夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『流浪の月』

2022年05月16日 | 映画(ら行)
『流浪の月』
監督:李相日
出演:広瀬すず,松坂桃李,横浜流星,多部未華子,趣里,
   三浦貴大,白鳥玉季,増田光桜,内田也哉子,柄本明他
 
公開初日だった先週金曜日、イオンシネマ茨木にて舞台挨拶中継付きの回を鑑賞しました。
同日アースシネマズ姫路に行った友人によれば、朝イチの時点で100人ほど並んでいたそうです。
開館を待って観るのは『死刑にいたる病』なのか本作なのか。いやいや、そりゃ本作でしょう。
と思ったけれど、よくよく考えてみればそれは『シン・ウルトラマン」目当ての客ですね。
 
原作は凪良ゆうの同名ベストセラー小説。2020年の本屋大賞受賞作です。感想はこちら
監督は『悪人』(2010)や『怒り』(2016)の李相日。重いこと必至。
だけど考えてみれば、『フラガール』(2006)だって同監督なんですよ。嘘みたい。
 
10歳の少女・家内更紗(白鳥玉季)は、引き取られた伯母の家で従兄から性的虐待に遭っている。
帰りたくなくて時間を持て余していた公園で、大学生・佐伯文(松坂桃李)から声をかけられる。
更紗は目の前の文に不思議と恐れを感じず、ついていくことにする。
 
初めて安心して過ごせる場所。
それから2カ月間、更紗は文と一緒に暮らすが、湖畔に出かけた日、文は誘拐犯として逮捕される。
文は悪くない、何もされていない。自分に悪いことをしたのは従兄なのに。
けれど何をどう説明しようとしても、更紗は傷ついた被害者としてしか扱われない。
 
大人になった更紗(広瀬すず)はファミレスに勤め、恋人・中瀬亮(横浜流星)と同棲生活を送っていた。
ある日、同僚・安西佳菜子(趣里)と共に入った深夜営業カフェのオーナーがあの文だと知る。
15年前、自分が「文は何も悪くない」と言えなかったせいで大変な日々を送ってきただろう。
今は幸せなのか、穏やかに暮らせているのかが気になってカフェを訪れる更紗だったが……。
 
ロリコンってつらいの?」と幼い更紗から尋ねられた文が、
「ロリコンでなくてもつらいことは世の中にたくさんあるよ」と答えるのが印象的。
 
公園にいつもひとりで佇み、少女たちを眺めていた文はロリコンと噂されていました。
小児性愛者としか見られない彼をかばう更紗は、ストックホルム症候群だと周囲から思われています。
しかし実は文はそうではないのですよね。
 
文の身体がどういう状況にあるのか、原作では露骨には書かれていないので、
「いったい何の病気だったの」ともやもやしたままの人がいるかもしれません。
そういう方には是が非でも本作を観てほしい。ここまで見せちゃいますかと思って、私はしばし唖然。
 
ネタバレになりますが、文の身体は子どものまま成長が止まって大人になれません。
私は低身長症ぐらいしか知らなかったので、見た目はちゃんと成長しているのに、
性器の成長のみ止まってしまう病が実際にあるのかなと思って調べました。
ネットでヒットしたのは類宦官症(るいかんがんしょう)という病。
男性特有の二次性徴が来ないそうで、陰毛が生えず、陰茎や精巣が大きくならないそうです。
 
この役を演じるために激痩せした松坂桃李が最後に全裸になって、
文の身体がどうなっているのかを泣きながら更紗に晒すシーンは原作にはないもので衝撃的。
モザイクが入るのかと思ったら、特殊メイク(ですよね!?)を施した小さなアソコをモロ写し。
あのシーンがあるほうがいいのかどうか、私にはわかりません。
でも、こういうことだったのか!とはっきりわかって鑑賞者はスッキリできますね。
 
ファミレスの根っから善人の店長に三浦貴大。現在の文の恋人・谷あゆみ役が多部未華子
出番は一瞬なのに存在感ありあり、カフェと同じビルに入る店の店主・阿片役に柄本明
これも出番が少ない文の母親役に内田也哉子。どんどん樹木希林に似てきますねぇ。
 
