ファインダーの向こうでかすかに傾いた地平線が
乱れ雲とそのあいだから射し込む鮮やかな夕焼けをささえている。
それはほんのいっときのこと。
だけどぼくはその光景に心をかき乱される。
なんてことだろう?
ほんとうは水平線が見たいと思いながら
海までの距離を計算する。
ついさっき「二人目の孫が生まれたんだってね
おめでとう! どっちだい男・・・女?」
そんな電話を旧友と交わしたばかり。
夕焼けはこれまで数えきれないほど見てきたけれど
まったく同じ夕焼けってなかったな。
当然といえば 当然だね。
たばこを携帯灰皿でもみ消して。
ア行の鳥やカ行の鳥が河川敷を渡っていくのが眼にとまる。
ああ もう渡り鳥のシーズンなんだね。
もうこれ以上はうらぶれて うらぶれきれないところまできて
利根川の岸をぼんやり歩いて
カメラを手にしているけれど
いったいなにが撮りたいのだろう?
自問するとなにもかもが不安になる。
見慣れたはずの風景が広闊な原野へと変化する。
本をすててここまでやってきたら
まだ生き残っているツナグロヒョウモンのオスが
眼の前を横切っていった。
もう十一月というべきなのか まだ十一月というべきなのか
ぼくは知らない。
一年に何回世代交代するのかも 知らない。
思い出の中には酸っぱさと渋みがうまい具合にコンデンスされていて
足許をひたす水のように寄せたり返したりしている。
夕焼けがもう終わっていく。
あれは・・・今日の夕焼けはどこのどいつの死に際なんだろう。
なかなか見事で 形容を絶する美しさだったが。
平凡なひとの平凡な死が空を茜にそめる。
・・・ってなことがあるのかどうかぼくは知らない。
なんだか少し感傷的になってるぜ。
まあいいさ。
まあ いい。
なにやら大きなものが崩壊したあとのような空虚の風に吹かれて
心のカケラを野に放つ。
眼には見えない紙ヒコーキのように。
乱れ雲とそのあいだから射し込む鮮やかな夕焼けをささえている。
それはほんのいっときのこと。
だけどぼくはその光景に心をかき乱される。
なんてことだろう?
ほんとうは水平線が見たいと思いながら
海までの距離を計算する。
ついさっき「二人目の孫が生まれたんだってね
おめでとう! どっちだい男・・・女?」
そんな電話を旧友と交わしたばかり。
夕焼けはこれまで数えきれないほど見てきたけれど
まったく同じ夕焼けってなかったな。
当然といえば 当然だね。
たばこを携帯灰皿でもみ消して。
ア行の鳥やカ行の鳥が河川敷を渡っていくのが眼にとまる。
ああ もう渡り鳥のシーズンなんだね。
もうこれ以上はうらぶれて うらぶれきれないところまできて
利根川の岸をぼんやり歩いて
カメラを手にしているけれど
いったいなにが撮りたいのだろう?
自問するとなにもかもが不安になる。
見慣れたはずの風景が広闊な原野へと変化する。
本をすててここまでやってきたら
まだ生き残っているツナグロヒョウモンのオスが
眼の前を横切っていった。
もう十一月というべきなのか まだ十一月というべきなのか
ぼくは知らない。
一年に何回世代交代するのかも 知らない。
思い出の中には酸っぱさと渋みがうまい具合にコンデンスされていて
足許をひたす水のように寄せたり返したりしている。
夕焼けがもう終わっていく。
あれは・・・今日の夕焼けはどこのどいつの死に際なんだろう。
なかなか見事で 形容を絶する美しさだったが。
平凡なひとの平凡な死が空を茜にそめる。
・・・ってなことがあるのかどうかぼくは知らない。
なんだか少し感傷的になってるぜ。
まあいいさ。
まあ いい。
なにやら大きなものが崩壊したあとのような空虚の風に吹かれて
心のカケラを野に放つ。
眼には見えない紙ヒコーキのように。