夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『奇跡の2000マイル』

2015年08月22日 | 映画(か行)
『奇跡の2000マイル』(原題:Tracks)
監督:ジョン・カラン
出演:ミア・ワシコウスカ,アダム・ドライヴァー,ローリー・ミンツマ,ライナー・ボック他

世間ではお盆休み最後の日曜日。
職場にお盆休みらしきものはないので、こちらは普段と変わらない毎日なのですが、
世間のお盆休みに合わせて宴会を開いたりしていたら、
木曜日から日曜日まで4連チャンで飲むことになってしまいました。
日曜日はその4連チャンのトリを飾る日で、すでに相当疲れ気味。
それでもどうせ晩に出かけるのだからその前には映画を観なくちゃということで。
朝から3本観るのはさすがに辛く、シネ・リーブル梅田にて昼から2本だけハシゴ。

1977年に単独でオーストラリア西部の砂漠を横断する旅を成し遂げた女性、
ロビン・デヴィッドソンの回顧録“Tracks”を映画化。

オーストラリア中央部の町アリススプリングス。
24歳の女性ロビンは、ここから砂漠地帯を歩いてインド洋に向かうことを決意。
その距離1700マイル(=2700km)の踏破を目標に掲げる。

砂漠の旅にはラクダが必要。
ロビンはまず牧場を訪ね、無給で8カ月働く交換条件として
牧場主からラクダの調教を教わること、
そして8カ月後にラクダを譲り受けることを約束される。

しかし、牧場主は約束を破り、ロビンにラクダを与えようとしない。
そこで今度はアフガニスタン人が経営する牧場を訪ね、
期待に応える働きを見せたロビンはラクダを譲り受ける。

調教を覚え、ラクダを手に入れたものの、金がない。
ナショナル・ジオグラフィック誌に自分の計画について手紙を書いたところ、
カメラマンを同行させるという条件で資金援助をしてくれるという返事。
道中何カ所かでカメラマンのリック・スモーランと落ち合うことにして、
4頭のラクダと愛犬1匹を連れたロビンの旅が始まるのだが……。

ラクダに乗って旅をするのかと思いきや、ラクダには荷物を載せるだけ。
ロビンはラクダと並んで自分の足で歩くのです。
にもかかわらず、前半はいまひとつ旅の過酷さが伝わってきません。
そのため盛り上がりに欠けるのですが、
先住民アボリジニの老人エディが旅に加わるころから俄然面白くなります。

砂漠には女人禁制の「聖域」があり、ロビンはそこを避けて遠回りを強いられます。
男性が同行すれば女性も聖域を通行可能で、誰か同行してくれる人を探すものの、
カメラマンのリックがアボリジニの秘密の儀式を撮影したせいで
ロビンまで信頼を失ってしまったから、誰も同行してくれない。
あきらめて遠回りしているときに出会ったのがエディを含む老人男性たち。

老人といってもその脚力たるやロビンよりずっと上。
言葉は通じなくても気持ちをかよわせることはできます。
ロビンとエディのかみ合っているのかいないのかわからない会話に和みます。

オーストラリアといえばカンガルーだと思っていたのに、ラクダの国だったとは。
しかもアフガニスタン人が調教して輸出しているというのだから驚きます。
アフガニスタン人は出発前のロビンに銃を渡し、
野生のラクダを見つけたら何も考えずに撃てと忠告します。
穏やかな動物だと思っていたラクダの歯むきだしの凶悪な顔にもビックリ。

1日に30kmちょっと歩いてはラクダの荷物を降ろし、また積んで出発。
ただただその繰り返しの毎日に、ロビンは「バカみたい。もう嫌だ」。
そんなの最初から承知のうえでしょうと言いたくなりますが、
なんとなく匂わされるロビンのトラウマに、彼女がこの旅に託した意味がわかるような気が。

