マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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八田伊勢降神社御田植祭

2015年12月07日 07時30分09秒 | 田原本町へ
田原本町八田に鎮座する伊勢降神社。

道路に面した処に建つ常夜燈がある。

左側に燈明講中の刻印。

右は二月吉日だ。

台座には「世話人 當村 安井源兵衛 合場村 山中惣三郎」に名が刻まれている。

つい先日に話してくださったSさんによれば、「安井源兵衛」は、200年前、京都の巨椋池に15町の土地を買ったという八田一番の地主だった。

常夜燈左横に砂を盛った小山がある。

それをSさんは「源兵衛山」と呼んでいた。

これもまた寄進なのである。

本殿下にある古い灯籠にも刻印があった。

「寛永三年(1634) 奉寄進伊勢振社 御□□昌所 九月吉」とある。

おそらく神社年代記を示す一番古い灯籠であろう。

神社名は現在の伊勢降ではなく伊勢振社であった。

八田(はった)の御田植祭は2月の不定期日。

Sさんが云うには、だいたいが26日から28日の間。

私が知るここ数年の範囲内では28日が多いように思える。

伊勢降神社の祭祀を勤める3人の宮守のうち年長の人が村神主。

宮司を先頭に家からお渡りをしてきた。

烏帽子を被り白装束姿の人が年長の村神主だ。

その後ろにサカキを手にした老人会会長がつく。

後方でホッカイを担ぐのは垣内の廻り当番。

御供や松苗を収めている。

神社に到着した一行は本殿前に並んで祓えの儀。

それから拝殿に登って神事が行われる。

御供の献饌、祝詞奏上の次が御田植所作になる。

幣と注連縄を取り付けた長さ2mぐらいのカシの木を手にする宮司。

カシの木の先は二股になっている。

「牛」の角に見立てたカシの木である。

「牛」を手にして立ち上がる。



少し前に出して拝殿床にトンと打って一歩進む。

時計回り周回しながら作法を繰り返す。

拝殿を神田に見立てて田んぼを耕す「牛遣い」の所作は、徐々に中央へ寄っていくように見えた。



宮司、村人がいうには御田植の所作は昔から変わりないと云っていたが、それは江戸時代からそうであったのかどうか判らない。

所作の次の玉串奉奠、撤饌、閉扉、宮司一拝で終えた。

神事を終えたら奉った松苗を垣内の戸数分に分ける。



束にして垣内の代表者が持ち帰って各戸に配る。

このときにはモチ(一個)も配る。

いわゆるゴクモチである。

村で稲作をしている家ではGW連休明けにイロバナとともに水口に立てているという。

その場が集中しているのは神社の西側。

その時期ともなれば数戸が立てているという。

ちなみに農家でない家は神棚に松苗を奉るらしい。

(H27. 2.28 EOS40D撮影)