猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

よしなが ふみ 「あのひととここだけのおしゃべり」

2012年10月24日 20時10分47秒 | 本の感想


テレビドラマも始まった 「大奥」 の原作者 よしなが ふみさん の初対談・鼎談集。
お相手は料理研究家の 福田 里香氏 と作家の 三浦 しをん氏 以外は漫画家さんばかり。
もちろん、福田氏も三浦氏もマンガ大好き人間で、全ての対談内容はマンガトークのみ。

2007年に発行されてすぐに最後の 萩尾 望都様 の対談のところだけ立ち読みして満足してしまい、後は読んでいませんでした。
今回全て読んで、

ああっ深く後悔。。。

何でもっと早く読まなかったものか。
素晴らしい方々との、素晴らしいお話の数々。

少女マンガの歴史から、BL談義、「グレンスミスの呪い」(わからない人ごめん)、マンガのアニメ化・ドラマ化の話から、フェミニズムの話。
み~んな内容が良かったんだけど、特に 三浦さん と 羽海野チカさん いや、こだか和麻さん も良かったな~。
もちろん 萩尾 望都様も…やっぱり全部良いや。
なんかもうね、資料としても再読したい場所ばかりなのよ。

あの方、よしながさんとこんな話してたよね。。。

なんて。
もう一回、もう一回、とパラパラ読み直しています。




       マンガ読まないでも至福の時は有るんだな、と感じたトミー。




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高橋 克彦 「北の燿星アテルイ 火怨 かえん」

2011年08月20日 20時14分29秒 | 本の感想

       ↑ 講談社文庫 上下巻共 2002年10月15日 第一刷発行


5月に入院していたとき、友人が持ってきてくれた本。
退院が思いの他早く出来たので読み損なっていたが、7月に1週間くらいで一気に読めた。
分厚い文庫2冊だが、それだけ面白かったということ。
作者の名前は私、初めて聞いたのだが、この作品で吉川英治文学賞を受賞し、「写楽殺人事件」で江戸川乱歩賞を受賞するなどしている人気作家さんである。
特に男性に人気がある方とお見受けした。
血沸き、肉踊るんである。

アテルイ(この本中では阿弖流爲という字を当てている 諸説ある)という主人公の名前を見たときは、蝦夷地のアイヌの大酋長の名前だったかいな、なんて思った。どこかで聞いた気がしたのだ。
実際はもっと前、陸奥(みちのく)と呼ばれていた東北にまだ蝦夷たちが住んでいた頃、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)に抵抗した蝦夷の若きリーダーの名前だった。
アテルイは作者の創作ではなく、日本の歴史史料で2回現れる実在の人物である。
巣伏の戦いについての紀古佐美の詳細な報告が『続日本紀』にある。もう1つはアテルイの降伏に関する記述で、『日本紀略』にある。
  ↑「ウィキペディア」による

平安時代の天平21年に陸奥で金が産出されるのを知った朝廷は、折から東大寺の大仏建立中だったことも有り、これこそ仏の加護であると狂喜乱舞したのである。
蝦夷たちにとってみればいい迷惑以外何者でもない。
だが、それでも両者の境界線の向こうで蝦夷には不必要な黄金を簒奪しているだけなら、蝦夷たちはじっと我慢していたかも知れない。
蝦夷の力を侮った朝廷が蝦夷をもって蝦夷を制する、という屈辱的な政策に転じなければ蝦夷達の激しい抵抗はなかったかも知れない。

これを始まりとして、20年以上に渡る朝廷と蝦夷たちとの抗争が勃発するのである。
先に 坂上田村麻呂 の相手と言ったが、田村麻呂の登場は下巻までない。
下巻の途中までは、次々と朝廷から送られてくる蝦夷を獣としか見ていない、位ばかり高い 征東将軍たち の間抜けな戦いぶりが展開される。

話はアテルイの側から語られる。
決して蝦夷の方が断然有利というのではない。
どころかもともと広大な陸奥の地にせいぜい千人単位の人数の集落が散らばってのんびり日を過ごしていた蝦夷達には、専属の兵隊や武器さえもないも同然だったのである。
それらをまとめて兵として訓練し、武器を作らせ、リーダーとして立ったのは、若干18歳の一集落の長の息子、アテルイだった。

若いアテルイとて、いきなりそうなれたのではない。
アテルイの前には長年の苦節を耐え、自分の事より蝦夷達のことを考えて決起のきっかけを作ってくれた他部族の長がいた。
協力を申し出てくれた 物部(もののべ) の民が居る。
終生の仲間となった参謀役の友人も出来た。
手足となって働いてくれる年上の部下や、自分を仰ぎ見て結束を誓う兵隊達も居る。
何事も一人では出来ないのである。
が、集団にはカリスマ性を持ったリーダーが絶対必要な時もある。

