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読書 T・ジェファソン・パーカー「カリフォルニアガール」

2006-08-18 13:39:02 | 読書
 ベッカー家の次男ニックと四男アンディは、<フィッシャーマンズ・レストラン>のテーブルについていた。腕を伸ばしてメニューを持たないと読めない66歳と62歳の老人になっていた。
「何だ、話ってのは?」
「聞いてくれ、ニック。ジャニル・ヴォンに関するおれたちの考えは、すべてまちがっていた」
                
 ジャニル・ヴォンはヴォン家の次女で、1968年10月カリフォルニア州南西部タスティンのオレンジ出荷工場跡で首を切り落とされた惨殺死体で見つかった。まだ、二十歳そこそこで、ミス・タスティンにも選ばれたほどの美少女だった。
 同じ日、男性のカップルがよく利用する海浜のモーテル<ブームブーム・バンガロー>で、若い男性の刺殺事件も発生していた。と言えば、警察小説になりそうだが、事件を通して家族や兄弟といった肉親の愛とともに取り返しのつかない失敗も描いている。

 その中でも最も心悩ませるのは、ベッカー家の長男デイヴィッドの秘密だった。デイヴィッドの友人ハワード・ラングトンが、ホモの溜まり場といわれるブームブーム・バンガロー事件の容疑者になり、事情聴取を受けた直後、大木に車を激突させて自殺する。
 ハワードの無実を証明するには、自らのホモであるという秘密も明らかにしなくてはならない。これまで築いてきたすべてが水疱に帰すことになる。それでもデイヴィッドは告白した。家族からは、理解の暖かい言葉がかけられた。
 そして、ニックはジャニル・ヴォン殺しの犯人でない男を長期間刑務所にぶち込んだ。人生はなんと予測不可能で一筋縄ではいかないのだろう。
 それでも、ニックは夜の海に浮かび、星がきらきらと輝くのを眺めながら、残る人生を精一杯生きようと思う。
 本作品は、2005年度アメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀長編賞を受賞している。


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