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岩本沙弓
現場主義の経済学
2016年05月03日(火)17時30分
円安誘導をもうアメリカは許さない
米財務省は日本を中国などと共に為替操作の「監視リスト」に入れた DanBrandenburg-iStock.
半年に一度の米財務省の為替報告書が公表となりました。今回は表紙からして一新。というのも今年になって成立した「貿易促進法2015 (the Trade Facilitation and Trade Enforcement Act of 2015)」に基づいて、不公平な外国為替の慣行に対処する条項を今回初めて米財務省が履行した、というのが最大の理由でしょう。
一昨年まではドル高を容認してきた米国ですが、そのスタンスに変化が見られたのは昨年4月の為替報告書あたりから(実際の為替レートは1ドル120円台でしたが、報告書では中期的には1ドル102円水準であった頃が実効実質為替レートとしては適当との指摘あり)。
さらに、今年に入ってからは具体的な行動に動き出し、2月下旬にオバマ大統領が「貿易促進法2015」に署名。その際には「通貨安への新たな対抗策が得られた」とコメントしています。同時期、ヒラリー氏が日本を為替操作国に名指して批判したことが伝えられると、日本国内では大統領選のための票稼ぎとの指摘が一部にありましたが、それはあまりに短絡的過ぎます。米国の為替政策自体に転換が見て取れる以上、今後の米財務省の為替報告書で日本について踏み込んだ内容になるのか、留意すべきと以前の寄稿でもお伝えしましたが、各国の不公正な為替政策について米国がより厳しい視線を向けるのは時間の問題であり、想定内だったと言えましょう。
日銀がマイナス金利を導入した直後に20か国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議が開催されたのも今年の2月。会議直後の会見で黒田総裁は日本の金融政策には理解が得られたとしていましたが、米国のスタンスの転換に気付いていないのか、見てみぬふりなのか、数年前とは外部環境が全く違っているにも関わらずひたすら円安政策に邁進する日本と各国からは映ったことでしょう。
会議の直前、英中央銀行のイングランド銀行(BOE)のカーニー総裁からは各国中央銀行のマイナス金利導入は、為替レートを引き下げることによって輸出を増やし相手国の経済を悪化させる「近隣窮乏」環境を生む恐れがある、と横槍が入りましたし、会議後は中国の人民元が主要議題の1つになるとの事前の予想に反して、通貨の懸念材料に浮上したのは日本円だったというニュースもありました。
既に伝えられている通り、今回の為替報告書では中国、日本、韓国、台湾、ドイツの5か国・地域が今回新しく「貿易促進法2015」の下で導入された査定基準によって「監視リスト」入りしています。
不公平な為替慣行と言っても実は線引きは難しいものでもあります。というのも、何をもって不公平とするかは、その国の主観の入り混じるところでもありますし、経済情勢などでも随分と変化するためです。そこで米財務省は今回から、データに基づいた客観性・公正性を重視し、貿易収支・経常収支・為替介入という3つの項目に絞って枠を設定。それぞれの査定でオーバーすれば該当国の為替政策が不公平と判断するという、数値化による各国の為替政策の分析方法に切り替えています。
3項目の具体的な査定基準は以下となります。
①貿易収支:対米貿易黒字が200億ドル(1ドル107円換算で2兆1400億円)を超えた場合。
ちなみに200億ドルは米国のGDPの0.1%に相当。
②経常収支:経常黒字額が各国の国内総生産(GDP)の3%を超えた場合
③為替介入:各国のGDP2%以上の一方的な外貨購入を繰り返し行うような介入を実施した場合
