巧妙に仕組まれた復讐の犯人探し。出版社のオーナー、エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)は、ミステリー小説オスカル・ブラック著「デダリュス」完結編を全世界同時発売に向け、フランス郊外の屋敷に9人の翻訳家を集めた。
この作品は、登場人物が心の中で思ったことを、順序づけたり整理したりせず、そのままの形で提示する 「意識の流れ」という叙述技法で書かれている。
句読点のない読みづらい文章の連続は翻訳も一苦労。そういう特異なことから、極端に事前漏洩を恐れたため、全員地下室での生活となった。外出はおろかスマホも取り上げられた。
しかし、地下室での生活は快適だった。広いプールや贅沢な食事、広いベッドルームといった具合。ここで毎日20ページの原稿を翻訳していくことになる。2ヶ月で完成を予定していた。
その9人は、●ロシア語に翻訳するのがカテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
●英語にはアレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
●スペイン語にはハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
●デンマーク語にはエレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
●イタリア語にはダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
●ドイツ語にはイングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
●中国語にはチェン・ヤオ(フレデリック・チョー)
●ポルトガル語にはテルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)
●ギリシャ語にはコンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マブロマタキス)。
ところが「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。密室の犯罪、そう、この屋敷の中に犯人がいる。それだけは間違いない。ではどうやって? そこが問題だ。これ以上書くとネタバレになるので、匂わせる程度に。
英語翻訳のアレックスは、アングストロームにしきりに著者に会わせろという。アングストロームは、当然拒否を続ける。会わせたくても会わせられない事情があっる。それはアングストロームが著者と思う人物を殺しているからだ。
では、なぜアレックスは著者に会いたがるのだろう。カギはこのアレックスにある。それは映画を観てのお楽しみに。
ちなみに「意識の流れ」という叙述技法の例として挙げられるのは、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」が有名。ブルームの妻モリーの心のうちは、浮気をしていても本心では夫を愛していることが語られる。「それで彼あたしにいいのかって聞いたのyes山に咲くぼくの花よyesと言っておくれって言うからあたしまず彼の背中に両腕を回してyes彼を抱き寄せてあたしの胸を押しつけたらいい匂いがしてyes彼の心臓ものすごくドキドキしててyesあたしは言ったのyesいいわよってyes」やっぱり句読点がないと読みづらい。
監督
レジス・ロワンサル1972年フランス生まれ。
キャスト
ランベール・ウィルソン1958年フランス生まれ。
オルガ・キュリレンコ1979年ウクライナ生まれ。
アレックス・ロウザー1995年イギリス生まれ。
エドゥアルド・ノリエガ1973年スペイン生まれ。
シセ・バベット・クヌッセン1968年デンマーク生まれ。2015年「アムール、愛の法廷」でセザール賞助演女優賞受賞。
リッカルド・スカマルチョ1979年イタリア生まれ。
アンナ・マリア・シュトルム1982年ドイツ生まれ。
フレデリック・チョー1977年ベトナム生まれ。
マリア・レイテ出自未詳。
マノリス・マブロマタキス1962年アテネ生まれ。