この映画化が正解なのかどうかもわからないけれど、原作で感じた切なさは出ていると思います。
他人がどうしても「あったこと」にしたいのは何故なのでしょう。
先入観に囚われず、思い込みではない見方をすることが必要なのだと感じます。
 
さて、後回しになりましたが、舞台挨拶の感想も書きたい。
壇上には李監督と広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、内田也哉子。
どの映画の舞台挨拶のときも私が注目したくなるのは自己紹介。
広瀬すずと松坂桃李、多部未華子は「何々役を演じさせていただきました」。
内田也哉子に至っては「やらせていただきました」。「やらさせて」と言わなかっただけマシか。
横浜流星のみ、「中瀬亮を演じました横浜流星です」。私の中の彼の株さらにUP。
 
まったく、誰の許可を取って「させていただいている」のですか。
そう言っておけば、「私がこの役だなんておこがましいことですが、皆さん許してくださいね」という、
控えめで謙虚な感じが出るということなのでしょうが、私は大嫌い。
しかし最近ではこの言い方をしない人は偉そうだという印象すら持たれそうですね。
多部未華子は「松坂さんの体に触らせていただいて」なんて言い方もしていました。
さすがにこれについては司会者からツッコミがありましたけれど。
 
舞台挨拶の回というよりは、言葉遣いの感想になりましてすみません。(^^;
 
いちばん問題があるのは、幼い更紗を置き去りにした母親だと思うけれど、そこは原作でも映画でも言及なし。
自分が産んだ子なのに、好きな男ができたら置いて出て行く。
この母親はその後いったいどうしているのだろうと思ったりします。

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『パリ13区』

2022年05月15日 | 映画(は行)
『パリ13区』(原題:Les Olympiades)
監督:ジャック・オーディアール
出演:ルーシー・チャン,マキタ・サンバ,ノエミ・メルラン,ジェニー・ベス他
 
終業後にせっかくなんばパークスシネマまで出向いたのでもう1本。
 
絡みのシーンが多くてR18+指定ですが、
これでAVを観ているみたいに興奮する人がいるとしたら、「変態」と言いたい(笑)。
 
パリ13区とは、市の南部、セーヌ川の南岸に面する区域だそうです。
そこに暮らす3人の女性と1人の男性が主な面々。
 
台湾系フランス人のエミリーは、祖母が所有するアパートの一室で暮らしている。
ルームメイトを募ったところ、やってきたのはアフリカ系フランス人の男性教師カミーユ。
男性ではなく女性とルームシェアするつもりだったが、意気投合して即ベッドへ。
ところがカミーユは束縛を嫌い、エミリーの誘いに乗らなくなったばかりか、
同僚の女性教師を連れ込むようになる。
ブチ切れたエミリーに対してカミーユも切れ、部屋を出て行ってしまう。
 
その頃、30歳を過ぎてから大学の法学部に復学した女性ノラは、
自分よりずっと年下の学生たちと友人関係を築きたくて、ある夜パーティーへ。
金髪のウィッグをつけ、完璧なメイクを施して参加したところ、
有名なポルノ女優アンバー・スウィートにそっくりで勘違いされる。
大学で笑いものにされて居づらくなったノラが就職したのは、
カミーユが一時的に任されている不動産会社で……。
 
悩み事があからさまに語られるわけではないのですが、
それぞれがそうそう人には言えない事情を抱えていることがわかります。
 
エミリーの祖母は老人ホームに入居していて、どうやら認知症の兆候がある。
母親との関係も上手く行っていない様子です。
 
カミーユは生徒から信頼されている教師でしたが、上級資格を取りたい。
母親は亡くなっており、父親は吃音症の妹と二人暮らし。
 
ノラは叔父が経営していた不動産会社にかつて勤めていて、営業の知識も能力も確か。
けれどその叔父と長らく性的関係にあったことが心に影を落としているふう。
自分が間違えられたアンバー・スウィートのチャンネルを思わず見に行き、
常に性的な目に晒されているアンバーと画面越しに話すうち、
お互いにその時間だけに安らぎを感じるようになってゆきます。
 
