夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『イン・ザ・ヒーロー』

2014年09月13日 | 映画(あ行)
『イン・ザ・ヒーロー』
監督:武正晴
出演:唐沢寿明,福士蒼汰,黒谷友香,寺島進,草野イニ,日向丈,
   小出恵介,及川光博,杉咲花,イ・ジュニク,加藤雅也他

一昨日、晩は甲子園へ行く予定だったため、その前に映画を観ようと午後休を取りました。
これがまた我ながら隙のない(笑)スケジュールで、
12:00に仕事が終わるやいなや、車で阪神西宮へ。
駅前のコインパーキングに駐車したのが12:45。12:53発の電車に乗って今津へ。
阪急に乗り換えて西宮北口に到着したのが13:10。
西宮ガーデンズ5階に駆け上がり、自販機で野菜ジュースを買ってグビッ。
TOHOシネマズ西宮にて本作開始が13:20でした。

監督は『モンゴル野球青春記 バクシャー』(2013)の人。
ご自身、草野球チームに所属しているらしく、大学時代は映研だったとか。
野球と映画が好きというだけで親近感が生まれるというものです。

最初に、皆さん、スーツアクターってご存じでした?
なんとなくイメージはできますけれど、
ヒーローものなどで着ぐるみを着用してスタント演技をする俳優のこと。
変身前の俳優がすべてこなしているのかと思いきや、
アクションにも対応可能な役者さんは意外に少ないのですねぇ。
千葉真一は自らスーツアクションをおこなうハシリ。
ついでに、スーツアクターという言葉は和製英語だそうです。

スーツアクター歴25年の大ベテラン、本城渉(唐沢寿明)。
ブルース・リーを崇拝し、この仕事に誇りを持っているが、
世間では顔の映らないスーツアクターは俳優とは認められていないふしがある。
自分のことをリーダーと慕う後輩たちに夢を与えるためにも、
いつか「顔出し」で映画出演を果たしたいと思いつづけている。

しかし、スタント演技のせいで身体が酷使され、首の痛みは増すばかり。
それでもやっと到来した顔出しのチャンス、さっそく元妻の凛子(和久井映見)に知らせるが、
売り出し中の新人、一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)に出番を奪われてガックリ。

リョウのマネージャーである門脇(小出恵介)から指導を頼まれるが、
リョウは特撮ヒーローを馬鹿にした態度で、
渉の事務所に所属する女性スーツアクター、美咲(黒谷友香)の反感を買う。

実はリョウの母親は数年前に蒸発、幼い弟妹の面倒をリョウがみていた。
リョウはハリウッド映画に出演してアカデミー賞を取り、
その様子をどこかで見ているであろう母親に語りかけたいと願っていたのだ。
ハリウッドの忍者アクション大作『ラスト・ブレイド』のオーディションにすべてを賭けるリョウ。
子ども相手の特撮ヒーローものなど、ばかばかしくてやりたくない。

ところが、ある日の特撮ヒーローものの撮影中、
ハリウッド映画のプロデューサーを務める石橋(加藤雅也)がやってくる。
いいところを見せようと、リョウはスーツアクションを自分でやると宣言。
だが、リョウのアクションはボロボロもいいところ。
このままではオーディションに落ちる、そう思ったリョウは、
渉にアクションを教えてほしいと頭を下げて……。

子どもを置いて出て行った母親を恨んでいない、
そう伝えたいのだとリョウが言うシーンはちょい綺麗事の印象。
その他、あまりにもベタでどうよと思うシーンは多々ありますが、いろいろ1970年代的。
アラフォー、いやアラフィフ以上の年代であれば、やっぱり楽しいと思います。

スーツアクターであっても台本を丹念に読む渉。
アクションだけしていればいいのになぜ?と問うリョウに、
登場人物のキャラクターをきちんと把握してこそのアクション、
リアクションあってこそのアクションだと言う渉。
大人であろうと子どもであろうと観る者には伝わるのだというところがいいですね。

