夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『64―ロクヨン― 後編』

2016年06月22日 | 映画(ら行)
『64―ロクヨン― 後編』
監督:瀬々敬久
出演:佐藤浩市,綾野剛,榮倉奈々,夏川結衣,緒形直人,窪田正孝,坂口健太郎,
   筒井道隆,鶴田真由,赤井英和,吉岡秀隆,瑛太,永瀬正敏,三浦友和他

甲子園でソフトバンク戦を観る前に2本ハシゴの2本目。
前述の『アウトバーン』と同じくTOHOシネマズ西宮にて。

『64―ロクヨン― 前編』を観てからほぼ1カ月、楽しみにしていた後編です。
前編の最後は、「なぜか空っぽになっている刑事部の謎」でした。

ただでさえ日頃から対立している群馬県警刑事部と警務部。
その険悪なムードに追い打ちをかけるように流れる噂は、
刑事部長の座が警察庁人事になるらしいというもの。
刑事部が空っぽである理由を、刑事部のボイコットだと考えた三上(佐藤浩市)。
しかし実はそうではなく、“ロクヨン”を模倣した誘拐事件が発生していた。

ロクヨンと同じ身代金額、同じスーツケースの指定。
身代金を人質の父親が一人で車で運ぶようにという要求も同じ。
そして犯人からの次の指示を受けるために指定された店も同じ。
人質となっている少女は不良で、狂言誘拐の可能性も高いが、
誘拐事件である以上、三上は記者クラブと報道協定を結ばざるを得ない。

しかし、肝心の捜査情報は刑事部からほとんど提供されず、
記者会見の席を設ければ、刑事部からそこに派遣されてきたのは
事の大きさにおよそ見合わない捜査二課長の落合(柄本佑)。
地元紙記者のリーダー的存在である秋川(瑛太)は憤懣をあらわにするが、
東京の新聞本社からやってきた記者たちは秋川たちをも馬鹿にする。

このまま刑事部から情報がくるのをただ待っていたのでは埒があかない。
そう考えた三上は、おどおどしつつもなんとか局面を乗り切ろうとする落合や、
部下の諏訪(綾野剛)、蔵前(金井勇太)、美雲(榮倉奈々)に持ちこたえるように命じると、
刑事部時代の上司・松岡(三浦友和)をつかまえ、
松岡が指揮を執る捜査車両に同乗させてほしいと直談判するのだが……。

正直なところ、後編にはガッカリです。
ラストの30分はすべて映画オリジナル。
前編はあれだけ原作に忠実だったのに、後編の構成はなんでこんなになっちゃったのか。
客に犯人をバラすのが早すぎるから、
雨宮(永瀬正敏)がたったひとりでおこなったことの重みが半減。
彼に手を貸した幸田(吉岡秀隆)も原作よりずいぶん軽い。
みんないい役者なだけに、もったいないなぁという印象が強いです。

ま、原作通りに終わっていれば、物足りない客も多いことでしょう。
映画で余韻を持たせるのは難しいと思われ、
ならばわかりやすく「映画的」に白黒はっきりさせておくことにしたのかと。
ただこれはものすごく安直で、これこそ寺脇研氏にクソミソに言われる形では。(^^;

前編では佐藤浩市が格好よかったですが、
後半では断然、永瀬正敏と三浦友和。
個人的には残念な後編だっとはいえ、渋いおじさま方の演技には惚れ惚れします。
永瀬正敏演じる雨宮の「気持ちの整理をつける」という台詞にもジーンと来ました。

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『アウトバーン』

2016年06月21日 | 映画(あ行)
『アウトバーン』(原題:Collide)
監督:エラン・クリーヴィー
出演:ニコラス・ホルト,フェリシティ・ジョーンズ,マーワン・ケンザリ,
   ベン・キングズレー,アンソニー・ホプキンス,クレーメンス・シック他

