁ、私のアタマではその真相にさっぱり至ることができず、驚愕することもないまま終わってしまいました。ただ、そこには至れずとも普通に面白い。数年前に書かれた物語であるにもかかわらず、怪しげな新興宗教が登場して、まるで今を先取りしたかのよう。道尾さんには予知能力があるのでしょうか。もう一度、完全シラフの状態で再読して「おーっ、そういうことだったのか!」と叫びたい。
読了日:10月21日 著者:道尾 秀介
■線は、僕を描く
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】一昨年読んだ本のなかではたぶんいちばん好きでした。映画の公開を心待ちにして封切り日のレイトショーで。大筋では原作と同じ。良いことは間違いないけれど、細部こんな流れだったっけと終始思いながら観ました。原作を読んでいれば初対面の湖山がいきなり霜介をスカウトしたのもわかるけど、映画だけではツライ。家族を亡くした原因もこんなだったっけと、原作を思い出しつつ違和感をおぼえます。そんななか、江口洋介はまたしてもオイシイところを持って行く。湖峰に惚れっぱなしの鑑賞となりました。
読了日:10月22日 著者:砥上 裕將
■川っぺりムコリッタ (講談社文庫)
『サバカン』に『川っぺりムコリッタ』、今年はじんわり心に染みる邦画が続いて嬉しい。『サバカン』はなぜか原作に手を出す気持ちにならなかったけど、これはすごく読みたくなりました。島田はムロツヨシに当て書きしたのかと思うほど。松山ケンイチのあの雰囲気、満島ひかり演じる無愛想な大家さん、皆よかったなぁと思い出す。映画で笑ったところは原作でも笑い、泣きそうになったところは原作でも泣きそうに。このイメージそのままに映画化した荻上監督、素晴らしい。小さな幸せを当たり前のことだと思わずに、幸せだと感じられる人間で居たい。
読了日:10月24日 著者:荻上 直子
■希望の糸 (講談社文庫)
ガリレオシリーズといい、加賀恭一郎シリーズといい、最近の東野圭吾は主人公周辺の出自に迫ることにしたようです。本作で明らかになるのは加賀刑事の従弟・松宮刑事の出自。10年以上前のTVドラマ版では、松宮刑事の母親・克子を宮下順子が演じていました。本作も映像化されること前提なのでしょうね。溝端淳平と宮下順子の顔がちらついて仕方がない。こうもあちこちで似た流れになると、いろいろと片付けておきたい歳になったのかな東野さん、と思います。墓場まで持って行くつもりでもなかなかそうは行かない。人は見えない糸で繋がっている。
読了日:10月30日 著者:東野 圭吾