主題歌を聴いて尾崎紀世彦かと思ったら吉川晃司でした。だはっ。

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『俺たちスーパーマジシャン』

2014年09月11日 | 映画(あ行)
『俺たちスーパーマジシャン』(原題:The Incredible Burt Wonderstone)
監督:ドン・スカーディノ
出演:スティーヴ・カレル,スティーヴ・ブシェミ,ジム・キャリー,オリヴィア・ワイルド,
   アラン・アーキン,ジェームズ・ガンドルフィーニ,デヴィッド・カッパーフィールド他

これも1カ月ほど前にDVDレンタルが開始された2013年のアメリカ作品。
マニア受けしそうな顔ぶれながら、日本では未公開。
「俺たち○○」はたいていが未公開の憂き目に遭うようです。

ついでながら、5月末にレンタル開始となった、
『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』(2013)は、
ウィル・フェレルを信じて借りたのに、ぜ~んぜん駄目。
駄目さも頭抜けていれば逆に書く気になるものの、
相当つまらないけど中途半端につまらなくて、紹介する気も失せた作品でした。
ただ、カメオ出演やらクレジットなしで出演している俳優陣が凄くて、
ちょっと顔を見せるのは、グレッグ・キニアハリソン・フォード
サシャ・バロン・コーエンマリオン・コティヤールウィル・スミス
キルスティン・ダンストジム・キャリーティナ・フェイリーアム・ニーソン
ジョン・C・ライリーヴィンス・ヴォーンカニエ・ウェストなどなど。
嗚呼、全然書く気はなかったのに、こんなに字数を割いてしまった。(T_T)

こんなふうに、『俺たちニュースキャスター』が酷い出来だったので、
本作もまったく期待せずに観はじめたのですが、これはまずまず○。

いじめられっ子のバートは、誕生日に母親からマジックセットをもらう。
ランス・ホロウェイというマジシャンのDVD付きセットに魅せられ、
日々、手品の練習を重ねるように。
いじめっ子たちはそんなバートを嘲笑うが、唯一近づいてきたのがひ弱なアントン。
ふたりはコンビを組み、手品のアイデアを出し合う。

大人になったバート(スティーヴ・カレル)とアントン(スティーヴ・ブシェミ)は
ラスベガスの花形イリュージョニストとなった。
しかしここのところ人気に翳りが見えはじめ、ふたりの間で喧嘩が絶えない。
15年も同じネタを続けていれば、当人たちも飽きようというもの。

そこへ新しいタイプのストリートマジシャン、スティーブ(ジム・キャリー)が現れる。
肉体を痛めつける彼のパフォーマンスは、バートから見れば手品とは言えない。
だが、観客が望んでいるのはそういったショーらしく、
ラスベガスのホテルのオーナー、ダグ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)からは
いいアイデアを出さなければ解雇すると言われる。

アントンの画期的なアイデアで人気再沸騰となるはずだったのに、バートがぶちこわし。
予告どおり解雇され、バートとアントンは喧嘩別れ。
貯金もないバートはショーの助手を務めていたジェーン(オリヴィア・ワイルド)を頼るが、
バートのあまりにも傲慢な態度にジェーンが怒り、追い出されてしまう。

強がってはみたものの、行き場なし。
バートはエンターテイナーを募集していた老人介護施設を訪ねるのだが……。

この介護施設には元エンターテイナーばかりが入居していました。
入居者を前に手品を披露するバートにイチャモンを付けた老人がいて、
なんとこれがあのランス・ホロウェイ。彼を演じるアラン・アーキンがものすごくいい。
マジシャンにとっては何度もやって飽き飽きしている手品でも、観客にとっては初めての体験。
マジシャン自身が楽しんでいない手品なんてつまらないと、ランスはバートンに言います。

中盤まではバートの見た目も態度も暑苦しすぎて、
これまたハズレかなぁと思っていましたが、
介護施設を訪れてからは心温まる話になっています。
それでも悪乗りしすぎの部分はありますけれども。

ブラジャーを知らぬ間に外したり、耳の後ろからコンドームを出したりと、
ベッドで見せる手品には笑いました。
正真正銘ホンモノのマジシャン、デヴィッド・カッパーフィールドもゲスト出演。

