夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『収容病棟』

2014年07月24日 | 映画(さ行)
『収容病棟』(原題:瘋愛)
監督:ワン・ビン

レッドブルを飲んでも眠気に襲われた『聖者の午後』とハシゴ。

関西では京都シネマと第七藝術劇場で公開中の本作、
どうせ晩には京都へ行くのだから、京都シネマで観ることも考えましたが、
大阪興行協会では半券2枚で応募できる映画鑑賞券プレゼントのキャンペーン実施中。
やはり大阪で観ておくことにしようと、そのままナナゲイにて。

どうでもいい話ですが、すでに何度目かのこのキャンペーン、
これまでナナゲイで鑑賞したさいには、半券に当たるものがなくて悩んでいました。
整理券を貼ればいいのだろうと勝手に判断して、整理券をペタペタと。

今回初めて聞いてみたら、「整理券は無効らしいです」とナナゲイのお姉さん。
え~、これまでの応募は無駄やったんかいと涙。
『聖者の午後』と本作の前後編の3本分、すでにまとめてレシートをもらっていましたが、
お姉さんが1本ずつに分けてレシートを出し直してくれました。
キャンペーンにはこのレシートを貼って応募すればいいのだそうです。

一昨年観た作品のなかで、おそらくいちばん暗かった『無言歌』(2010)。
それと同じ、中国の鬼才と称されるワン・ビン監督の作品で、237分の大長編。
前後編に分けて鑑賞料金は2本分必要、休憩を挟んでの上映です。

中国・雲南省の精神病院
患者200人以上が収容されるこの病院の様子を収めたドキュメンタリー作品。
監督は、2013年1月から3月にかけてほぼ毎日、カメラを回しました。
『無言歌』の風が吹きすさぶような暗さとはまた異なる絶望的な暗さ。

精神病患者と一口に言っても、患者の病状は多種多様。
鬱病や認知症患者もいれば、宗教にのめり込みすぎていると判断された者、
政治的な陳情行為をした者、一人っ子政策に違反した者などなど、
はたして病気だと言えるのかどうかという人も。
それがまとめて病棟にぶち込まれているのです。

数名の相部屋の薄汚れた壁、取り替えられているとは思えないシーツ。
用を足すときはベッド脇に置かれた洗面器へ。
ベッドの上に立って放尿するのも普通で、おしっこ飛びまくりやがな。

風呂場はない様子で、ときおり素っ裸でマイ洗面器を持った患者が廊下へ。
蛇口をひねって洗面器に水を溜め、それをかぶるだけ。
ずぶ濡れのまま自室へ戻ると、ベッドの上で体を拭きます。

部屋にも廊下にも裸電球。
部屋通しの行き来は自由にできますが、外には決して出られぬよう張り巡らされた鉄柵。
男性患者と女性患者の収容階はもちろん異なっているので、
何をしたのか夫婦で収容されている場合、鉄柵越しに手を握り合う姿が哀しい。

こんなところに放り込まれれば、気が狂っていなくても狂おうというもの。
まだ収容されたばかりの患者もいれば、20年収容されている患者も。
病院より牢獄と言ったほうがいいようなこの場所で、
ひとつのベッドで体を寄せ合って眠ったり、身内から差し入れられたみかんを分け合ったり。
新入り患者に家族の面会があるときは、みんなでぞろぞろついていきます。
しかし、微笑ましいとか癒されるとか、そう表現できるような光景ではありません。

よくも中国政府がこんな撮影を許可したものだと驚きますが、
批判的な視線ではなく、ただ淡々と記録されている、そんな印象。
だから撮影も公開も許可されたのか。

絶望的に暗く、観ているのが辛い。
メッセージ性にも乏しいため、どうしていいのかわからないから、なお絶望的。
この現状を知る、それだけにとどまります。

こんな作品だったからというわけでもないでしょうが、
劇場で他人同士が大声で喧嘩している場面を初めて見ました。(^^;
前後編の間に休憩はあるものの、基本的に客は一緒ですから、
前編で座っていた席と同じ席に誰しもが座っています。
最前列に座っていた男性2人が後編開映前に揉めはじめ、「表に出ろ!」というところまで。
スタッフのお兄さんがなんとか取りなしたようですが、
いやぁ、こんな暗い気持ちのときに、ヤジウマ的には面白かった一瞬です。

ご覧になる人はかなりの覚悟が必要かと。

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『聖者の午後』

2014年07月23日 | 映画(さ行)
『聖者の午後』(原題:Cores)
監督:フランシスコ・ガルシア
出演:アカウアン・ソウ,ペドロ・ヂ・ピエトロ,シモーネ・イリエシュコ他

