変な人がやってくる。
この星の住人にとてもよく似ているけれど
少し どこかが違う。
もしかしたら うんと違うのかもしれないな。
それがぼくにはよくわからない。
新しい人たちがやってくる。
ぞくぞくとやってきて 歩いていったり
座りこんだり 歌ったり 議論したり。
年をとった者たちは立ち去ってゆく。
干からびた乳房の薄暗い峡谷を通って。
新しい人はやってくる。
鍋は火と出会い
やさしさは破壊と出会い
ぐらぐらと街路で煮られる。
見ろ 見ろ!
あんなにも大勢の人びとが
眼に見えない街路で押し合いへし合いしている。
敗軍の将は兵を語らず
碑銘だけを残して消えてゆく。
さよなら さよなら。
神が滅んだ国で いくさはまだつづいているよ。
変な人がやってくる。
日本人同士なのに日本語はめったに通じない 変な人が。
亡霊のようにいつまでもそこに立ちつくしている人よ。
きみの時代はもうおわってしまった。
日暮れて道遠し。
なーんて嘆いているヒマがあったら
自分の過去に決着をつけろ!
・・・と ぼくは独り言をいいながら
今夜もあびるようにウィスキーを飲んで
行く手に立ちふさがる霧の濃い闇を見つめる。
狐火のようにゆらめいているもの
あれはなんだろう?
あれはなんだろう?
さよなら 同志たちよ
もしそんなものがいたとしたら。
ぼくは疲れて 思い出すのがつらい。
他人たちがひしめく闇の向こうで
狐火のようなものがゆれる。
※写真とこの詩のあいだには、直接の関係はありません。