夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ちはやふる―上の句―』

2016年03月25日 | 映画(た行)
『ちはやふる―上の句―』
監督:小泉徳宏
出演:広瀬すず,野村周平,真剣佑,上白石萌音,矢本悠馬,森永悠希,
   清水尋也,坂口涼太郎,松岡茉優,松田美由紀,國村隼他

小学校のときに百枚ぜんぶ覚えた百人一首。
学校のかるた大会ではクラスで一番になった思い出が。
今はもう忘れてしまっていますが、
丸一日もらえたらすべて思い出せるような気もしています。
若い頃に覚えたことって、けっこう思い出せるものですよね。
認知症になったら新しいことから忘れていくと聞きますが、
もし私がそうなったら、百人一首はわりと最後のほうまで覚えているものなのか。

競技かるたに情熱をそそぐ高校生たちを描いた本作を
梅田で5本ハシゴの3本目にチョイス。
TOHOシネマズ梅田本館へ戻りました。
原作は末次由紀の漫画。大ヒットコミックらしいですが、未読。
「上の句」と「下の句」の前後編に分けての公開です。

都立瑞沢高校に入学した綾瀬千早(広瀬すず)。
競技かるた命の千早は、高校に競技かるた部を発足させようと奔走。
彼女の容姿に惹かれた男子たちがかるた部の説明会に押し寄せるが、
かるたが始まるやいなや、鬼の形相と化す千早に恐れをなして逃げ出す。

担任の宮内教諭(松田美由紀)からは、部員が最低5人いなくては
クラブの新設は認めないと宣告され、千早は必死。
ちょうどそのとき、千早の幼なじみである真島太一(野村周平)と再会。
太一とは小学校時代に一緒にかるたに燃えた仲だが、
太一は中高一貫の中学校へと進み、離ればなれに。
まさか同じ高校に入学しているとは夢にも思っていなかった。
さっそく太一もかるた部に引き入れられる。

小学生のときに千早たちのライバルだった他校の生徒、西田優征(矢本悠馬)も同校に。
テニス部に一旦入部したものの、千早を見つけてかるた部へ。
かるた部のポスターを凝視していた呉服店の娘、大江奏(上白石萌音)もスカウト。
クラブへの入部が必須とされるこの高校で、
現時点でまだどこにも入部していなかった駒野勉(森永悠希)を強引に誘い、なんとか5人。
クラブの新設が認められる。

千早がかるたを続けているのには理由があった。
太一ともうひとりの幼なじみ、綿谷新(真剣佑)と3人でかつて最高のチームを組んでいた。
新は引っ越してしまったが、かるたを続けていれば3人でまた必ず会えると信じていたのだ。
かるた部を結成したことを新に報告する千早。
その隣で太一は、実は千早に会いたくて瑞沢高校をわざわざ受験したことを隠していたのだが……。

なにしろ原作未読ですから、比べてどうとかはわかりません。
とにかく楽しい。可愛い子は何をやっても可愛い。
髪の毛を振り乱しても白目を向いて寝ても(笑)、広瀬すずは可愛い。

上白石萌音も『舞妓はレディ』(2014)の印象そのままといえばそのままですが、
おっとりした中にも優しさと力強さを感じるとてもいいキャラ。
彼女が百人一首の一句一句について語る部分は聞き入ってしまいます。
小学生のときはただ字面だけ追って暗記したから、
上の句と下の句が今は繋がらずにいるけれど、
彼女の言うように意味を考えて覚えたならば忘れなかったはず。

男の子たちもそれぞれ良い持ち味で、
こんなバラバラな5人が力を合わせて試合に挑んだら、そら私は泣きます。
対戦相手のドS主将を演じる清水尋也も笑わせてくれました。

かるたの先生、國村隼がやっぱり○。
「青春全部賭けてもあいつには勝てない」との太一の言葉に、
「賭けてから言いなさい」。これだけで泣く(笑)。

4月29日公開の「下の句」も楽しみです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アーロと少年』

2016年03月24日 | 映画(あ行)
『アーロと少年』(原題:The Good Dinosaur)
監督:ピーター・ソーン
声の出演:安田成美,松重豊,八嶋智人,片桐はいり,石川樹他