先週の土曜日は、旧知のシェフからお誘いを受けて、
シェフのお弟子さんがオーナーシェフを務める芦屋のイタリアンへ。
レストランにバーとドルチェリアが併設された素敵なお店で、
またしても食べすぎ飲みすぎ&寝不足で迎えた日曜日の朝。

ゆっくり寝たいところですが、どっちみちサッカーに行くダンナを起こさにゃならん。
送り出してからもう一度寝ようかと思ったけれど、晩は京都でダンナと落ち合う予定だし、
その前に映画を観られるのに観ないのはもったいないと、第七藝術劇場へ。

ナナゲイに行くのは半年以上ぶり。
会員証は今年初めで切れ、更新に行こうと思っていた矢先に阪急十三駅前で火災発生。
西口が閉鎖されていた間はナナゲイに行かずにごめんなさい。
このたびあらためてサポートクラブに申し込みました。

本作はまったくのノーマーク。
前日に飲みすぎることがわかっていたため、昼から上映の作品を観るつもりでしたが、
その2時間前に上映開始の本作にも間に合い、ついでに観ることに。

全編モノクロで描かれたブラジルの新鋭監督の長編デビュー作品だそうで。

ブラジルの大都市サンパウロ
ワールドカップオリンピックの開催を控えて世間は好景気に沸いているのに、
その波に全然乗れないアラサーの男女3人。

祖母と暮らし、その祖母の家の敷地でタトゥーショップを経営する男性ルカ。
しかし客は皆無に等しく、祖母の年金だけが頼り。

ルカの友人男性ルイスは薬局勤め。
薬を横流ししているのがバレてヤバイ状態に陥り、解雇目前。

ルイスの恋人ルアラは熱帯魚店に勤めている。
羽振りの良さそうな男性客がルアラにご執心で、
いっそ乗り換えられればいいのだが、そうもできない。

毎日だらだらと過ぎてゆくだけ。
どこにも行くことができない3人を襲う閉塞感。

モノクロの映像とアングルがオシャレだとは思いましたが、
なにしろ寝不足の頭には退屈すぎます。
レッドブルを飲んでの鑑賞も実らず、ところどころ寝ました。(^^;

おもしろいと思ったのは、原題の“Cores”。
これはポルトガル語で「色」の意味で、
そんなタイトルの映画をわざわざモノクロにしたところは技あり。
低所得層の実態を覆う諦観が全編にゆらゆらと。

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『ヒート・ストローク』

2014年07月22日 | 映画(は行)
『ヒート・ストローク』(原題:Heatstroke)
監督:イヴリン・モード・パーセル
出演:スティーヴン・ドーフ,スヴェトラーナ・メトキナ,メイジー・ウィリアムズ,ピーター・ストーメア他

2013年のアメリカ作品で、日本では劇場未公開。
今月初めにDVDレンタル開始、スティーヴン・ドーフ見たさに借りましたが、
ま、まさか最初の30分で死んじゃうなんてありですか。
……って言っちゃうのは駄目でした?

ハイエナを研究するポールは、恋人のタリーを伴って、
アフリカの砂漠地帯で研究調査することに。
ふたりで旅を楽しむつもりだったが、出発数日前にポールの前妻から電話が入る。
反抗期にある娘のジョーが、学校で問題を起こしたらしい。
近頃のジョーは手に余る、あなたの言うことならば聞くかもしれない、そう前妻は言い、
ポールはジョーをアフリカへ連れて行く約束をしてしまう。

タリーのことを敵視しているジョーは、およそ友好的とは言いがたい態度。
i-Padを片時も離さず、ポールやタリーとほとんど口をきかない。
アフリカへ到着し、砂漠にテントを張って過ごすが、
取りつく島もないジョーを見て、やはり前妻のもとへ返そうと決める。

ジョーを空港まで一緒に送って行こうというポールに対し、
父と娘ふたりだけの時間が必要だろうからとタリーは遠慮する。

ポールとジョーが空港に向かってまもなく、ハイエナがテント内を食い散らかす。
食糧の大半を失ったタリーは心細くポールの帰りを待つが、
何日待ってもポールは帰ってこない。
そのうち水も底をつきそうになり、タリーは書き置きを残して水場へと出発。

ところが水場へ向かう途中、横転したポールの車を発見。
ポールは頭を撃ち抜かれてすでに死亡。
返り血を浴びたジョーは気を失っているだけの様子。
タリーはジョーを車から引きずり出して介抱する。

意識を取り戻したジョーによれば、銃を密輸する二人組と遭遇、
その片方が目撃者となったポールを撃ったらしい。
そうこうしているうちにその二人組が現場へと戻ってくる。
タリーとジョーは咄嗟に隠れ、なんとか逃げようとするのだが……。

スティーヴン・ドーフの映画だと思っていたのに、
こんなふうに早いうちに死んじゃうんですもの。たまげました。

図らずも残ってしまった犬猿の仲のタリーとジョーが
力を合わせて逃げる話なわけですが、
献身的で頼りがいのあるタリーに対して、ジョーがとにかく反抗的。
父親の恋人ですから目の敵にするのもわかりますが、
いらんことばかりして、ドツボにハマっていくのでした。

なんちゅうことはない作品ですが、それなりにドキドキ。
特筆すべきはタリー役、ロシア出身のモデルだというスヴェトラーナ・メトキナ、美しい。
ロシアといえば思い出す『オーガストウォーズ』同様、
可愛いだけじゃなくてめちゃめちゃたくましい。
ロシアの女性ってこんな感じの人が多いのか、憧れの対象なのか。
そのうちハリウッド映画にも出演希望。

あ、オチはどうなるかと言いますと、もちろんふたりとも助かります。
“heatstroke”は「熱射病」。タリーとともによれよれヘロヘロになりましょう。
ちょっといいシーンもあって、DVDで観るならば悪くはありません。

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『ジゴロ・イン・ニューヨーク』

2014年07月21日 | 映画(さ行)
『ジゴロ・イン・ニューヨーク』(原題:Fading Gigolo)
監督:ジョン・タトゥーロ
出演:ジョン・タトゥーロ,ウディ・アレン,ヴァネッサ・パラディ,リーヴ・シュレイバー,
   シャロン・ストーン,ソフィア・ベルガラ,トーニャ・ピンキンス,ボブ・バラバン他

前述の『私の、息子』の30分後、同じくシネ・リーブル梅田にて。
結局、TOHOシネマズデーだったというのに1本もTOHOシネマズで観ずじまい。

『ブルージャスミン』が非常に面白かったウディ・アレン。
本作は監督ではなく、一俳優として出演。
最近見ないなぁと思っていたジョン・タトゥーロ、いつのまにか57歳。
自分で監督・脚本・主演を務めるのにジゴロ役だなんて、
そうなりたいと思っているのかと邪推してしまいます。(^o^)

ニューヨークのブルックリンで、親から継いだ書店を潰してしまったマレー(ウディ・アレン)は、
かかりつけの美人皮膚科医(シャロン・ストーン)がレズ相手と3Pを望んでいると聞き、
咄嗟に親友フィオラヴァンテ(ジョン・タトゥーロ)の名前を出す。

フィオラヴァンテは決してイケメンとは言えないが、
どことなく色気があって女にモテる優しい男。
勝手にいかがわしい商売に名前を出されたフィオラヴァンテは困惑するが、
現在花屋で細々とバイト中、家賃を払うのも大変な身。
1回につき1,000ドルの報酬の6割でどうだというマレーの話に乗ることに。

意外にもフィオラヴァンテの板に付いたジゴロぶりが評判に。
マレーの巧みな営業活動も実り、商売は大繁盛。
ここで調子に乗ったマレーは、新規顧客の開拓に乗り出す。

マレーが目を付けたのは、未亡人アヴィガル(ヴァネッサ・パラディ)。
アヴィガルはユダヤ教の中でも特に厳格な宗派に属すラビの未亡人で、
人前ではカツラを着用、男性に地毛を見せることすら許されない。

そんな彼女をフィオラヴァンテのもとへと連れていくマレー。
行為にはおよばなかったものの、素肌にマッサージを施され、涙するアヴィガル。
何度か密会を重ねるうちに、フィオラヴァンテとアヴィガルは恋に落ちる。

かねてからアヴィガルに想いを寄せていたラビのドヴィ(リーヴ・シュレイバー)は、
アヴィガルが屈託のない笑顔を見せる相手に嫉妬、
ラビたちの審議会で問題として提起するのだが……。

めっちゃ面白いというわけではないけれど、出演陣が個性的でクスクス笑い。
『私の、息子』のようにイライラしたり不愉快になったりすることが皆無。
映画はやっぱりこのほうがいいなぁと改めて思いました。

いくつになっても美しいシャロン・ストーンがいい味。
3Pの途中で「無理だ」と言い出したフィオラヴァンテの顔を見て、
本気の恋に落ちてしまった男の顔だと指摘するとき、
フィオラヴァンテ役のジョン・タトゥーロよりもいい顔をしています。

いつもこっそりオイシイ役どころのボブ・バラバン。
今回もマレーが裁かれる席に同席する弁護士役で登場。
ウェス・アンダーソン監督作品など、この人の顔を見ただけで笑ってしまうのは私だけ?

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『私の、息子』

2014年07月20日 | 映画(わ行)
『私の、息子』(英題:Child's Pose)
監督:カリン・ペーター・ネッツァー
出演:ルミニツァ・ゲオルギウ,ボグダン・ドゥミトラケ,イリンカ・ゴヤ,
   ナターシャ・ラーブ,フロリン・ザムフィレスク,ヴラド・イヴァノフ他

友人と肥後橋でランチの後、雨の中を歩いて梅田まで。
お茶を2軒ハシゴして友人たちと別れ、私はふたたびシネ・リーブル梅田へ。

それにしてもこのところの梅田スカイビルは欧米人観光客の多いこと。
なんでこんなに多いのかと思ったら、
イギリスの出版社が選ぶ“TOP 20 BUILDINGS AROUND THE WORLD”のひとつに選ばれたのだそうで。
ほかに選ばれた建築物を見てみれば、パルテノン神殿、アンコール・ワット、
サグラダ・ファミリア、コロッセオ、メトロポリタン大聖堂などなど。
そうか、スカイビルはパルテノン神殿に並ぶのかとビックリ。
建築家の原広司先生、そんな凄い方だとはつゆ知らず、すみませんでした。

第63回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したルーマニア作品。
第86回アカデミー賞外国語映画賞にもルーマニア代表として出品されましたが、ノミネートに至らず。

ルーマニアの首都ブカレストに暮らす熟年女性コルネリア。
建築家として名を馳せた彼女には、セレブな知り合い多数。
彼女の誕生祝いのパーティーには各界の大物が顔を見せる。

そんな彼女の悩みの種は30歳になる一人息子バルブ。
コルネリアと顔を合わせるたびに悪態をつき、わがままの言い放題。
彼が子連れの女性カルメンと同棲中なのも気に入らないから、
家政婦のクララにはバルブの家にも行かせて状況を報告させている。

ある日、そのバルブが交通事故を起こす。
前を走る車を160km/hで追い抜こうとした折りに
飛び出してきた少年を轢いて死なせてしまったのだ。

息子を刑務所に入れるわけにはいかない。
コルネリアは金とコネを利用して警察の捜査に介入、裏工作に奔走するのだが……。

なんとも嫌な話です。
冒頭、家政婦に息子の彼女の悪口をうだうだ言うところも最悪なら、
パーティーの席で肩書きがすべてとばかりに列席者を紹介するのもヤな感じ。
それを受けて「無名の誰某」なんて自己紹介する人はアッパレですが、
そうは言ってもそんな席にいるのはセレブな人ばかり。

不愉快な気持ちに駆られている間に問題の交通事故が起きます。
息子からさんざんな言い様をされているのに、
息子がすべての母親は、ひたすら息子のために頑張ります。
警察に顔が利くエライさんに連絡を取り、指示を仰いだり、
目撃者に証言を訂正してもらうために取引を持ちかけたり。

母親に「死ねよ」などと始終暴言を吐いているくせに、
半ケツ状態でマッサージしてもらう息子の姿にオエッ。マザコンもいいところ。
息子の彼女が赤裸々に語る「息子と別れたい理由」にも愕然。

こうして自分たちの都合しか考えなかった母子が被害者宅を弔問、
話しているうちに心を入れ替える……と受け取れなくもないですが、
母親といえば息子の自慢話に終始して、息子の将来を奪わないでくれと泣き叫ぶばかり。
あんな話をされて寛大な気持ちを持てますか。
なのに被害者の父親の最後の態度のなんと素晴らしいことよ。

そのやりとりを見た母親の内心はどうだったのか。
彼女の深い溜息をどう取るか。
観る人がそれぞれ解釈すればいいものなのでしょうが、
私には良心はこれっぽっちも感じられませんでした。

こんなに不愉快な気持ちにさせる演技力に脱帽。
英語タイトルの“Child's Pose”、すなわち「胎児の姿勢」。
これと併せて邦題の意味を考えてみると、深く、難しい。

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