今や一人でも観客を呼べるのではないかと思われる女優、レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムス共演による同性愛映画。
ニューヨークで写真家として成功したロニート(レイチェル・ワイズ)は、ユダヤ教のラビを務める父の死去で、イギリスの生まれ故郷に帰ってくる。
ホテルにチェックインする前に父の後を継ぐドヴィッド(アレッサンドロ・ニヴォラ)の家を訪ねる。そこには多くの人々が集まっていたが、故郷を突然去ったロニートに周囲の視線は冷たい。さらに分かったのは、ドヴィッドの妻がエスティ(レイチェル・マクアダムス)だったことだ。驚くと同時に愛し合った過去の感情が蘇ってくる。
「神は3種の生き物を創られた。天使と獣だ。そして人間です。天使は清らかな言葉から生まれ、悪を行う意思は持たない。御心に背くことは一瞬たりともできません。獣は本能のみに従います、造物主が創った通りに動くんです。モーセ五書には、天使や獣などの創造にほぼ6日かけたと書かれている。そして日が暮れる直前、少量の土を取り、お創りになったのが男と女です。最後の付け足しか、神の最高の功績か。人間とは何でしょう? 男と女とは?
人間には反抗する力があります。生き物の中で唯一自由意志を持つのです。我々は天使の純粋さと獣の欲望の狭間にある”選択”は特権であり重荷です。選ぶしかないのです。この複雑に絡み合う人生を……」と死の直前、父が聖職者の前で残した言葉である。
”選択”を認めている教義でありながら、ロニートは同性愛者故に故郷を去ったのだろう。ユダヤ教では、性衝動や性行為は自然なもので、ではあっても快楽を伴わない性行為は罪とされる。だだし、妊娠・出産を重視する。それゆえに同性愛は、妊娠・出産とは相いれないものと言える。
快楽を伴わない性行為ってどんなのがある? 夫婦であっても義務的で不本意なものや強要する行為が思い浮かぶ。たしかに、エスティとドヴィッドとの行為には情熱が感じられないが、ロニートとエスティの行為には、目を見張るほど執拗で思いやりを感じたものだ。
とは言っても、私にはなかなか理解できないのが同性愛なのだ。神に聞きたいのは、男と女を創造したのに、どうして同性愛者まで創ったのですか? 生産性がなく快楽だけですねと。
この映画、批評家の評判がいいそうだ。出演俳優の演技に負うところが多いという。一味違う同性愛映画と言える。
原題は、Disobedience不服従。
監督
セバスチャン・レリオ1974年チリ、サンチャゴ生まれ。2017年「ナチュラル・ウーマン」でアカデミー賞外国語映画賞受賞。
キャスト
レイチェル・ワイズ1971年イギリス、ロンドン生まれ。2005年「ナイロビの蜂」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
レイチェル・マクアダムス1978年カナダ、オンタリオ州生まれ。2015年「スポットライト世紀のスクープ」でアカデミー賞女優賞受賞にノミネート。
アレッサンドロ・ニヴォラ1972年マサチューセッツ州ボストン生まれ。