日本の2015年の状況ですが、
①対米貿易黒字は686億ドルでオーバー
②経常黒字(暦年)は16.4兆円、日本のGDP(暦年)は実質で528.6兆円、名目で499.1兆円。実質3.1%、名目3.3%と換算されますので、
いずれにしてもオーバー(報告書では3.3%でオーバーとしていますので名目GDPを使っている模様)。
③為替介入の実績なし
日本以外の4か国も同様に、3項目のうち2項目が相当したため「監視リスト」の対象になったというわけです。
では3項目全てに該当した場合はどうなるのか。大統領は米財務長官を通じて2国間協議を開始し、その2国間協議が1年経過した段階で財務長官が為替レートの過小評価や黒字解消のための適当な政策を当該国がしていないと判断したなら大統領は次にあげる行動手段のうち少なくとも1つ以上を実施するとしています。
1)米国のODAを扱う機関であるOPIC(海外民間投資公社)への当該国のアクセスを拒否
2)米の政府調達の際に当該国を排除
3)IMFへ監視強化を要請
4) 適切な政策を採用してないことを踏まえた上での通商協定を締結するか、通商協定交渉に参加させるべく米通商代表部に指示
日本に大きく関わってくるのは2)、4)あたりになるのでしょう。行動手段と報告書ではしてありますが、実際には制裁措置が発動されると言った方が適当です。為替レートへの注文もよりダイレクトなものとなるでしょう。
今回の米為替報告書の指摘を受けて、日本側は「我々の対応は制限されない」とドル買い・円売り介入も辞さない構えとのこと。国内向けには強気のコメントができても、果たして同じことを対外的にも発信できるのか?という部分はさておき、実際のドル買い・円売り介入のハードルの高さを考えてみましょう。
①②はすでにオーバーしていますので、③の設定より、今後GDP2%以上の為替介入が実施されれば日本は米国の制裁措置の対象となります。具体的には実質GDPから換算するなら10.6兆円、名目GDPなら10.0兆円相当が米国から制裁措置を発動されないためのドル買い・円売り介入の限度額となります。
10兆円の為替介入が果たして効果があるのか。2011年、東日本大震災の後、1ドル75円を見た当時、民主党政権下で為替介入が実施されましたが、その年のドル買い・円売り介入の総額は14.3兆円でした。同規模の介入を今実施すれば「為替操作国」と認定されてしまうわけです。それでも当時はこれを機に、為替レートは反転してドル高円安方向に進んだのだから、それなりに効果があったのではないか?と結論づけるのは尚早です。この時は日本の震災という異例事態を受けて、直後にG7から「日本における悲劇的な出来事に関連した円相場の最近の動きへの対応として、日本当局からの要請に基づき、米国、英国、カナダ当局、および欧州中央銀行は、日本とともに為替市場における協調介入に参加する」との緊急合意があったのです。
現状では各国どころか、米国から合意を取るのは難しいだけに、協調介入の可能性は震災当時のような余程の激しい値動きや円高水準でなければ現実的ではありません。ここ20年ほどの協調介入と言えば1995年の円売り介入、1998年の円買い介入、2000年のユーロ買い介入ですが、為替市場でトレーディングをしていた経験則から申し上げると、各国との協調介入でないと効果が期待できず、日本だけの単独介入となれば、その効果については懐疑的にならざるをえません。つまり、日本が手持ちの10兆円枠をギリギリ使ったとしても、単独介入である限り円安となる効果は極めて限定的で、効果がほとんど期待できない上に、しかも「為替操作国」と同盟国から認定されるリスクを抱えながら実施する介入に意味があるのか?という疑問がわいてきます。そして、そもそも日本経済全体にとって円安の効果はいかばかりなのか、真摯に分析・検証する必要があるはずです。
