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『死刑にいたる病』

2022年05月13日 | 映画(さ行)
『死刑にいたる病』
監督:白石和彌
出演:阿部サダヲ,岡田健史,岩田剛典,宮崎優,鈴木卓爾,佐藤玲,赤ペン瀧川,
   大下ヒロト,吉澤健,音尾琢真,岩井志麻子,コージ・トクダ,中山美穂他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて1本だけ。
 
原作である櫛木理宇の同名小説を読んだときの感想はこちら
白石和彌監督による映画化ということで覚悟はしていましたが、覚悟が足りなかった(笑)。
グロいのなんのって。序盤から直視できないシーン多数。
 
上映前、後方座席にいた親子連れ(30代の娘と60代の母親と推定)のお母さんのほうが、
「これって洋画じゃなくて日本の映画なん?」と尋ねていました。
本編開始後、そのお母さんのほとんど叫びに近い声がごにょごにょ聞こえてきます。
はっきりとは聞き取れなかったけど、おそらく「こんなん観るの無理!」と推測。
お母さん、ご愁傷様です。(^^;
 
Fランクの大学に通う筧井雅也(岡田健史)は、奇妙な手紙を受け取る。
それは獄中からの手紙で、差出人は24人もの少年少女を殺害したとされる犯人・榛村大和(阿部サダヲ)。
雅也は中学生の頃に榛村が経営するパン屋にしょっちゅう通っていたのだ。
 
すでに一審で死刑判決を受けている榛村から面会に来てほしいと言われ、
雅也が拘置所を訪れたところ、榛村は立件済みの9件のうち8件は確かに自分が犯人だが、
残りの1件だけは身に覚えがないと出張。雅也に真相を調べてほしいと言う。
 
榛村を担当する弁護士・佐村(赤ペン瀧川)を訪ね、独自の調査を開始する雅也。
榛村の主張どおり、被害者は10代後半なのに、その1件だけ被害者は20歳を過ぎたOLで、
他の被害者とは殺し方も異なる。この件に関しては冤罪かもしれないと雅也は考えるが……。
 
まったく、なんと嫌な話なのか。
 
原作では榛村はイケメンなんですよねぇ。
阿部サダヲ、嫌いじゃないですよ。いい役者だということはわかっています。
でも、そんなにも好感度が高い人物の容貌だと言えるでしょうか。
この髪型でギョロリとした目、連続猟奇殺人犯とまでは誰も疑わないとしても、
大人も子どもも魅了される人物だとは私は思えません。
 
岡田健史の陰ある雰囲気はピッタリで○。
阿部サダヲ以上に不気味だったのは、雅也の父親役の鈴木卓爾でしょうかね。
「お母さん、決められない」という母親役の中山美穂も合っているっちゃ合っている。
だけどこんなミポリン、見たくはない(笑)。
謎の人物役の岩田剛典にはちょっと違和感を抱かざるを得ません。
 
個人的に嬉しかったのは音尾琢真の役どころ。
白石作品の常連と言えますが、ヤクザ映画ではわりと情けない役回りだったり、
こういう普通のオッサンで食い意地が張っていたりする彼の姿は楽しい。
 
親に虐待され、尊厳を傷つけられ、自己肯定感が著しく低く育つと、
誰かに認められることでこんなにも自信を持つ。
でも認める側の人間が歪んでいれば、それは洗脳以外の何物でもなくなってしまう。
 
最後もハッピーエンドとはほど遠く、心が折れそうな余韻を植え付けるものなので、
視覚的にも精神的にもこれに耐えられる人にのみ鑑賞をお勧めします。

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