夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『不都合な理想の夫婦』

2022年05月10日 | 映画(は行)
『不都合な理想の夫婦』(原題:The Nest)
監督:ショーン・ダーキン
出演:ジュード・ロウ,キャリー・クーン,チャーリー・ショットウェル,ウーナ・ローシュ,
   アディール・アクタル,アン・リード,マイケル・カルキン,ウェンディ・クルーソン他

シネ・リーブル梅田にて2本ハシゴの2本目。前述の『少林寺』の次に。
 
ダンブルドア先生のイメージがすっかり定着したジュード・ロウ
久しぶりに“ファンタビ”以前のちょっと黒い彼も観たいじゃないですか。
あまり暗い作品は観たくはないけれど、この程度ならいいかと思って。
 
1980年代。ニューヨークに暮らすオハラ一家は4人家族。
夫のローリーはイギリス人の商社マン。その妻アリソンはアメリカ人で、乗馬教室も開く馬の調教師。
長女サマンサは体操教室に通う思春期の娘。長男ベンはやんちゃ盛り。
 
穏やかで幸せな日々を過ごしていたある日、ローリーがロンドンへ移住しようと言う。
野心家の夫のことはわかっているつもりのアリソンは、経済的な不安を持つ。
しかしローリーは自分の手腕を見込まれての異動だと主張し、すでに家も買ったらしい。
 
ロンドンに着いてみれば、城とまでは行かずともあまりに大きな邸。
ローリーによってサマンサは公立学校へ、ベンは名門私立小学校に転入手続き済み。
とりあえず夫の言葉を信じ、大邸宅での新生活を楽しもうとするアリソンだったが……。
 
絵に描いたような幸せな一家だと思えるのは最初だけ。じわじわ怖い。
あのダンブルドア先生(笑)=ジュード・ロウが演じるローリーはとんでもない見栄っ張り。
なぜこんな大ボラばかり吹いている人がロンドンに呼ばれたか不明ですが、
最初だけは上手く行きそうな気配はある。
だけど、自分が儲けることしか考えていないローリーの浅はかさはすぐに露見して、
彼を呼んだロンドンの会社社長もローリーの話など聞かなくなってしまいます。
 
アリソンが事態の異常に気づくのは、厩舎の工事が進んでいないことに気づいたから。
なぜ誰も作業に来ないのかと相手に尋ねたら、「代金が未払いだから」と言われます。
大金を稼いでいると思っていた夫が、工事代を未払いどころか、口座に全然金がない。
財布の中にもわずかしかなくて、妻に金の無心すらする。唖然呆然です。
 
健全な女子だったはずのサマンサも大邸宅に住みはじめてから空虚な気分を味わっている。
タバコにもドラッグにも手を出して、でも家族からは何にも言われない。
いちばん異変を感じているのはまだ幼いベンで、学校に馴染めずいじめられているのに、
家族間に流れる不穏な空気を感じ取っているから、誰にも相談できません。
 
いったいローリーはどうなりたかったのか。
「幸福」になりたいのではなくて、「裕福」になりたかったのです。
見栄を張って自慢話をしたって人から疎まれるだけだと気づかない。
もっとも、そういう自慢話のおかげで集まる人もいるのでしょうけれど。
 
怖い作品ですが、ラストシーンには救われる。こんなふうに朝食を。
どうですか、魔法を使えないダンブルドア先生の姿は。

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