平日のナイター、甲子園でソフトバンク戦を観戦する日、
その前に午後休を取ってTOHOシネマズ西宮へ。

イギリス/ドイツ作品。
イギリス出身のエラン・クリーヴィー監督の作品で、
メガホンを取るのは『ビトレイヤー』(2013)に次いで2作目。

「アウトバーン」といえばドイツ。
2002年、2006年とドイツへ遊びに行ったとき、気持ちよく走りました。
てっきりアウトバーンをかっ飛ばす(だけ)の作品だと思っていたら、
意外にアウトバーンの疾走シーンは少なかった。
それもそのはず、原題は全然ちがう“Collide”で、「衝突する」の意なんだもの。

自動車泥棒の天才的な腕を持つアメリカ人青年ケイシーは、
ドイツでマフィアを率いるゲランのもとで働いている。
ある日、アメリカ人女性ジュリエットに一目惚れ。
彼女を口説くために裏社会から足を洗うことを決意、真っ当な仕事に就く。

一緒に暮らしはじめたふたりがつましくも幸せな日々を送っていた矢先、
ジュリエットが腎臓に重い疾患を抱えていることが判明。
生き延びるためにはアメリカに帰国して移植を受けなければならない。
手術には20万ドルもの費用が必要で、とても払えない金額。
ケイシーはゲランにまた仕事がしたいと連絡する。

ゲランの狙いは、一見ビジネスマン、実は麻薬王のハーゲンを陥れること。
これまでゲランはハーゲンの忠実な部下となって仕事をこなしてきた。
いつかハーゲンに対等なパートナーとして認められることを願っていたのだが、
その申し出をハーゲンから鼻で笑われ、出し抜くことを画策中。

ケイシーは気心の知れた相棒タラスと組み、
ハーゲンがチリから密輸した膨大な量のコカインをトラックごと強奪することに。
綿密な計画を練り、決行の日を迎えるのだが……。

ケイシー役のニコラス・ホルトは子役から順調にキャリアを積み上げている俳優。
『アバウト・ア・ボーイ』(2002)の面影そのままに、
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)ではインパクトあるウォーボーイ。
ほわ~んとした和み顔でどこか情けなさを感じさせますが、
マヌケにも知的にも見えるのがいいところ。

アウトバーンを疾走するシーンが意外に少なかったのは期待外れですが、
それを差し引いても痛快。何しろ脇を固めるのが老齢の両名優。
ゲランにはベン・キングズレー、ハーゲン役にはアンソニー・ホプキンスですから。

悪は叩きつぶされて、愛は勝つ。
軽く観るにはもってこいの作品でした。

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TSUTAYA DISCASの月額レンタル枚数消化のために観ているアニメ

2016年06月19日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
TSUTAYA DISCASで契約しているプランは、月額3,964円の「定額レンタル16」。
一度に送られてくるのは2枚、それを8回繰り返すことになります。
16枚借りきった後は、旧作であれば追加料金なしでレンタル可能。
DVDでしか映画を観ない場合はかなりお得と言えますが、
劇場で観る頻度が上がってからというもの、月にDVD16枚も観られない。

TOHOシネマズのフリーパス所持期間中だった先月など、
劇場で観た本数が32本だったから、DVDはわずかに3本しか観られず。
ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012)と『劇場版 MOZU』(2015)と
ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』(2014)でした。

月のレンタル枚数が16枚に到達しなかった場合は翌月に繰り越せるといえども、
こんなペースでしかDVDを観ないのなら、繰り越し分は溜まる一方。
観られないなら解約してもっと安いプランにすればいいのですが、
体力的にいつまで劇場で観られるかわからないから、ついつい解約を保留。
それに、劇場で観逃した作品がまだまだあるんだもの。

で、とりあえずあまり繰り越し分が溜まらない程度に消化しようと、
就寝前に歯磨きでもしながら観られそうなDVDを物色。
手っ取り早いのは1枚に2話程度収録されているアニメ。
さらに今後のことも考えて、シーズン何期にも渡っているものが○。

こんなふうに考えてレンタルしたうちのひとつが“僕だけがいない街”だったりします。
次は“おそ松さん”でも借りたいなと思うけれど、これは競争率が高い。
枚数を消化するためには待ち時間なく発送されるものでなければ意味がないのでパス。
ならばと手を出したのが“WORKING!!”です。

