シカゴに来た記念にシカゴと関係のあるジャズ・アルバムを買って帰ろうと探したらこんなアルバムがありました。
タイトルが「Port Chicago」、1944年7月に起きた「ポートシカゴの惨事」のことを書いた本をベースに作られたアルバムです。
日本ではあまりなじみがないかもしれませんので、一寸お勉強してみました。
シカゴの海軍兵器庫で起きた爆発事故で320名の水兵と民間人がなくなりました。死傷者の大半は徴募されたアフリカ系アメリカ人で、その後何百人の水兵が弾薬の積み込みを拒否し、50人が反逆罪で有罪とされました。
その後、そのことが問題となり、軍における人種差別撤廃運動のけんきとなった事件だそうです。
ジャケになった写真もありました。
でこれを作曲したのはマーカス・シェルビー、日本ではトリオのアルバム「THE SOPHISTICATE」が評判のベーシストです。
このアルバムは2005年に自分のオケで録音したもの、1-8のACTⅠと9-14のACT2からなる組曲、私ビックバンドはほとんど聞きませんが、これがなかなか素晴らしい。
1曲目荘厳なペットのブラスから始まる“Introduction ”はカーラ・ブレーとG・バートンの「葬送」を思い浮かべました。
2曲目軽快な4ビートのピアノ・トリオからスインギーなテナー・ソロとても素直なアレンジで、バンド自体がとても上品に伝わってきます。
4曲目、Gabe Eatonのソロがいいし、ピアノのAdamShulmanのソロもいい。
すべてのミュージシャンをしらないのにこうやって書けるのもノートにソリストの名が丁寧に書いてあるからです。
6曲目バンマスのシェルビーのベース・ソロ、太い音の循環ラインがかっこいい。
7曲目の曲調は厳しい現実を描いたような、題名が“Barracks Life”。
8曲目アルトGabe Eatonのソロもよい、ノートをみると順番にメンバーがソロをとるような8曲目まで同じ人がいない、とても均整のてれた、高いレベルのバンドです。
9曲目はもうすこし問題性が上がったような、題名が“Black In Blue”。
10曲目はそんな中での心の安らぎ、とローンボーン2度目のDanny Grewenのソロは4ビートのベースをバックにまさに“Big Liberty Blues”この曲でアルトもピアノもペットも2度目のソロ、やはりブルース一番歌う人たちが吹いているのでしょうね。
もとになった本の構成はわかりませんが、そこにいたアフリカ系アメリカ人に焦点を当た本だったのだろうと想像がつきます。
この組曲爆発事件を扱っていますが爆発は14曲の中の12曲目ドラムスのソロで始まる短い悲劇で13曲目がこれも短い「その後」、事故現場ではなくて日常が戻った時のようです。
そして最後の曲が“免罪”50名の反逆罪にとわれた人々は時間の差こそあれ釈放されたのでした。
社会的な出来事を素材にするジャズ、もしくは主張を織り込んだジャズがありますが、本作品もその枠に入ることは間違いありませんが、その主張性よりもアフリカ系アメリカ人の軍で生きざまがJAZZ音楽によってそのまま伝わってくる、芸術的にも素晴らしいアルバムです。
CDが入るところのこんな写真が象徴かもしれません。
ただ一つ私としては残念なのところを見つけてしまいました。それは録音された場所がシカゴでなくて、サンフランシスコだったことです。でもこのアルバムシカゴで出会ったし、シカゴでよく売れただろうと想像つきます。とても良い思い出作品になりました。
Port Chicago / MARCUS SHELBY JAZZ ORCHESTRA
Bass/Conductor: Marcus Shelby
Trumpets: Dave Scott, Mike Olmos, Joel Ryan, Darren Johnston
Trombones: Danny Grewen, Scott Larson, Marc Bolin
Alto: Gabe Eaton
Alto/Clarinet: Marcus Stephens
Tenor/Clarinet: Rob Barics
Tenor/Flute: Evan Francis
Baritone/Clarinet: Tom Griesser
Piano: Adam Shulman
Drums: Jeff Marrs
Eric Moffat: Sound Engineer
1. Introduction
2. Opening Dance
3. Call To War
4. Training Day
5. Mechanized Women
6. Work Routine 1
7. Barracks Life
8. Black In Blue
9. Work Routine 2
10. Big Liberty Blues
11. Sweet Brownness
12. Explosion
13. After
14. Exhoneration