先日の読売新聞夕刊に作家の藤原智美さんのコラムが載った。冒頭を引用すると「バブル期、ホテルのバーである女性とデートした。私は初めてマティーニを注文。アルコールの強さに舌がしびれたが何とか飲み干し、グラスに残るオリーブを口にした。小さな種を口からグラスにもどしたとき、彼女はあきらかに不快な表情をした。
そして唐突に上司の話をし始めた。その男はおしゃれで酒も強い。マティーニが出てくると、スティックに刺さったオリーブをグラスから取り出し、カウンターの上に置く。それから初めて口をつける。同じように3杯、4杯と飲み干すと、手元にオリーブのスティックが扇状に並ぶ。男はそれを残したまま席を立つ。「それがかっこいいのよ」と彼女。私はキザで下品な男に思え、彼のことをうっとりと語る彼女が、たちまち嫌いになった」
彼女の言葉は、藤原さんの行為をやんわりと批判しているようで嫌いになった気持ちもわかるし、その男に嫉妬しているようでもある。
まあ、ちょっと洒落心のある男なら、女性を口説く場所は心得ているだろう。ホテルのバーなんかは、最高にいい場所に思える。そこでビールを注文して無粋にならないような配慮も必要。ミステリ好きな彼女ならギムレットもいいかも。
さて、私はそのマティーニをバーやホテルで飲んだことがない。自宅で作って飲んだだけ。なんとも無粋でお話にならない。マティーニの作り方は、サントリーのホームページがいいかも。その口上に「マティーニほど数々の逸話に彩られたカクテルはほかにない。カクテル中のカクテルとして「カクテルの帝王」といわれる。映画「7年目の浮気」ではマリリン・モンローが、007ではジェームス・ボンドが好んだ」とあり、最近ではフランス映画「間奏曲はパリで」のレストラン・シーンでもマティーニが登場した。年齢的には中年の男女というのが定番のようだ。
ビーフィーター・ジン48ml、チンザノエクストラ・ドライ12mlを混ぜてカクテル・グラスに注ぎ、デコレーションのオリーブをグラスのふちに刺すか、カクテルピンにオリーブを刺してグラスにさし渡して完成。これでアルコール度25度以上になる。
カクテルピンのオリーブは、食べるか食べないかはお好みでと言いたいが、あれの食べ方を考えると躊躇する。藤原さんの文でも、口から直接グラスに戻したのを見た彼女が皮肉を言ったのだろう。確かに後始末を考えないと汚さが残る気がする。デコレーションということなら、食べないほうが無難かも。
ちなみにギムレットは、レイモンド・チャンドラーの小説「長いお別れ」で「ギムレットには早すぎる」という名セリフで一躍有名になったという逸話がある。マティーニは辛口であるが、ビーフィーター・ジンとライムのギムレットは、中甘辛口ということで飲みすぎには注意が必要。泥酔して彼女と文字通り長いお別れなんて洒落にもならない。
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