2010年11月22日から25日までNHKのBSハイビジョンで放映された「華麗なるメトロポリタンオペラ(以下MET)」。これまで幾度となく見ていますが、たくさんのオペラを良質のハイビジョン画面で見ることが出来るのはうれしいことです。
今回は、初日は歌劇「トスカ」(プッチーニ作曲)、2日目歌劇「アイーダ」(ヴェルディ作曲)、3日目歌劇「トゥーランドット」(プッチーニ作曲)、4日目歌劇「ホフマン物語」(オッフェンバック)となっています。
今日は初日の歌劇「トスカ」について感想などを書いてみたいと思います。
あらすじ 舞台は1800年のローマ、王制による恐怖政治の行われていた時代。歌姫トスカは、画家のカラバドッシと愛し合っているが、トスカに横恋慕する警視総監スカルピアの策略により、政治犯をかくまった罪で捕らえられてしまう。恋人を助けようとするトスカは、カバラドッシの命と引き替えに体を求められる。トスカは、スカルビアを刺し殺す。しかし、カラバドッシも処刑されてしまい、トスカも絶望のあまり投身自殺をする。愛と欲望の渦巻く緊迫のドラマで、「妙なる調和」、「歌に生き、愛に生き」、「星は光ぬ」などプッチーニを代表する美しいアリアが散りばめられている。
第1幕 聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会 カヴァラドッシ(マルセロ・アルバレス)は、画筆をとりながら、トスカへの愛を込め、アリア「妙なる調和」を歌う。
マレンゴの戦いでナポレオン軍が勝利したしたとの知らせが入り、人々は神に感謝のテ・デウムを捧げる。スカルピアノがトスカへの欲望と執念を歌う「行け、トスカ」とが重なり、臨場感あふれる場面である。
第2幕 トスカ(カリタ・マッティラ)は有名なアリア「歌に生き、愛に生き」を歌う。「私は歌に生き、愛に生き、ひたすら世の人達のために尽くしてきたのに、そして、神を信じ、正しく生きてきたのに、どうして神様は、私に救いの手をさしのべてくれないのだろう」という歌詞は、このオペラの悲劇を象徴する感動的な歌である。
歌手はアンジェラ・ゲオルギューと異なりますが「歌に生き、愛に生き」をYuTubeから
第3幕 囚われの身のカヴァラドッシは獄中で、アリア「星は光ぬ」を生への執着を込めて歌う。
今回放映された歌劇「トスカ」は、25年ぶりの新演出、これまでのフランコ・ゼフィレッリに代わってリュック・ボンディの演出です。
私は以前のMETの「トスカ」のDVDを持っているので比べてみると、ゼフィレッリの演出は舞台装置などが、とても細やかでかつ重厚なつくり、第1幕の聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会内部やテ・デウムの場面、第2幕の聖アンジェロ城など雰囲気を良く出ていました。しかし、ボンディの演出では、あっさりしていて少々物足り無い感じです。ただ、人物の表現、とりわけスカルピアの悪役ぶりは見事で、見ている人の増悪をかき立てる演出をしており、とても興味深く見ることが出来ました。
一方、DVDで見るのとハイビジョンで見るのとでは、画面の鮮明度、音の迫力ともに違うので、今回の放映はとても楽しむことが出来ました。
歌手は、タイトルロールのカリタ・マッティラが豊かな表現力で演技をしていました。しかし、もう少し美貌が欲しいところ。カヴァラドッシ役のテノール、アルゼンチン出身のマルセロ・アルバレスは、魅力的で、役柄にぴったりでした。スカルピア役のジョージ・ギャグニッザは舞台の人物像とは打って変わって性格の良さそうな人、「バリトンは良い役が少なく、悪役が多い」と話をしたのが印象的でした。