原作は『ヤングガンガン』に掲載された高津カリノの漫画。
2005年から2014年にかけて連載、2015年に続編が後日談として掲載されたそうです。
TVアニメのほうは第3期まで製作され、つい先日は劇場で関連イベントがあった模様。
そんなに人気があるとは。

舞台は北海道のファミリーレストラン“ワグナリア”。
背が低いことを本気で悩んでいる(けど巨乳)の女子高生、種島ぽぷら。
揃いもそろって背が高い女系家族に唯一男として生まれたせいで、
小さいものに憧れる男子高校生、小鳥遊(たかなし)宗太。
男性恐怖症で、男が近づくと殴ってしまう伊波まひる。
仕事をまったくしない元ヤンの店長、白藤杏子。
幼い頃に杏子に助けられてから「杏子さん命」のお嬢、轟八千代。
人当たりが良さそうなのに、人の弱みを握るのが上手い相馬博臣。
クールで無愛想、だけど実はお嬢に片想いしている佐藤潤。
ワグナリアのマネージャー、音尾兵吾が拾ってきた家出中の娘、山田葵。
主なアルバイトとスタッフはそんなところ。

キャピキャピした絵とアニメ声に、最初はムリかもと思いましたが、
なんだか気になって借りつづけ、すでに第3期序盤までレンタル。
いつのまにか虜になり、先を観ずにはいられなくなりました。
主な登場人物以外にも、小鳥遊家の姉妹たちや、行方不明の妹を探す山田桐生、
杏子の言うことなら何でも聞く元暴走族のメンバーたちなど、みんなお茶目。
ファミレスが舞台のわりに、料理はほとんど出てこないのはつまらんけど、
じゅうぶんにハマっています。

あと数本で“WORKING!!”は全部鑑賞。
これが終わったら次は何を観ればいいんだろうと、またまた物色中です。

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『マネーモンスター』

2016年06月17日 | 映画(ま行)
『マネーモンスター』(原題:Money Monster)
監督:ジョディ・フォスター
出演:ジョージ・クルーニー,ジュリア・ロバーツ,ジャック・オコンネル,
   ドミニク・ウェスト,カトリーナ・バルフ,ジャンカルロ・エスポジート他

前述の『二ツ星の料理人』をなんばパークスシネマで観てから、
TOHOシネマズなんばへ移動。その間15分。
やっぱり遠いよ、なんばパークスシネマ。
余裕だと思ったけれど、座席に着いたのは予告編が始まる直前でした。

監督はジョディ・フォスター
演技は俳優陣に任せて、ご本人はメガホンを取ることに潔く専念しています。
キャッチコピーは「真実は生中継で暴かれる」。

週5日放送される投資情報番組“マネーモンスター”。
司会者リー・ゲイツのおちゃらけたトークが大人気だが、台本はまるで無視。
番組スタッフは、生放送なのに毎度暴走するリーにやきもきしっぱなし。
彼の行動を的確に予測する番組ディレクターのパティ・フェンなしでは成り立たない。

今日も生放送が始まり、いつものように暴走するリー。
ところがスタジオ内に不審な人影が見え隠れし、
パティが気づいたときにはその人影が銃を発砲、リーを人質に取って立てこもる。

犯人は配達を装ってスタジオに侵入したカイル・バドウェルという若者。
彼はリーがもたらした株式情報を信じて全財産を投資したせいで一文無しに。
なぜこんなことになったのかと、興奮しつつも説明を求める。

体に爆弾を装着させられ、犯人と運命を共にすることになってしまったリー。
犯人を刺激しないようにとリーに釘を刺すパティだったが、
スタッフに指示をしてあれこれ調べさせるうち、
問題の投資先に怪しい動きがあることに気づき……。

ムビチケを購入済みだったので観に行きましたが、
これより観たかったのが阪本順治監督の『団地』でした。
ジョージ・クルーニージュリア・ロバーツよりも
藤山直美岸部一徳でしょ!と思いつつの鑑賞でしたが、はらはらドキドキ。
株式のからくりも面白く、ジョディ・フォスターの知性を感じます。