ロビン役にはジュリア・ロバーツヘレン・ハント
ニコール・キッドマンなどの名前も挙がっていたそうですが、
おそらくミア・ワシコウスカで大正解。

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『この国の空』

2015年08月20日 | 映画(か行)
『この国の空』
監督:荒井晴彦
出演:二階堂ふみ,長谷川博己,工藤夕貴,富田靖子,利重剛他

大阪ステーションシティシネマで『日本のいちばん長い日』を観て、
TOHOシネマズ梅田で『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を観て、
この日の3本目である本作を観にテアトル梅田へ。
1本目といい3本目といい、戦争映画は客の年齢層が高く、いずれも満席。

芥川賞作家・高井有一の同名小説を映画化で、荒井晴彦監督は日本を代表する脚本家。
日活ロマンポルノの傑作とされる『赫い髪の女』(1979)や根岸吉太郎監督の『遠雷』(1981)、
最近の作品では『やわらかい生活』(2005)、『さよなら歌舞伎町』(2014)、
それにTVドラマ『深夜食堂』もこの人の脚本によるもの。
本作はその脚本家が18年ぶりにみずから監督も務めて。

太平洋戦争末期、東京・杉並の住宅地に暮らす19歳の里子(二階堂ふみ)。
母親(工藤夕貴)と二人住まいだったが、
ある日、空襲で家族も自宅も失った横浜の伯母(富田靖子)が転がり込んでくる。

男手がないので、何かの折りには隣人の市毛(長谷川博己)が頼り。
銀行員の市毛は妻子を疎開させている。
一人暮らしの市毛の身の回りの世話を買って出るうち、
里子は彼のことを男として意識するようになり……。

『日本のいちばん長い日』と時を同じくして、
それとはまったくちがう方向から描かれた戦争映画。
少女から女へと成長していく里子の姿が生々しい。
茨木のり子の詩も反戦歌として耳に残ります。

ただ、長谷川博己はこれまでの配役が強烈すぎて、もう普通の人には見えないのが難点。
真面目な表情をしていても何かやらかすのではないかと思わずにはいられず。
しかも数日前に『野火』を観たところだから、なんだかのめり込めなくて、
結果、すみません、またまた睡魔に襲われてしまいました。

この手の作品は退屈と言ってはいけない雰囲気がありますが、
私にはちょっとつまらない。
だけど、どこからもいびきが聞こえなかったところをみると、
高齢層の客の心は掴んでいたのでしょうかねぇ。うぬっ。

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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』

2015年08月19日 | 映画(ま行)
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(原題:Mission: Impossible - Rogue Nation)
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ,ジェレミー・レナー,サイモン・ペッグ,レベッカ・ファーガソン,
   ヴィング・レイムス,ショーン・ハリス,アレック・ボールドウィン他

前述の『日本のいちばん長い日』を観たあと、TOHOシネマズ梅田へ移動して。
お盆の劇場はものすごい混みようで、こんなに客が入っているのに、
1年間の劇場における映画鑑賞本数5本未満の人が50%を少し切るぐらいなの?
(NTTコムリサーチによる10~70代男女3千数百名を対象にしたアンケート調査結果。)
つまり、盆と正月に1本ずつ観たら終わりということなのかしらん。

それはまぁ良しとして、いやちっともよくないので、どうぞ皆さん劇場へ。

伝説のスパイ、イーサン・ハントの“ミッション:インポッシブル”シリーズ第5弾。
あり得ない53歳、トム・クルーズ
身長も170cmしかないのにこんなにカッコよかったら、
そらもう世の中のオッサンがたの星でしょう。

監督のクリストファー・マッカリーは脚本家でもあり、
あの超おもしろかった『ユージュアル・サスペクツ』(1995)を書いた人。
トム・クルーズ主演作では『ワルキューレ』(2008)、『アウトロー』(2012)、
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)などの脚本も担当しています。

イーサン・ハントは、IMF(Impossible Mission Force)の仲間とともに
謎の犯罪組織“シンジケート”の正体を突き止めるべく調査中。
イーサンが指令を受けるためにIMFのロンドン本部を訪れたところ、
そこはすでにシンジケートの手に落ちていた。
シンジケートの連中に拘束されたイーサンは、今から酷い拷問が始まろうかというときに、
彼らの一味と思われた美女イルサの手助けによって脱出する。
イルサは上手く言いつくろってシンジケートに残り、何者なのか不明のまま。