「えげつないほど笑えるコメディ!」という触れ込みには無理がありますが、
手品をきっちり見せてくれる作品はありそうでなかったかも。

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『変態小説家』

2014年09月09日 | 映画(は行)
『変態小説家』(原題:A Fantastic Fear of Everything)
監督:クリスピアン・ミルズ
出演:サイモン・ペッグ,クレア・ヒギンズ,アマラ・カラン,ポール・フリーマン,アラン・ドレイク他

ちょうど1カ月前にDVDレンタル開始。

絶対スベるだろうという確信を抱いてはいたものの、
サイモン・ペッグを無視するわけにはいきません。
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』を観てから何カ月も経過、
久々にあのおバカさに乗せられてみることに。
2012年のイギリス作品で、日本未公開、当たり前だっちゅうの。

ジャックはハリネズミの“ハロルド”を主人公にした絵本で一発当てた児童文学作家。
続編も人気を博しそうな雰囲気で、このまま行くのが無難。
しかし、本当に書きたいのは犯罪小説。
ヴィクトリア朝の芸術的とも言える殺人に手を染めた犯人たちについて調べるうち、
自分は殺人鬼に狙われてるのではないかという妄想に取り憑かれる。

遅々として筆が進まないジャックを女性代理人クレアは見放し気味だが、
ハリウッドの大物プロデューサーがジャックのアイデアに興味を示しているらしい。
その大物の名前を聞き、ジャックは愕然とする。
ハービー・クリッペン・ハンフリーズ、有名な連続殺人犯とミドルネームが同じなのだ。
やはり自分は狙われていて、これは罠かもしれないとジャックは考える。

とりあえずはハービーに会いに行くようにとクレアから言われ、
身支度を調えようとするが、妄想のせいでずっと外出が困難だったため、着ていく服がない。
せめて清潔なシャツを着たいのに、家のあちこちに殺人鬼が潜んでいるような気がして、
このところ洗濯機を回すこともできなかった。
手洗いしたシャツと下着と靴下を乾かすべくオーヴンに放り込んだら、
いつのまにか火が出て家の中に煙が立ちこめる。

こうなればコインランドリーへ行くしかない。
意を決してジャックはコインランドリーへと向かうのだが……。

ジャックが何よりも恐れているのがコインランドリーなのです。
まだ幼い頃に母親に連れられて行ったコインランドリー。
そこで置き去りにされた過去があり、ジャックのトラウマに。
大好きだった母親がコインランドリーで自分を残して消えてしまったら、
それはもう悲しく辛い思い出の場でしかないと同情しますが、
人前で洗濯物をさらすことにもただならぬ恐れを感じています。

家を出る前に接着剤の付いた手でナイフを握ったものだから、
コインランドリーへ出かけたジャックの手にはナイフがくっついたまま。
コートのポケットに手を突っ込んで隠していましたが、
ふとしたはずみでポケットから手が出てしまい、コインランドリー内は大騒ぎに。
警察に取り押さえられてドタバタ、運良くそこから逃げ出したら、
今度は妄想ではない連続殺人犯らしき男につかまって、
コインランドリーの地下に美人客サンギートとともに放り込まれてしまいます。

こうして書いているとなかなか楽しそうに思えますが、スベりまくり。(^o^;
いつもサイモン・ペッグとコンビを組んでいるニック・フロストがいないのは、
ボケとツッコミのツッコミ役がいないのと同じ。
ひとりでボケてツッコミを入れてというわけにも行かず、苦しい。

監督は英国のロックバンドのボーカリストで、音楽大好きな模様。
ジャックがラップでノリノリだったり、
地下にジャックを閉じ込める男がCDラジカセを持参して
これからというときにかける曲が“ファイナル・カウントダウン”だったり、
なかなか楽しい場面もあるにはあるんです。
ならば、こんな中途半端なホラーコメディではなく、
音楽をもっとちりばめたコメディを撮ってくれれば良かったのに。
だけど、こんな作品ほど、観たことは忘れないのですよねぇ、なぜか。

洗濯は、こまめにしましょう。

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『テロ,ライブ』

2014年09月07日 | 映画(た行)
『テロ,ライブ』(英題:The Terror Live)
監督:キム・ビョンウ
出演:ハ・ジョンウ,イ・ギョンヨン,チョン・ヘジン,キム・ホンファ,
   キム・ソジン,イ・デヴィッド,イム・ヒョンソン他

