二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

夜のフロスト   R・D・ウィングフィールド

2010年01月07日 | 小説(海外)
読みはじめてから、10日間ほどかかって、本書を読みおえた。これほど時間がかかったのは、並行してほかの本をあれこれ拾い読みしていたからである。
おもしろいのだけれど、とにかく長い。文庫本で754ページ。500ページを過ぎたあたりで息切れしてしまった。

主人公の警部フロストのキャラは、相変わらず。とにかく八方破れで、下品で、事務処理能力はゼロ、ヘビースモーカー・・・そして、仕事中毒の中年おやじ。日本では団塊世代にこういうキャラは存在しただろう、と思わせる強烈な存在感がある。

どちらかといえば、だめ男・アンチヒーローの系譜に属する。一口にいえば、モジュラー型警察小説の典型となる。これは第1作「クリスマスのフロスト」から一貫している。いくつもの事件がほぼ同時並行的につぎつぎと発生し、イギリスの架空の町デントン市警部、フロストが、部下たちとその捜査に邁進し、試行錯誤をくり返しながら真相を解明して、犯人逮捕にこぎつける。

一見錯綜しているようにみえるが、犯罪も犯罪者も、いたって平凡。平凡じゃないのは、フロストのキャラクターである。上司である署長マレットとのからみは、かけあい漫才の域に達している。今回は新任部長刑事ギルモアが、このフロストとコンビを組んで、いい味を出している。

しかし、とにかく長い。したがって、くり返しが多く、ストーリー展開がくどいとの印象が強かった。わたしの独断と偏見によれば、600ページ以内で収めてほしかった。

これは、舞台劇そのものだろう。むろん、ドタバタ喜劇。名優や、美男・美女は必要ない。
登場人物は男性キャラは型にはまっているし、女性はもっと型にはまっている。ウィングフィールドは女を描くのが苦手なのだろう。「クリスマス・・・」と「フロスト日和」は5点満点を進呈した記憶があるが、これは4点ということにしよう。厳密にいえば、3.5くらいかな? 

これが高得点をたたき出すようなら、つづけて「フロスト気質」も読もうと考えていたが・・・、どうもすぐにまた手にとって、ぜひとも読んでみたいという感想には結びつかなかった。しかし、本書が、多くのファンをかかえる「上質な英国ミステリ」の一作であることは、認めざるをえないだろう。そうでなければ、最後まで読み通せなかった。


評価:★★★★

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