一方、IMFを敵視するCIA長官のアラン・ハンリーは、
イーサンをはじめとするIMFの勝手なふるまいをやり玉に挙げ、
IMFを解体してCIAの支配下に置くべきだと政府に訴える。
アランの進言は認められ、IMFのウィリアムとベンジーはアランの部下に。
ルーサーだけは、CIAの仕事などまっぴらごめんだと言って辞める。

半年後、アランは行方をくらましたままのイーサンを捕らえようと国際手配。
イーサンはイーサンで、IMFが解体されたことを知っても
シンジケートを追うことをやめようとしていなかった。
ようやくシンジケートのしっぽをつかんだイーサンは、
その陰謀を食い止めるべくひそかにベンジーに協力を依頼してくるのだが……。

なんだかんだ言ってこのシリーズ、大好きです。
ノースタントってホンマかいなと言いたくなるトム・クルーズ。
ウィリアム役のジェレミー・レナーも渋く、
なんと言ってもサイモン・ペッグがサイコー、ベンジー役で毎度笑わせてくれます。
腹黒いオッサンたちにアレック・ボールドウィンサイモン・マクバーニー
声だけ聞いていてもいらつく悪役にショーン・ハリス

あんまりドキドキハラハラはしないけど、テンポよくてただただスッキリ。
好きなのよん。

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『日本のいちばん長い日』

2015年08月18日 | 映画(な行)
『日本のいちばん長い日』
監督:原田眞人
出演:役所広司,本木雅弘,松坂桃李,堤真一,山崎努,神野三鈴,蓮佛美沙子,
   大場泰正,小松和重,中嶋しゅう,麿赤兒,中村靖日,キムラ緑子他

お盆のまっただなか、毎年恒例の全館停電のため、
職場ではほぼ強制的に有休を取らされる形で休み。
ちょうどレディースデーなので、3本ハシゴすることに。
1本目は大阪ステーションシティシネマにて。

1965年に出版された同名小説の原作者である半藤一利は1930年生まれ。
東大卒業後に就職した出版社で軍事記者の担当となったことから、
戦争体験者に取材するために日本中を奔走。
社内で「太平洋戦争を勉強する会」を主宰し、
それをきっかけに生まれたのがこの原作だそうな。
『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』(2011)と
『終戦のエンペラー』(2012)の間に当たる時期の物語になります。

1945(昭和20)年4月、戦況は悪化の一途をたどるなか、
昭和天皇(本木雅弘)の信頼厚い鈴木貫太郎(山崎努)が首相に就任。
鈴木は組閣の肝となる陸軍大臣に阿南惟幾(役所広司)を指名する。

7月、連合国によりポツダム宣言が発表される。
天皇臨席のもと開かれる御前会議では、首相、国務大臣、枢密院議長、枢密顧問官、
参謀総長、参謀次長、軍令部総長、軍令部次長、宮内大臣が顔をつきあわせ、
全日本軍の無条件降伏を受諾するか否かの議論がつづけられるが、意見がまとまらない。
鈴木はいよいよ天皇に聖断を仰ぐことに。

戦争終結の噂に、若手将校たちは気持ちがおさまらない。
陸軍少佐の畑中健二(松坂桃李)らは本土決戦を訴え、
何が何でも戦争を継続するよう阿南に強く迫る。
阿南はそんな将校たちを落ち着かせようとするが……。

もはや日本の負けは歴然としているというのに、それを認めることができず、
2000万人が特攻すれば勝てると本気で信じている将校たち。
正気だとは到底思えない言葉が次々と発せられます。それが戦争。
昭和天皇と東条英機のサザエの話が興味深く、印象に残りました。

こんなしっかりとした作品であっても、
『野火』を観たあとでは綺麗事に思えてしまうのですが、
それでも心に突き刺さる数々の言葉。
戦後70年とあって、戦争映画があまりに多く、どれを観るべきか困惑してしまうけれど、
どれも観ておくのが本当はいいのでしょうね。