勇壮な戦の部分や、ときどきわけがわからなくなるような策略の部分を読むのも楽しいが、アテルイの成長物語としても楽しめる。

我々は、その後何十年、何百年もかけて蝦夷たちが北海道へ追いやられ、ついに少数民族として日本に組み込まれる歴史を知っている。
神の目を持っている我々がこの物語を読むとき、時に息苦しくなることもある。
しかし、この躍動感あふれる物語を読むとき、当時の蝦夷の人々の思いが少しばかりわかるような気がするのだ。



      ウィキペディア -アテルイ- → アテルイ 



        最後のシーンは夢に見そうで怖かったトミー。



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梅原 猛 「隠された十字架」 - 法隆寺論 -

2011年06月06日 20時58分15秒 | 本の感想

     ↑ 新潮文庫 昭和56年4月25発行 これは平成16年6月15日 45刷 


この著作があらわされたのは1972年である。すでに40年前に近い。
従ってここに書かれている 梅原氏 の説に対して新理論、新事実は山ほど出ているかも知れない。
巻末の解説を書いている 秦 恒平氏 も

…… 版を重ね続けてきた。その間には坂本太郎氏の「法隆寺怨霊寺説について」(日本歴史第300号)などを皮切りに厳しい批判や反論もあらわれた。

 ↑ 解説より引用

と書かれている。
私は不勉強でそれらのすべてを知らないが、それでもまだこの 梅原論 は十分説得力、魅力のある論文だと思う。(小説ではない)


雑誌「クレア」1992年の9月号は夢の永久保存版「THE少女マンガ!!」の特集であった。
インタビュー記事中で、 山岸 凉子氏 がもともと聖徳太子って変 !と思っていたところ、友人から 梅原氏の「隠された十字架」に今あなたが言ったことが書いてあるわよ、と。
それで早速読んでみたら、もうゾクゾクゾクーッときて、
名作「日出処の天子」をあらわしちゃったと。
これを知ったとき、読まずになんとしょう、と思っていたが、本当に読んだのは7年くらい前か。

そのときは気がはやっていたせいか、梅原氏の資料を駆使したしっかり、ねっとり、検証だらけの文章に始めはちょっとイラついた。
だから結論はなんなのさ。
今思えば私も多少若かったのかも知れない。
今回再読してみるとこのじっくりさが、病気入院中だった自分にちょうど良かった。

提示された古典や先人の書の年譜等もじっくり読む。
やはり本と言うものは2度3度読み込まないとその全貌は身に入らない。
良い本、良いマンガほど、読み返す都度新しい発見があるのは皆様ご存知のとおり。

梅原氏は第一部として、昔から言われている「法隆寺の7不思議」の伝説にかけて、「梅原氏の考える七つの謎」を提起し、第二部でそれらを解く解決への手かがりを探し、最後の第三部で真実の開示を行っている。
中でなんと言っても読みでがあって楽しく面白いのは第二部の「解決への手掛り」である。
小説家らしく「情熱的な女帝の恋」やら「無残な蘇我入鹿の死」「野心家中大兄皇子の母に対する複雑な思い」「藤原鎌足の長男の不幸な一生」などを生き生きと活写していく。
一編づつ小説としてもっと読みたいくらいだ。

法隆寺の建造に関して 正史 である「日本書紀」に一言も書かれていないそうである。
他にも官寺、大寺で有りながら建造年が書かれず、
「火事になった」
と言う記事でいきなり出てくる寺も多いそうだ。
「記紀 古事記・日本書紀のこと」の記事は不親切だと梅原氏はぼやく。

氏が言うように「記紀」が 藤原不比等 が作らせた「勝者の歴史書」ならばまったくのウソは書かないまでも、自分たちに都合の悪いことはあえて書かないだろう。
我々だって仕事のリポートではそんな潤色はしょっちゅうである。(笑)
しかし、氏は言う。
いかに取り繕って歴史を隠してもそのしっぽはどこかに出てくるものだと。
それらをひとつひとつ拾い上げ検証しながら、また地元の伝承を紹介しながら氏の解説は続く。
この地元の言い伝えと言うのがさりげなく真実を伝えているようで面白い。
いつの世も大衆は侮れないものだ。

法隆寺は
誰が - 聖徳太子ゆかりの一族か・藤原氏か -
何のために - 太子の徳を称え後世に残すためか・梅原論のように太子の霊を封じ込めるためか -
作ったにせよ、祭られているのは太子(及びその悲劇的な最後をたどった太子の子供、孫一族)が祭られているのは間違いない。
私はだからこの本を読めば太子本人についていくらかの人物像らしきものが解るかと思っていた。
が、そちらに関してはあまり期待しないほうが良い。そういう本ではない。

一般に思われている徳の高い高僧のようなイメージとは違う「戦う聖徳太子」のイメージが増えた程度かな~。


分厚い本だし内容少しばらしてしまったけれど、古代ロマンの謎を解き明かしたい方は、じっくり読んで見てください。


      飽きるので入院中毎日少しづつ読んでいたトミー。


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