エミリーとカミーユの、同居を解消してからの関係性が面白い。
とはいうものの、私にはエミリーがカミーユをそこまで愛しているとは思えず、
ラストは「あらら、そうなの?」という感じでした。
単に、目の前の相手がほかの異性に気をとられているのが面白くないだけかと思っていましたから。(^^;
 
4人の見た目にもあまり惹かれなかった点も引くと、めっちゃ良かったとは言いがたい。
でも、孤独に打ちのめされそうになりながらも生きている彼女たちに共感できる部分はあるし、
なにより私のイメージにはなかったパリの様子と、全体に漂う雰囲気も好きでした。
 
食事するシーンがほぼゼロに近いことに後から気づく。食欲より性欲ってか。

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『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

2022年05月14日 | 映画(ま行)
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(原題:My Salinger Year)
監督:フィリップ・ファラルドー
出演:マーガレット・クアリー,シガーニー・ウィーヴァー,ダグラス・ブース,ショーナ・カースレイク,
   コルム・フィオール,ブライアン・F・オバーン,ヤニック・トゥルースデール,ハムザ・ハク他
 
近所の劇場で何も割引がない日は気持ちに迷いが出てとても厄介です。
遠方まで行く気なんてまるで起こらないにもかかわらず、
しゃあないなぁ、甲子園も雨で試合中止やし、なんばまで行くかと。
 
渋々向かいはしましたが、とても観たかったアイルランド/カナダ作品です。
本作に関しては批評家は好意的に評価、一般人では退屈だと言う人が多いようですが、
私にとってはとても心地よくて穏やかな気持ちになれる作品でした。
 
主人公はアメリカ人の実在のジャーナリスト、ジョアンナ・ラコフ。
彼女の自伝『サリンジャーと過ごした日々』が基になっています。
「サリンジャー」とは言うまでもなくあの『ライ麦畑でつかまえて』の作家のこと。
 
作中ではジョアンナについての説明がないため、知らなければフィクションだと思ってしまいそう。
彼女は1972年にニューヨーク州で生まれ、オハイオ州の大学で学んだ後、
ロンドンの名門大学で英文学の修士号を取得していますが、
映画の中ではカリフォルニア州バークレーに住んでいたことになっています。
 
1995年。作家志望のジョアンナは、同じ志を持つ友人を訪ねてニューヨークへ。
恋人のカールが待つバークレーに戻るのをやめて、このままここで仕事を探すことにする。
出版社は作家志望の若者を採りたがらないとの噂を聞き、出版エージェントに応募。
そこは顧客の中にあのJ・D・サリンジャーもいる老舗のエージェントだった。
 
ジョアンナを面接したのはサリンジャーの代理人を務めるマーガレット。
マーガレットの助手として無事採用され、ウキウキするジョアンナだったが、
彼女に与えられた仕事はテープ起こしとサリンジャー宛のファンレターを処分すること。
サリンジャー自身がファンレターに返事を書くことはないばかりか読みもしないという。
一応ジョアンナが読んでから定型化されている文言でファンに断りの手紙を書き、
その後はシュレッダーにかけて処分するように指示を受けて……。
 
エージェントのこの対応に耐えきれず、ジョアンナはこっそりファンに返事を書いたりも。
しかし別にサリンジャーの名を騙るのではなく、ちゃんと自分の名で書きます。
そのせいで彼女めがけて苦情を言いにやってくる学生なんかもいる。
サリンジャー本人から返事をもらえたら成績Aをもらえるはずだったのにもらえなかったとか。
逆恨みもいいとこですよね(笑)。
 
ファンレターを読み、このファンがどんな人物なのかとジョアンナは思いを馳せる。
そのシーンがファンタジックなので、そこがお好みでない人も多いはず。
また、派手な展開が待っているわけでもなければ、娯楽に富んだ場面もないため、
退屈だという人がいるのもわかります。でも、つまらないとすぐ寝る私が寝なかった。(^o^)
 