テアトル梅田に移動して。今度は30分の余裕あり。
お昼ごはんをゆっくり食べるほどには時間がないのと、
前日のお酒がまだ残っていて食欲なし、
自販機でサンガリアの“みっくちゅじゅーちゅ”を購入してグビッと。

32歳の新鋭監督による韓国の大ヒット作品。
主演は『絶対の愛』(2006)、『チェイサー』(2008)、『哀しき獣』(2010)と、
二度は観たくないけれども、心から離れない作品に多く出演しているハ・ジョンウ。

国民的人気を誇るTVキャスターだったユン・ヨンファは、
ある不祥事の尻ぬぐいのため、同局のラジオ番組担当へと左遷される。
そのせいで同僚だった妻のイ・ジスと離婚、踏んだり蹴ったりの境遇。
いつかキャスターに返り咲いてやると心に誓っている。

そんなある日、ラジオの生放送中にかかってきた1本の電話。
電話の主がその日の話題とはそれた話を始めたものだから、
ヨンファは電話を早々に切ろうとする。

ところが、電話が切れない。
橋を爆破すると言いだし、ただのいたずら電話かと思いきや、外で爆音が。
TV局からも見える漢江にかかる麻甫大橋が爆破されたのだ。

これは一大スクープになる。キャスターに返り咲くまたとないチャンス。
警察に通報しようとするラジオ番組のプロデューサーを制し、報道局長のチャのもとへ。
チャはヨンファの手柄を独り占めして自分を左遷した張本人。
視聴率を取ってもっと出世したいチャの心を読み、ヨンファはチャに掛け合う。
キャスターに復帰させてくれるなら、チャの番組で犯人との通話を独占生中継させてやると。

テロリストは建設作業員のパク・ノギュと名乗り、
麻甫大橋の建設に携わっていたらしい。
2年前、麻甫大橋の補修工事中に仲間3人が転落事故で亡くなったが、
仲間の遺族は何の補償も受けられなかったばかりか、
過酷な労働がたたっての事故だというのに、政府からひと言の謝罪もないと言う。
彼の要求はただひとつ、作業員に対する大統領の謝罪。

爆破された麻甫大橋は分断された形で、中央部に取り残された多くの人びと。
テロリストの許可なく救出に向かえば、また爆破されてしまう。
ヨンファは人質の安全を最優先して大統領が謝罪すべきだと考えるが、
政府はテロリストとはいっさい交渉しないと断言し……。

公開前にはヨンファの報道シーンをそのまま利用した映画鑑賞マナーが流れていました。
あのシーンは本当はこれだったのねなどと思いながら。

韓国で起きた大型旅客船“セウォル号”の事故では、
みんなが責任を押しつけあっていました。
それよりずっと前に撮られていた本作は、あの事故をまるで予見していたかのよう。

大変なことが起きているというのに、誰も彼もが自分のことしか考えていません。
主人公も報道局長も他のメディアも、このスクープにいかに乗るかを考え、
テロリストもそれを上手く利用します。
大統領は逃げ回っているのか姿を見せず、代理でやってきた警察局長の態度は傲慢そのもの。
何の根拠もなく、レポーターの「全員助かります」という言葉のむなしさ。

緊迫感に満ちた、無駄なしの98分間。
悲しくやるせない結末にジャーナリズムの在り方、責任の取り方を考えさせられます。

たったひと言、謝ることが、そんなにむずかしいことなのか。

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『グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子』

2014年09月05日 | 映画(か行)
『グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子』(原題:De Toutes nos Force)
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン,アレクサンドラ・ラミー,ファビアン・エロー,
   ソフィー・ドゥ・フュアスト,パブロ・ポーリー,グザヴィエ・マチュー他

前述の『わたしは生きていける』の終映が11:25。
本作の上映開始が11:20、しかもTOHOシネマズ梅田別館アネックスにて。
いつもはエンドロールが終わるまで席を立ちませんが、今回は致し方なし。
『わたしは生きていける』のエンドロールが始まると同時に席を立ってトイレへ。
用を足して別館に駆け込みました。まだ予告編の半ば、余裕でセーフ。
もちろん出入り口すぐ近くの端っこ席です。