梅田で5本ハシゴの2本目。
大阪興行協会主催の“映画の半券2枚でチャンス!映画鑑賞券プレゼント!”に当選、
5月末まで有効のその鑑賞券を1枚使って鑑賞しました。
「洋画は字幕で観る派」の私ですが、いったいどこで字幕版を上映しているというのか。
探すだけ無駄っぽかったので、吹替版を。
TOHOシネマズ梅田別館アネックスにて。ついにトイレが全部洋式だぁ。

優しいママと強いパパのもとに生まれた3匹きょうだいの恐竜のうちの1匹、アーロ。
体も大きくパパに似て力持ちの兄バック、賢く要領が良い姉リビー。
それに比べてアーロといえば、弱虫で甘えん坊。
両親から言いつけられた仕事をちっともこなせずにいる。

あるとき、冬をしのぐために貯蔵していた食糧を誰かに盗まれる。
パパは犯人を捕らえて始末することをアーロに命じる。
頼りないアーロに自信を持たせるためだ。

アーロが張り込んでいると、目の前に現れたのは人間の少年。
彼を殺すことなんてアーロにはできない。
パパは躊躇するアーロについてこいと言い、一緒に少年を追いかけるが、
その途中、激しい嵐に遭遇し、アーロを助けたパパは濁流に飲み込まれてしまう。

最愛のパパを失って悲嘆に暮れるアーロの前に、
性懲りもなくあの少年がまた現れる。パパが死んだのはこいつのせい。
今度こそ逃がすものかと息巻くが、河にドボン。
気を失って流され、目覚めるとまるで知らない土地。
帰り道もわからず、食べるものも見つけられない。

そんなアーロに食べ物を運んできたのがあの少年。
小さな体のくせして、何事にも動じない。アーロを守ろうとさえする少年。
言葉を話せない少年にアーロはスポットと名付けて一緒に旅を始める。

安心なディズニー配給作品。
映像がとても綺麗で、夕日を見て心を打たれるのは実写でもアニメでも同じ。

子ども向きだとは思うのですが、後半飽きたとおぼしき子ども客が
「まだ終わらないの?」とお母さんに聞いていたことに苦笑。
そうか、これじゃ子どもは最後までもたないのか(笑)。

言葉を知らないスポットの表情やしぐさがいいですね。
特に可もなく不可もないストーリー展開ですが、
前述の『エヴェレスト 神々の山嶺』ではまったく泣けなかった私、
これは泣きましたよん。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エヴェレスト 神々の山嶺』

2016年03月23日 | 映画(あ行)
『エヴェレスト 神々の山嶺』
監督:平山秀幸
出演:岡田准一,阿部寛,尾野真千子,ピエール瀧,甲本雅裕,風間俊介,
   テインレィ・ロンドゥップ,山中崇,佐々木蔵之介他

この間の日曜日、梅田で5本ハシゴに挑みました。
4本ハシゴしたことは何度かあるけれど、5本は初めてだったはず。
と思ったけれど、2013年の8月にやったことがあったようで。ふ~ん。
自分のことながら、ようやるわ(笑)。

1本目はムビチケを購入済みだった本作をTOHOシネマズ梅田本館にて。
原作は夢枕獏の『神々の山嶺』で、谷口ジローの作画により漫画化もされています。
いずれも未読ですが、原作ファンや山好きの人の間ではこの映画版は評判最悪。
世間の評判はあまり気にしないようにしているつもりだけど、
評判がよければ公開後1週間おいたりせずに観に行っていたかも。

1993年、ネパールの首都カトマンドゥ。
山岳カメラマンの深町誠(岡田准一)はエヴェレスト遠征隊に参加。
ところが事故が起き、犠牲者が出たことから遠征途中で中止に追い込まれる。
企画されていた写真集の話も白紙になり、
このまま何も持たずに帰らなければならないのかとガックリ。

そんな折り、骨董屋の店頭に古いカメラが並んでいるのを目にする。
もしかすると、イギリス人登山家ジョン・マロリーのものなのでは。

マロリーは1924年にエヴェレストに登ったが、帰っては来ず、
初登頂を果たしたのかどうかは謎とされていた。
それゆえ、初登頂は1953年、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイによるものとされている。
もしもこれがマロリーのカメラでフィルムが入っているならば、
エヴェレスト初登頂の記録が変わるであろう一大事。深町は色めき立つ。

しかしそこへ現れた男2人が、カメラの持ち主は自分たちだと主張し、持って行ってしまう。
男のうちの1人を見て深町はびっくり。
それは数年前に消息を絶った天才クライマー、羽生丈二(阿部寛)だったのだ。

