夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん』

2022年05月07日 | 映画(は行)
『ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん』
監督:信友直子
 
出かけるのが億劫になるGWの最中ですが、勇気を振り絞って梅田へ。
 
テアトル梅田へ車で向かうのは、たぶん1年ぶりだと思うのですよ。
だから、愛用の有人駐車場へ寄るのも1年ぶり。
名前を言ったことがあるわけじゃなし、顔も忘れられているだろうと思ったのに、
「あら、お久しぶりですね」とおじさんが言うてくれはるじゃないですか。
車番まで覚えてくださっていて大感激。
思わず『COME & GO カム・アンド・ゴー』(2020)を観た話をしたら、
「えっ、あんなマイナーな映画、観はったんですか。珍しい」と言われました(笑)。
 
信友直子監督が自身の老老介護の両親をカメラに収めたドキュメンタリーです。
 
1920(大正9)年生まれの父親が1929(昭和4)年生まれの母親の世話をする。
母親の認知症は進行し、父親の家事能力は日々進歩しています。
いくら元気だと言っても、父親の腰は曲がり、耳もずっと前から遠い。
だけど父親に悲観的な様子はまったくなく、洗濯する風呂場からは鼻歌が聞こえてきます。
 
自分がぼけているとは信じずに洗濯物を溜め込む母親。
洗濯機が満タンになっているのを見て、娘である信友監督が洗濯機しようとすると、
母親は阻止してやがて洗濯機から洗濯物を放り出し、その上で寝転びます。
そんな様子を見ても一向に動じない父親は、それを上手く避けてトイレに走る。
 
認知症の母親と耳の遠い父親の噛み合わない会話が可笑しくてついつい笑ってしまう。
劇場内に何度も笑い声がこぼれていました。
 
脳梗塞を起こした母親が入院してから、毎日1時間歩いて病院を訪れる父親。
時には雨の日に急いで歩いて自分が転び、流血の惨事になることも。
それでも笑顔の父親は、なるようにしかならんと思っているようでもあり、
なるようにできる限りのことをしようと心に決めているようでもあります。
 
療養型の施設に移る前、信友監督と父親がほんのわずかの時間だけ母親を家に連れ帰ったとき、
もう何もわからないはずの母親が玄関に入った瞬間、大泣きしたところはこちらも号泣。
闘病中の私の弟が、一旦退院した折に「やっぱり自分の部屋はええなぁ」と言うのとかぶります。
 
去年亡くなってしまったお母さん。だから、おかえり、お母さん。
百歳を過ぎたお父さんにはこれからも元気でいてほしい。
お母さんが帰ってくる日に備えて筋トレしていた姿に、ウチの父親もちっとは筋力つけてくれんかなぁと思いました。(^^;

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