娯楽性にも長けた原田眞人監督なので、ちらりと顔を出す戸田恵梨香松山ケンイチや、
「ごきげんよう」と通り過ぎる侍従役の中村靖日に喜び、
しかしこういうことに喜ぶ作品ではないんだろうなぁと気を引き締めるのでした。

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『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』

2015年08月17日 | 映画(あ行)
『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』(原題:Alexander and the Terrible, Horrible, No Good, Very Bad Day)
監督:ミゲル・アルテタ
出演:スティーヴ・カレル,ジェニファー・ガーナー,エド・オクセンボウルド,
   ディラン・ミネット,ケリス・ドーシー,ジェニファー・クーリッジ他

2014年のアメリカ作品で、日本では劇場未公開。
7月初めにDVDレンタルが開始されました。
劇場で観たものを優先してUPしていると、
ずいぶん前に書いたこれをずっと先送りにしたまま。
この辺りでそろそろUPしておきます。

プエルトリコ出身のミゲル・アルテタは、TVドラマを多く手がけています。
アメリカでは大ヒットしたのにDVDスルーの憂き目に遭うのは、
アダム・サンドラー同様、スティーヴ・カレルの知名度が低いからか。
製作には“ナイトミュージアム”シリーズ監督のショーン・レヴィが名を連ねています。
あまり期待せずに観たらさすがディズニー。なんちゅうことないけどかなり幸せ。

クーパー家は6人家族。次男のアレクサンダーが本作の主人公。
父親のベンは現在失業中だが楽天家で超前向き。
母親のケリーは絵本の出版会社に勤め、今の仕事が成功すれば副社長。
兄のアンソニーは明日のプロムにイケてる彼女セリアを連れて行く予定。
女優を夢見る姉のエミリーは学校の舞台で“ピーターパン”に主演する。
まだ赤ん坊の弟トレヴァーは両親の愛情をいっぱい受けている。

家族の誰もが幸せそうなのに、自分だけ不幸。
明日12歳の誕生日を迎えるというのに。

クラスメートを呼んで誕生パーティーをするはずが、
誕生日はずっと先のクラスの人気者フィリップが明日パーティーを開くという。
いいとこのボンボンだから、パーティーは盛大。
想いを寄せるベッキーやアレクサンダーの親友までもがフィリップのパーティーに行くだなんて。

授業でどこかの国について各自調べてくることになったから、
大好きなオーストラリアについて調べたいと思ったのに、
先生に指示されたのは聞いたこともないアフリカの国、ジブチ共和国。
家に帰ればトレヴァーのおしゃぶりを洗うように言われ、
ふてくされて洗っていたらおしゃぶりは排水口へ。

とにかく、クーパー家で不幸なのは自分だけ。
午前0時を過ぎて誕生日になった瞬間、
自らを小さなアイスクリームで祝ったアレクサンダーは願う。
どうか僕の家族にもサイテーでサイアクな気分を味わわせてくださいと。

するとその願いが叶ってしまう。
就活中のベンは面接で大失敗、ケリーも仕事で絶望的なミスを。
アンソニーはおでこに大きなニキビができたうえに、車の運転免許試験で暴走。
エイミーは風邪をひき、咳止め薬を飲みすぎて躁状態に。
トレヴァーはマジックインキを舐めて口のまわりが緑色に。

八つ当たり気味の家族たちが暴言の応酬を始めたとき、
アレクサンダーがぽつり。「全部、僕のせいなんだ」と。
僕が家族にサイテーでサイアクな日々をなんて祈ったから。

ここから家族が一致団結して奮起。
アレクサンダーにそんなことを思わせてなるもんかと頑張ります。
ズタボロになる車とかカンガルーの一撃とか、いろいろ可笑しく、
予定調和ではあることはまちがいありませんが、
心が温かくなり、元気をもらえる作品です。

楽天家の父親に向かって、「舵取りは必ずしも前向きでなくてもいいんだよ」と言う息子。
泣かせるじゃないですか。
同じくスティーヴ・カレルが出演していた『プールサイド・デイズ』と併せて
夏休みの終わりに家族で観るのもいいんじゃないかと思える作品でした。

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