ちなみに2011年の協調介入での各当局の介入額ですが、米国10.00億ドル(1ドル当時の80円換算で800億円)、カナダ1.24億ドル(99億円)、英国1.25億ドル(100億円)と公表しています。ECBは金額の公表はしていませんが、ECBの外貨準備の変動額から4.20億ドル(336億円)相当ではないかとの試算がされています。斯様に日本以外の各国の介入実施額は極めて少ないのです。大量の資金を投入して力技で為替市場を反転させるというより(為替市場の規模を考えれば、各国当局が総力を結集しても土台無理)、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に則って、逸脱した為替レートはアナウンスメント効果を狙って修正する作業に徹する、ということになります
なお、為替介入の資金は皆さんの銀行預金などが巡り巡って充てられます(ドル買い・円売りをするために、売るための円をまず財務省は調達しなければなりません。その際には短期国債を発行して、それを金融機関が購入することで円資金を手に入れます。金融機関が購入するのですから、原資は皆さんの預金等となります。ちなみに、そうして発行された短期国債は政府の借金として計上され、消費税増税の大義名分とされる政府の借金の額を大きく見せる効果も持ち合わせます)。米国では国民の資金を使うということで米国議会からの突き上げが厳しく、為替介入には極めて消極的と言われています。
昨年6月に「ドル売り介入」の最大の好機としましたが、120円台でドル売りをしておけば、70円台で購入したドルの為替差益を確定でき実現益を懐に入れられただけでなく、再度円高になった際にはドル買いと機動的に動けます。今回の米財務省の報告書の新査定基準でも触れられている「一方的な為替介入」を逆手に取り、1年以内にドルを高値で売っておけば、協調介入が無理だとしても、単独のドル買いをする際のエクスキューズとして効力を発揮できただろうに、と今さらながら思う訳です。もはや機会収益を逸し、交渉のカードもない。
外国為替レートが一国の力で如何ともしがたい以上、各国の動向を睨んだ上での戦略的な発想は必要で、そうした発想が欠落すれば当局と言えど、市場の動きにただ翻弄されるだけ。さらには外交交渉でも不利になるという憂き目にも遭いかねません。目先の為替動向に囚われるべきではないというのは大所高所から、50年、100年国家のグランドデザインをどう描くのかと深く関係することでもありますが、短期的発想(=目先の利益)、一部への利益誘導に終始するような、天下国家を考える発想の欠如は結果的に国益を損なうことに繋がります。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
● 矛盾している彼女の考え。
❶ 一国では為替に介入しても効果はない、多国間の協調が必要と言いながら、
可能性の低い今後の日本の為替介入を牽制している。
❶ そもそも日本の円安の行き過ぎを各国は懸念している以上、円安の為の
協調をどこの国が、日本の為にするというのです?
❶ 彼女の書いているように、日本は為替介入はしていないし、やる必要もありません。
問題はもうけ過ぎている(対米黒字や経常黒字)という事だけです。
● 既に円高が進行しているのは、私が去年からいっているように、105円段階までは
再び円高が有りえると予測した通りの展開ですから、今回の円高は
USA当局の思惑とは関係ないと言えます。
● 変動相場制にして、自由貿易を信奉して、資金の自由移動を勧めている以上、
上記の為替の変動は、自然な流れです。125円まで上がりその後105円まで
円高になっているのは、予測通りですから、自然なのです。
● 再び140円の円安になる予測も出しましたが、それも為替介入をしなくても起こる
自然な変動でしょう。勿論USAが我慢できるかどうかは別ですが。
● USAが我慢できなくなっても、すぐには行動できない事を見れば(1年の猶予期間)、