ジョアンナ役のマーガレット・クアリーが知的で可愛い。
何もかも計算尽くではないと思えるところに好感が持てます。
上司のマーガレットを演じるのはシガーニー・ウィーヴァー
鬼女性上司と新人秘書という構図から『プラダを着た悪魔』(2006)のように宣伝されていますが、
同じなのはその立場だけですよね。業界が違うのですから、起きることも違う。
『プラダを着た悪魔』も大好きだったけど、私はこっちも好きだな~。
 
ひとつ解せないのは、ジョアンナがニューヨークで同棲を始めた相手ドン。
ダグラス・ブースという役者は過去にも私は見たことあるらしいけど知らん。
ダニエル・ラドクリフを太らせたみたいな感じで、好きじゃない。
こんな自意識過剰な奴よりもバークレーに置いてきた元カレ、カールのほうが断然ええやん。
と思っていたら、ジョアンナが振ってくれてスッキリしました。
 
私は、出版関係の会社が舞台という設定が好きなのかもしれません。
 
ところで、今のいま知りました。
マーガレット・クアリーって、あの『フォー・ウェディング』(1994)のアンディ・マクダウェルの娘だったのね!?

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『死刑にいたる病』

2022年05月13日 | 映画(さ行)
『死刑にいたる病』
監督:白石和彌
出演:阿部サダヲ,岡田健史,岩田剛典,宮崎優,鈴木卓爾,佐藤玲,赤ペン瀧川,
   大下ヒロト,吉澤健,音尾琢真,岩井志麻子,コージ・トクダ,中山美穂他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて1本だけ。
 
原作である櫛木理宇の同名小説を読んだときの感想はこちら
白石和彌監督による映画化ということで覚悟はしていましたが、覚悟が足りなかった(笑)。
グロいのなんのって。序盤から直視できないシーン多数。
 
上映前、後方座席にいた親子連れ(30代の娘と60代の母親と推定)のお母さんのほうが、
「これって洋画じゃなくて日本の映画なん?」と尋ねていました。
本編開始後、そのお母さんのほとんど叫びに近い声がごにょごにょ聞こえてきます。
はっきりとは聞き取れなかったけど、おそらく「こんなん観るの無理!」と推測。
お母さん、ご愁傷様です。(^^;
 
Fランクの大学に通う筧井雅也(岡田健史)は、奇妙な手紙を受け取る。
それは獄中からの手紙で、差出人は24人もの少年少女を殺害したとされる犯人・榛村大和(阿部サダヲ)。
雅也は中学生の頃に榛村が経営するパン屋にしょっちゅう通っていたのだ。
 
すでに一審で死刑判決を受けている榛村から面会に来てほしいと言われ、
雅也が拘置所を訪れたところ、榛村は立件済みの9件のうち8件は確かに自分が犯人だが、
残りの1件だけは身に覚えがないと出張。雅也に真相を調べてほしいと言う。
 
榛村を担当する弁護士・佐村(赤ペン瀧川)を訪ね、独自の調査を開始する雅也。
榛村の主張どおり、被害者は10代後半なのに、その1件だけ被害者は20歳を過ぎたOLで、
他の被害者とは殺し方も異なる。この件に関しては冤罪かもしれないと雅也は考えるが……。
 
まったく、なんと嫌な話なのか。
 
原作では榛村はイケメンなんですよねぇ。
阿部サダヲ、嫌いじゃないですよ。いい役者だということはわかっています。
でも、そんなにも好感度が高い人物の容貌だと言えるでしょうか。
この髪型でギョロリとした目、連続猟奇殺人犯とまでは誰も疑わないとしても、
大人も子どもも魅了される人物だとは私は思えません。
 
岡田健史の陰ある雰囲気はピッタリで○。
阿部サダヲ以上に不気味だったのは、雅也の父親役の鈴木卓爾でしょうかね。
「お母さん、決められない」という母親役の中山美穂も合っているっちゃ合っている。
だけどこんなミポリン、見たくはない(笑)。
謎の人物役の岩田剛典にはちょっと違和感を抱かざるを得ません。
 