帰国後、深町は山岳雑誌編集長の宮川(ピエール瀧)に直訴。
羽生を追えば大スクープが転がり込んでくるにちがいない。
深町は、羽生のライバルだった長谷渉(佐々木蔵之介)や、
羽生とともに山に登っていた井上真紀夫(甲本雅裕)にも面会し、
羽生について徹底的に調べはじめる。

そんな深町に岸涼子(尾野真千子)という女性が接触してくる。
彼女はかつて羽生と山でパートナーを組んでいた岸文太郎(風間俊介)の妹。
羽生を探しにカトマンドゥへ戻るという深町に涼子が同行するのだが……。

残念ながら山の恐ろしさも美しさもほとんど伝わってきません。
ここ数年、エヴェレスト登頂に関する作品が多く、どれも興味を惹かれて観てきました。
が、本作に関しては、たぶん登山家なら「ナメとんか」と言いたくなりそう。
いやいやそれは無理だから、と素人でも思ってしまう雑さ。

ハヤリに乗って、山の映画でも撮ってみた。そんな感じがアリアリです。
いくら豪華なキャストでも、感情を込めて叫ぶ台詞がしらじらしく聞こえてしまう。
なんだかとっても残念な作品なのでした。
これだけ泣く私なのに、一滴も涙が出ない。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

途中で挫折しかけたけれど、気を取り直して最後まで耐えた映画

2016年03月22日 | 映画(か行)
一旦観はじめた映画はどんな映画であろうと最後まで観ます。
劇場で途中退出することなんてあり得ないし、
かつてはビデオ、いまならDVDで観るときに、
早送りしたり途中で観るのをやめたりなんてこともまずしません。

が、2013年、わずか1カ月半の間に2度もそんなことをしかけました。
1本は完全に挫折、そのときに書いたのが「途中で挫折した映画」
もう1本は挫折しかけたけど涙目になりながらなんとか最後まで。
そのときに書いたのは「途中で挫折しかけた映画」

今回は一旦完全に挫折。
TSUTAYA DISCASでレンタル開始日を待って借りたものの、最初の15分で断念。
とっとと返却すべく封入しましたが、いざ投函する段になって、
「ホントにいいの、返しちゃって」と自分に問いかける心の声。
3日間悩んだ挙げ句、糊付けをぺりぺりと剥がしてDVDを取り出し、
気合いを入れてふたたびDVDプレーヤーにセット。
ここまで覚悟して観なあかんか?と自問しましたが、
観終わってみれば、まぁ観てよかったと言えるでしょう。つらかった(泣)。

さて、そこまで覚悟を決めて観たのは『木屋町DARUMA』。
2014年の作品で、監督は榊英雄
役者としての出演作のほうが多く、顔をご存じの人も多いかも。
十数本の監督作の中に『誘拐ラプソディー』(2009)も含まれていて、
まさかこんなえげつない作品を撮る人だとは思いもよらず。

京都の歓楽街、木屋町を舞台にした作品ということで、
昨年暮れに立誠シネマプロジェクトで上映されていました。
劇場からは逃げられないので、このときに観たほうがこんなにつらくはなかったかも。

子分の裏切りに片を付けるため、自ら四肢を失ったヤクザ・勝浦(遠藤憲一)。
今はその体を活かして借金取りを仕事としている。
組長の古澤(木村祐一)から勝浦の世話係を言いつけられた坂本(三浦誠己)は、
借金を返そうとしない顧客のもとを訪れると、勝浦をその場に放り込む。
勝浦は顧客の部屋の畳の上を這い回り、借金を返すまで面倒をみろと言いつのるのだ。
この作戦は非常に有効で、顧客の誰もが観念する。

その日訪れたのは、これまでいつも開き直ってきた顧客・新井(寺島進)。
目の前で高校生の娘をいたぶられた新井はさすがに降参。
しかし、新井の借金はあまりに大きすぎ、娘が風俗で働かされることに。

勝浦が四肢を切断せざるを得なかった経緯を知った坂本は、
そこに何らかの陰謀があったのではないかと思いはじめる。
当時の勝浦は飛ぶ鳥を落とす勢い。彼を妬む者が何かを仕掛けたのでは。
黒幕はいったい誰なのか。