やはり140円まで円安になってから、USAが耐えられなくなり、その後の大円高が
やってくるのも、すでにそれも予想の範囲なのです。
● 今年の暮れ~来年の春以降は、再び円高が進行し、限りなく100円に向かいUSAは満足するのでしょう。
● 今の105円の円高が、USAの望むような102円まで行くかは微妙な所ですが、
やがて来る世界的株価大暴落では、USAの望み通りの102円までは行くでしょう。
たぶん2018~2019年ごろには、100円前後でしょう。
● 今の日本のやり方、つまり経済を復活させて、財政を均衡させようとするなら、
当然金融緩和は避けられません。つまり140円までの円安もあり得るのです。
● 今回の為替操作国認定は、現実的には、中韓への牽制の意味が強いと見るべきです。
世界の厄介者の中韓を抑制する大戦略と言う事です。日本と敵対しても、
今のUSAには全く利益はないどころか危険です。
● しかし長期的には、USAの政治状況を見れば分かるように、USA/大西洋ヨーロッパが崩壊する時
が近付いていますから、そもそもの自由貿易の前提が崩れるのが未来の予測です。
● 資本主義が崩壊するのに、いつまでも自由貿易などとは言っておれないのです。
混乱の中で、力で物事を解決する時代が来ますから、当然USAの方向は、
稼いでいる国を恫喝して、自国に優位に操作するのはあり得ます。
● 中韓朝を見ても分かるように。武人の時代とは、相手を恫喝してでも利益を得ようとする時代
ですから、USAもそのような時代へとなるのは、歴史の必然です。
● 2027年以降は、さすがのUSAも耐えれなくなり、円高を強引に要請するとは思いますが、
それも予測の範囲であり、2027年以降は徐々に円高が基調になるでしょう。
2027年の160円の円安までは、止むを得ない流れなのです。
◆ それまでUSAが我慢できないと言うなら、その時点で資本主義的自由貿易が破たんすると
言う事です。遅かれ早かれ破たんは避けられないが、問題は何時かと言う事です。
◆ 2029~2046年の株価の大崩壊で、自由貿易の破たんは避けられませんが、
それ以前となれば、何らかの強制が必要になります。つまり、
❶ 日本は今は、為替介入をしていないし今後も必要はないですが、財政の均衡の為には
金融緩和は避けられないので、円安は当然の流れとなります。
❶ それをUSAが変えたいのなら、
Ⓐ USA自らが為替を操作する。つまり、円や元やユーロなどをUSAが購入して
自国の外貨準備とするのです。そのほうがむしろ自然でしょうが、
しかしそれは、通貨戦争をUSA自らが布告すると言う事です。
Ⓑ もしくはUSA自らが、金融緩和を大々的にするという事です。今は共和党の
反対でもはや金融緩和は出来ませんが、しかし背に腹は替えられないのです。
Ⓒ つまり、今年の末=来年の春から始まる、2000年から始まっている30年㌟の不景気の
時代の総決算としての大暴落が起これば、金融緩和はせざるを得ないのです。
◆ 金融帝国で生きている以上、中韓台、日独のような産業立国に戻る事は、歴史と現実が
許さないですから、ドル高が嫌なら、自分で通貨をいじくって、為替を動かすしかないのです。
◆ たとえそれでも、今までの予想通りの為替の展開は避けられないのでしょう。
いやなら、USA自体の戦略の大転換が必要なのです。
1971年にニクソンショックでの大転換があったようにです。
◆ USAの今の政治状況を見ていれば分かるように、USAの戦略的大転換は、もうすぐそこまで
来ています。分裂と混乱と対決と内戦と革命を伴いながら・・・・・。
岩本沙弓
現場主義の経済学
2016年05月03日(火)17時30分
円安誘導をもうアメリカは許さない
米財務省は日本を中国などと共に為替操作の「監視リスト」に入れた DanBrandenburg-iStock.