個人的に嬉しかったのは音尾琢真の役どころ。
白石作品の常連と言えますが、ヤクザ映画ではわりと情けない役回りだったり、
こういう普通のオッサンで食い意地が張っていたりする彼の姿は楽しい。
 
親に虐待され、尊厳を傷つけられ、自己肯定感が著しく低く育つと、
誰かに認められることでこんなにも自信を持つ。
でも認める側の人間が歪んでいれば、それは洗脳以外の何物でもなくなってしまう。
 
最後もハッピーエンドとはほど遠く、心が折れそうな余韻を植え付けるものなので、
視覚的にも精神的にもこれに耐えられる人にのみ鑑賞をお勧めします。

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『アポロ10号 1/2:宇宙時代のアドベンチャー』

2022年05月12日 | 映画(あ行)
『アポロ10号1/2:宇宙時代のアドベンチャー』(原題:Apollo 10 1/2: A Space Age Childhood)
監督:リチャード・リンクレイター
声の出演: ジャック・ブラック,マイロ・コイ,リー・エディ,ビル・ワイズ,ナタリー・ラモアオー,
     ジョシュ・ウィギンズ,サム・チップマン,ジェシカ・ブリン・コーエン,
     ダニエル・ギルボット,ザカリー・リーヴァイ,グレン・パウエル他
 
2022年のアメリカ作品。Netflixにて4月1日より独占配信中。
 
とにかく『6才のボクが、大人になるまで』(2014)が大好きだったので、
彼の監督作と聞くと手を出さずにはいられません。
 
同監督の『ウェイキング・ライフ』(2001)は、実写映像にデジタルペインティングを施すという手法が用いられ、
アニメのようでアニメでない、いや、やっぱりアニメでしょという斬新な作品でした。
本作もそれを彷彿させるような映像で、モーションキャプチャーと見紛う。そうじゃないようですが。
 
1960年にアメリカ・テキサス州ヒューストンで生まれたリンクレイター監督。
当時のヒューストンの中心は何が何でもアポロ計画だったらしく、
同監督の少年時代を振り返るかのような内容のアニメーション作品です。
 
タイトルの“アポロ10号 1/2”が示すのは、1969年にアポロ11号月面着陸するちょっと前、
設計ミスによって小さくできあがってしまった宇宙船
おおっぴらにはできないことだから、NASAはこっそり小学校を視察して、
学業優秀で身体能力も高い子どもをこっそり訓練してこれに乗せようとします。
 
白羽の矢が立った子どもが主人公のスタンという設定で、事実かしらと錯覚を起こしてしまいそうですが、
んなわけわない。これは思いっきり妄想のパートですよね(笑)。
大人になったスタンの声を担当するのがジャック・ブラック
彼が当時の思い出を語る形で物語は進行します。
 
ジャック・ブラックの声が心地よいし、絵も好みだし、たいそう楽しい物語のはずが、
あまりに監督の思い出話に徹しすぎているせいで、いささか退屈。ソファで寝落ちしそうになりました。
 
ただ、それは私が1969年には幼すぎたせいもあるのかも。
せめて監督と同年代であったなら、きっと親も興奮してテレビを観ていたであろう月面着陸の瞬間、
この時代に流行っていたものなども想像してもっと楽しめたと思います。
ジャニス・ジョプリンやジョニー・キャッシュ、ジョニ・ミッチェルをよく聴いた人、
ヒッピーに憧れていた人なんかは郷愁に浸れるかもしれません。
 
NASAには黒人の職員がほとんどいなかったなんて話には『ドリーム』(2016)を思い出します。
アポロ11号が月面着陸に成功した後、宇宙船を飛ばす予算を差別撤廃に回すべきだったという話も出てきて、
あぁ、いい話だったねぇというだけでは終わらない。
 
いちばん心が躍ったのは、遊園地のシーンかなぁ。ここでもやはり中心はアポロ計画。
トロッコみたいな乗り物から外に出てきたときの空のまぶしいこと。
 
睡魔には襲われたけど、郷愁に浸るときってこんなもんなのかもしれません。

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