と、こんな話。

私が一旦挫折したのはたったの最初の15分のところ。
勝浦が新井宅に放り込まれた時点でもうギブアップでした。
かつて私が挫折した、あるいは挫折しかけた作品がそうだったように、
これも耐えられなかったのはう○こネタ
勝浦が嫌がらせのために糞尿を垂れ流すのです。
そして任務完了後は坂本がそれを洗い流すシーンまで。
見せなくてもええっちゅうの。

なんとか気を取り直してもう一度観はじめたところからは
糞尿垂れ流しのシーンはなかったものの、げろげろバイオレンス。
ゲロまみれ、錐で耳の中を突く、むちゃくちゃ。

一流どころの役者ばかりが出ているのでなんとか最後まで。
悲哀を感じるバッドエンドは悪くはなかったですが、
もう一度観るのは絶対ムリッ!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『偉大なるマルグリット』

2016年03月21日 | 映画(あ行)
『偉大なるマルグリット』(原題:Marguerite)
監督:グザヴィエ・ジャノリ
出演:カトリーヌ・フロ,アンドレ・マルコン,ミシェル・フォー,クリスタ・テレ,
   ドゥニ・ムプンガ,シルヴァン・デュエード,オベール・フェノワ他

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
20世紀前半のアメリカに実在した“音痴の歌姫”、
フローレンス・フォスター・ジェンキンスに着想を得て、
フランス人のグザヴィエ・ジャノリ監督が撮った作品。

1920年のフランス。
パリ郊外にあるマルグリット・デュモン男爵夫人の大邸宅で、
チャリティーを目的としたサロン音楽会が開かれる。
マルグリットから直々に招かれて出席した若手女性歌手アゼルは、
豪華な屋敷と集まった貴族たちの様子に心をときめかせ、
自分の出番が終わったあと、マルグリットの登場を心待ちにしている。

この音楽会に招かれてもいないのに忍び込んだ男性がいた。
新聞記者で辛口音楽評論家のボーモンは、初対面のアゼルと言葉を交わし、
ふたりしてマルグリットについて想像をめぐらせる。

いよいよ主役のマルグリットの登場。
派手な衣装に身を包み、威風堂々と歌いはじめた彼女だったが、アゼルとボーモンは唖然。
なんと彼女は信じがたい音痴だったのだ。
その場に居合わせた者はそんなことは最初から知っているふうで、
大まじめな顔でマルグリットの歌を聴いている。
富豪のマルグリットに「あなたは音痴だ」と指摘することなど誰もできず、
夫のジョルジュすら何も言えずに耐えているらしい。

これは凄いことだと笑わずにはいられないボーモンは、
翌日の新聞に「孤児の心を代弁する歌声」と評論記事を書く。
その記事をそのまま褒め言葉だと受け取ったマルグリットは大喜び。
ボーモンは彼女を公の場に引っぱりだすことを画策するのだが……。

「音痴」というもののを私が知ったのは小学校低学年のときでした。
ひとりずつが歌う音楽のテストで、その歌声を聴いたときの衝撃は今も忘れられません。
単に歌が下手なわけではないんだ、音程がわからないんだと驚きました。
しかも本人はそれにまったく気づいていない。
その事実を知るのはいつなんだろう、誰が知らせるんだろうと思いました。

5年、いや10年近く前だったか、アナウンサーの内田恭子さんが音痴だとかで、
音痴は矯正できるのかという試みの番組を見ました。
へぇ、ある程度は矯正できるんだなぁとそのとき驚いたのも覚えています。

小学校のときの同級生にしてもウッチーにしても、
歌うことが決して楽しそうには見えなかったので、
もしも音痴で歌うことが好きだという人がいたら、
自分の歌声はどう聞こえているのか、歌うと気持ちいいのか、
そんなことを素朴な疑問として感じます。

「妻はなぜ歌うのだ」という夫ジョルジュの疑問が繰り返されます。
夫を振り向かせるためだというところに持って行きたいようですが、
どうもそうとは思えない。実際それは逆効果なわけで。

うなるほどの金を持ち、それが故に誰も真実を指摘できなかった彼女。
「お金が問題なのではなく、お金があることが問題なの」という、
わりと最初のほうに出てきた台詞が心に残っています。

シビアなラストに、コメディで終わらせられなかった哀しさが。
いい作品だったとは言いづらいものがあります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする