二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ジョン・レノンのTシャツを着た人(ポエムNO.2-40)

2014年07月20日 | 俳句・短歌・詩集
ジョン・レノンのTシャツを着た人が
ぼくの横をすり抜けて レトロな街角を曲がっていく。
それだけのシーンをいやに鮮明に覚えている。
夕べみた夢の中の出来事。
その夢は傷みがひどく よれよれのおじいさんの帽子みたいな姿をしていたな。
変なたとえだけれど。

複雑なことを単純なことばで語るのはむずかしいが
不可能ではない。
ぼくはそのために詩を書いているんだ きっと。
そのことに 夢からさめて思いあたった コツンと。
やあ こんにちは さよなら。
またおとといお遇いしましょう それまで生きていられたら。

昨年とても親しかった友人が死んで
ぼくの身辺はまた少し 淋しくなった。
ジョン・レノンのTシャツを着ていたのは
まだ三十代の若さだったその友人でね。
ぼくは何十年かぶりでそのことを思い出した。
「お先に失礼」なんていいたかったのだろうか?

記憶の中の世界はいつも約半分が暗く欠けていてね
ぼくははるか 半月を眺めやるように
その記憶を見あげるんだ。
のぼっては沈んでいく 音もなく。
日常はそんな記憶のくり返しでできているってのに
だれもほとんど気にかけはしない。

ジョン・レノンのTシャツを着た人とぼくが
古くなった木のベンチに腰をおろし
焼き立ての五平餅をふうふういながら食べたとしよう。
へたな鼻歌で「イマジン」を歌ったとしよう。
川の水はなぜ逆流しないか議論したとしよう。
人類の平和と繁栄について語ったとしよう。

ぼくにはジーンズは似合わらないが
ジョン・レノンが嫌いなわけじゃない。
そういうものかな そういうものさぼくだけじゃなく
人はだれだって どこかしら辻褄が合わないまま生きている。
シジュウカラがけたたましく鳴いて 白昼夢から我に返る。
もう一度だけ書いてもいいかな?

「またおとといお遇いしましょう それまで生きていられたら」と。

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