めいすいの写真日記

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映画「ロミオとジュリエット」と1枚の絵

2014-12-19 | 映画

 今日の朝日新聞の夕刊映画「ロミオとジュリエット」の絵が大きく載っていました。
 監督・脚本フランコ・ゼフィレッリ、レナード・ホワイティング、オリビア・ハッセイ
の出演した映画を漫画家の室山まゆみさんが描いたものです。
 室山さんの描いた絵はとても良く描けていて「はっ」とさせられました。

 私も、この映画を見た時にオリビア・ハッセイの美しさとゼフィレッリの描く世界に
圧倒されたのを覚えています。すばらしい映画でした。
 その後、同世代の布施明とオリビア・ハッセイが結婚したのも衝撃的でした。
 布施明の「恋」、「霧の摩周湖」、「愛の園」、「シクラメンのかをり」など”愛の歌”を良く
口ずさんでいたからです。

 しかし、この記事に
「あの有名なバルコニーシーンで愛を交わすシーンは、肌もあらわな寝間着のジュリ
ェットが奔放に振る舞っていて、ずいぶん現代っ子になってしまったな、という印象です。」
とありますが、私はゼフィレッリがシェークスピア作品を忠実に演出したものと思っています。

NHKカルチャーラジオ「生誕450年シェイクスピアと名優たち」という講座で
前沢浩子先生が以下のようなことを書かれています。 

 聞かれていた独自
 この、恋愛作法がほころび、その古い型から抜け出した若い少女が、恋をする近代的
女性に一気に変貌するのが、有名なバルコニーの場面です。この夜の庭を見下ろす
バルコニーでジュリエットは独自を語ります。

  O Romeo,Romeo!-wherefore art thou Romeo?
 Deny thy father and refuse thy name.
 (訳)ロミオ、ロミオ、なぜあなたはロミオなの?
   お父さんを捨てて。名前を捨ててちょうだい。
             『ロミオとジュリエット』 (第2幕第2場 33-34行)
(中略)

 恋のイニシアティブは女が握る?
 自分の本当の思いがロミオに知られてしまったとわかったとき、ジュリエットは恥ずか
しさに頼を赤く染めてこう言います。

 Fain would I dwell on form 
  (訳)型を守っていたいわ。
                 『ロミオとジュリエット』(第2幕第2場 88行)
 本当はジュリエットも恋愛作法(form)を守っていたかったと言うのです。本当は
口にすべきではないことを言ってしまった、恋愛作法の型から自分ははみ出てし
まったとジュリエットはあわてています。しかしその次の瞬間、ジュリエットはこう
言い切ります。

 But farewell compliment!
 (訳)でも行儀作法なんて捨てるわ。
                 『ロミオとジュリエット』(第2幕第2場 89行)
 この complimentとは作法通りの習慣という意味です。そんな伝統的作法は
捨てるとジュリエットはきっばりと宣言するのです。そしていったん因習を断ち
切ったジュリエットは、もっとも直裁な問いをロミオに向かって投げかけます。

 Dost thou love me? I know love thou will say 'Ay'
 (訳)私のことを愛しているの? その答えはイエスだとわかっている。
                 『ロミオとジュリエット』(第2幕第2場 90行)
 Dost thouというのは少し古い形ですが、'Do you'というのと同じです。'Do you lome me'
と、きわめてストレートにジュリエットは問いかけるのです。'Ay'というのはyesの古い
形です。「あなたがyesと答えるのはわかっているわ」とジュリエットは言い切ります。
 このきっぱりとしたジュリエットの態度には、中世の石造りの城で守られてきた、愛と
名誉を重んじる騎士道的規範にのっとった伝統的恋愛作法はもうありません。自らの気持
ちを自らの意志で言葉にする近代的な女性像が文学の中に現れてきた瞬間です。
 ところがロミオの方は、古いロマンチックな型からなかなか抜け出せません。「あの
月にかけて……」「もしこの胸の想いが……」と、型通りの誓いの言葉を並べようとしま
す。しかしジュリエットにとってはそんな誓いの言葉など無用です。ジュリエットはロミ
オの古めかしい求愛の言葉をさえぎつて、豊かに湧き出てくる愛をすでにロミオに与えて
いるのだと宣言します。
 このバルコニーの場面は200行ほどの長さですが、いったん二人が対話を始めると、そ
のやり取りの中では圧倒的にジュリエットの語る台詞の分量の方が多いのです。秘密結婚
の約束をかわす段取りをするのもジュリエットです。明日の朝、使いを送るから式を執り
行う手はずを整えておくようにとロミオに頼むなど、テキパキとした実務的な面も見せま
す。ロミオが望外の喜びにうっとりと夢うつつの状態でいるのと対照的ですらあります。
 伝統的な恋愛作法の因習を打ち破り、親の支配や家の対立といったしがらみから逃げ出
し、新しい世界を切り開いて行く。そんな若い恋愛のイニシアティブを握っているのは、13
歳の少女ジュリエットの方なのです。
                                                                  (以上、引用文)
まさに、ここに、近代恋愛文学が誕生したのです。
「シェークスピアは我らの同時代人」(1968年 白水社)という本がありますが、
「ロミオとジュリエット」は今も新しい文学なのです。
  ロミオとジュリエットを題材にして有名なのは「ウェストサイドストーリー」など
数多くありますし、「言葉、言葉」のシェークスピアの作品なのにプロコフィエフは
 バレエ「ロミオトジュリェット」を作曲して名声を得ているのも不思議です。バレエに
は言葉がありませんから。
 400年以上も前の作品が今も人々の心をとらえて止まない、シェークスピア作品は今さら
ながら偉大だと思います。