ジュリア・ロバーツは、そろそろ恋愛もののヒロインには厳しい年齢。
色恋抜きの本作では、実にスマートで格好いいディレクター役。
いい具合に年を重ねているなぁと思いました。
この手の役の需要はまだまだあるでしょうね。

直美と一徳を見てみないことにはどっちが良かったかはわかりませんが、
ジョージとジュリアも凄く楽しかったのでした。

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『二ツ星の料理人』

2016年06月15日 | 映画(は行)
『二ツ星の料理人』(原題:Burnt)
監督:ジョン・ウェルズ
出演:ブラッドリー・クーパー,シエナ・ミラー,オマール・シー,
   ダニエル・ブリュール,ユマ・サーマン,エマ・トンプソン他

日本で公開される映画の本数は、ここ3年ずっと1,100本以上。
1955年から2012年までは1,000本を超えることはなく、
だいたい500本~800本前後が公開されていました。
その頃であれば、劇場で年間200本観たならばまぁ自慢できる数字かと思いますが、
公開本数1,000本以上となると、あれも観逃したこれも観逃したと後悔することしきり。
しかもどんどん公開されるから、そのぶん打ち切りになるのも早い。
前売り券を買ったのに、ぼやぼやしているともうやってない(泣)てなことに。

そんなわけで、数カ月前にムビチケを購入済みだった本作を公開直後に。
どうしても観たかった1本。なんばパークスシネマにて。
色気を感じる男、ブラッドリー・クーパーの主演です。
『アメリカン・スナイパー』(2014)のようなシリアス一辺倒の役もいいけれど、
こんなちゃらんぽらんな面も持ち合わせた役がよく似合います。

天才シェフの名をほしいままにしてきたアダム。
彼が勤めるパリの一流レストランはミシュランの二ツ星を獲得。
しかし、私生活に難を抱える彼は突然姿を消し、そのせいで店はつぶれる。

誰も彼の行方を知らず、死んだのではないかとの噂が流れる3年後。
かつてさんざん迷惑をかけたオーナー親子が経営するロンドンのホテルに
アダムはひょっこり姿を現し、シェフとして雇えと言いつのる。
オーナーの息子であり、優秀な給仕長でもあるトニーが呆れて追い返すと、
アダムは旧知の料理評論家を利用した強硬手段に打って出る。

仕方なくアダムを雇うことに決めたトニー。
だが酒乱のアダムに以前と同じような目に遭わされるのはまっぴらごめん。
トニーのかかりつけの医者のもとへアダムも通うことを条件とする。

アダムは全盛時代の料理人仲間ミシェルとマックス、
アダムを神と崇める若者デヴィッドをスカウト。
それに他店の女性スーシェフ、エレーヌを強引に引き抜くと、
絶対に三ツ星を取ると誓い、自分の名前を冠した新店をオープンさせるのだが……。

レストランの映画に料理や厨房のシーンが出てくるのは当たり前ですが、
従来の作品よりもオープン前の様子がわかるのが楽しい。
テーブルクロスを掛ける、カトラリーを並べる、その綿密に計算された配置。
また、ミシュランの覆面調査員の見極め方にも興味を引かれました。

料理さえ旨ければ客が来るというのはシェフの傲慢。
すべてのスタッフに支えられているのだということがわからなければ、店は成功しない。
ひとりでできるのならば、ひとりで店をやっていればいいわけで。

パリの店で同僚だったライバル、リースとのやりとりがとてもいい。
お互いに意識しすぎて喧嘩するけれど、
それでもいちばん辛いときを一緒に乗り切った仲間。
リースがアダムのためにオムレツをつくるシーンに泣きました。

アダムを演じるブラッドリー・クーパーはもちろんのこと、
シエナ・ミラーがシングルマザーのエレーヌ役を好演。
トニー役のダニエル・ブリュールも最近の出演作のなかでいちばん好き。
医者役のエマ・トンプソンがさすがの風格を見せています。

ミシュラン一ツ星でもルーク・スカイウォーカー
二ツ星ならアレック・ギネス。
三ツ星ならヨーダかダース・ベイダーだそうです。

料理の映画にはどうしても点が甘くなる私。これも大好き。

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