そういえば、こんな無謀なスケジュール組みの話をしたときに、
同僚が「予告編の途中で慌てて入場してくる人って、そういうことだったんですね」と言っていましたが、
んなこたぁないでしょう。こんな組み方をするアホは稀だと思うんですけれど。

ついでに、この日まで、TOHOシネマズで座席をネット予約するさいに、
いつも「クレジット決済」を選んで楽天カードを使っていました。
クレジット決済の隣にある「楽天あんしん支払いサービス」にも気づいていたのに、
なんだかややこしそうだからと利用したことがなかったのですが、
なんだ~、凄く簡単なうえにめちゃお得。
これが利用できるなら、前売り券未購入の作品を割引のない日に観たくなったとき、
楽天スーパーポイントを使って激安で観られるだなんて。
ちょうどこの日に切れるスーパーポイントがあり、本作は800円で観ました。

余談が長くなりました。

『田舎の日曜日』(1984)や『ラウンド・ミッドナイト』(1986)のフランス人監督、
ベルトラン・タヴェルニエ監督の息子で、
ドキュメンタリーを中心に手がけてきたニルス・タヴェルニエ監督による作品。
予告編を観るかぎりではお涙頂戴ガンガン路線という可能性もあり、
どうなんだろうと思いつつ観はじめました。

生まれたときから四肢に障害を持ち、車椅子生活を送る青年ジュリアン。
父親のポールはロープウェーの技師として世界中を飛び回り、留守がちだったが、
このたびリストラに遭って自宅へ帰ってくることに。
父親との久々の再会を楽しみにしているジュリアンだったが、
ポールはジュリアンに声をかけようともしない。
ほとんどひとりで息子をみてきた母親クレールは歯がゆくて仕方がない。

父親にこちらを向いてほしい。
そう願うジュリアンは、父親がかつてトライアスロンの出場者だったことを知る。
そこでジュリアンが思いついたのは、“アイアンマンレース”に親子で挑戦するというもの。
トライアスロンの中でも最難関のこのレースに出場したいと息子から唐突に言われ、
ポールは「無理だ」と一蹴するが、ジュリアンはめげない。
息子の熱意に押し切られる形でポールは出場を決意。
8カ月後のレースに向けた猛特訓をふたりで開始するのだが……。

過去に出場経験があるとはいえ、今はジョギングする程度のオッサンと、
何の訓練もしてこなかった障害ある17歳男子が、
遠泳3.8km、チャリ180km、マラソン42.195kmを制限時間17時間以内で」とは、
何カ月間かのトレーニングでは到底無理だろうと思うけれど、
そこはあくまでフィクション、映画ですから置いておくとして。

車椅子の障害者を描いた作品ですぐに思い浮かぶのは『抱きしめたい 真実の物語』
このブログを以前からお読みいただいている方ならば、
「また出た!どんだけ嫌いやねん」と突っ込んでくださるかもしれませんが(笑)、
あれと決定的にちがうのは、ユーモアに溢れているということ。
障害者の状況を「辛いの、苦しいの、頑張ってるの」と前面(全面!?)に押し出すことなく、
ジュリアンがいけ好かないオバハンには中指を立てて見せたり、
ジュリアンの親友で同じく障害を持つヨアンが自転車テクを披露して
「器用な障害者ってどうなのよ」みたいな台詞でサラリと笑わせたり。

こうして笑わせてくれたかと思いきや、
出場を認めないポールに「うん」と言わせるために、
ジュリアンの友人たちが一致団結して泣かせてくれます。
泳ぐ、自転車を漕ぐ、走る、すべて彼ら彼女らの夢。
それを頭から無理だと決めつけないでとの台詞に、そうだよなぁ、私だって、
何カ月間のトレーニングで無理でしょと決めつけてるよなぁと反省。

ジュリアンを見守るクレールとジュリアンの姉ソフィーの姿に、
またしても「この世界に弱い女なんかいない」という一文を思い出しました。

これで泣けと言わんばかりのゴールシーンではなく、
ちょい控えめなのも好印象です。

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