半年に一度の米財務省の為替報告書が公表となりました。今回は表紙からして一新。というのも今年になって成立した「貿易促進法2015 (the Trade Facilitation and Trade Enforcement Act of 2015)」に基づいて、不公平な外国為替の慣行に対処する条項を今回初めて米財務省が履行した、というのが最大の理由でしょう。
一昨年まではドル高を容認してきた米国ですが、そのスタンスに変化が見られたのは昨年4月の為替報告書あたりから(実際の為替レートは1ドル120円台でしたが、報告書では中期的には1ドル102円水準であった頃が実効実質為替レートとしては適当との指摘あり)。
さらに、今年に入ってからは具体的な行動に動き出し、2月下旬にオバマ大統領が「貿易促進法2015」に署名。その際には「通貨安への新たな対抗策が得られた」とコメントしています。同時期、ヒラリー氏が日本を為替操作国に名指して批判したことが伝えられると、日本国内では大統領選のための票稼ぎとの指摘が一部にありましたが、それはあまりに短絡的過ぎます。米国の為替政策自体に転換が見て取れる以上、今後の米財務省の為替報告書で日本について踏み込んだ内容になるのか、留意すべきと以前の寄稿でもお伝えしましたが、各国の不公正な為替政策について米国がより厳しい視線を向けるのは時間の問題であり、想定内だったと言えましょう。
日銀がマイナス金利を導入した直後に20か国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議が開催されたのも今年の2月。会議直後の会見で黒田総裁は日本の金融政策には理解が得られたとしていましたが、米国のスタンスの転換に気付いていないのか、見てみぬふりなのか、数年前とは外部環境が全く違っているにも関わらずひたすら円安政策に邁進する日本と各国からは映ったことでしょう。
会議の直前、英中央銀行のイングランド銀行(BOE)のカーニー総裁からは各国中央銀行のマイナス金利導入は、為替レートを引き下げることによって輸出を増やし相手国の経済を悪化させる「近隣窮乏」環境を生む恐れがある、と横槍が入りましたし、会議後は中国の人民元が主要議題の1つになるとの事前の予想に反して、通貨の懸念材料に浮上したのは日本円だったというニュースもありました。
既に伝えられている通り、今回の為替報告書では中国、日本、韓国、台湾、ドイツの5か国・地域が今回新しく「貿易促進法2015」の下で導入された査定基準によって「監視リスト」入りしています。
不公平な為替慣行と言っても実は線引きは難しいものでもあります。というのも、何をもって不公平とするかは、その国の主観の入り混じるところでもありますし、経済情勢などでも随分と変化するためです。そこで米財務省は今回から、データに基づいた客観性・公正性を重視し、貿易収支・経常収支・為替介入という3つの項目に絞って枠を設定。それぞれの査定でオーバーすれば該当国の為替政策が不公平と判断するという、数値化による各国の為替政策の分析方法に切り替えています。
3項目の具体的な査定基準は以下となります。
①貿易収支:対米貿易黒字が200億ドル(1ドル107円換算で2兆1400億円)を超えた場合。
ちなみに200億ドルは米国のGDPの0.1%に相当。
②経常収支:経常黒字額が各国の国内総生産(GDP)の3%を超えた場合
③為替介入:各国のGDP2%以上の一方的な外貨購入を繰り返し行うような介入を実施した場合
日本の2015年の状況ですが、
①対米貿易黒字は686億ドルでオーバー
②経常黒字(暦年)は16.4兆円、日本のGDP(暦年)は実質で528.6兆円、名目で499.1兆円。実質3.1%、名目3.3%と換算されますので、
いずれにしてもオーバー(報告書では3.3%でオーバーとしていますので名目GDPを使っている模様)。
③為替介入の実績なし
日本以外の4か国も同様に、3項目のうち2項目が相当したため「監視リスト」の対象になったというわけです。
では3項目全てに該当した場合はどうなるのか。大統領は米財務長官を通じて2国間協議を開始し、その2国間協議が1年経過した段階で財務長官が為替レートの過小評価や黒字解消のための適当な政策を当該国がしていないと判断したなら大統領は次にあげる行動手段のうち少なくとも1つ以上を実施するとしています。
1)米国のODAを扱う機関であるOPIC(海外民間投資公社)への当該国のアクセスを拒否
2)米の政府調達の際に当該国を排除
3)IMFへ監視強化を要請
4) 適切な政策を採用してないことを踏まえた上での通商協定を締結するか、通商協定交渉に参加させるべく米通商代表部に指示
日本に大きく関わってくるのは2)、4)あたりになるのでしょう。行動手段と報告書ではしてありますが、実際には制裁措置が発動されると言った方が適当です。為替レートへの注文もよりダイレクトなものとなるでしょう。
今回の米為替報告書の指摘を受けて、日本側は「我々の対応は制限されない」とドル買い・円売り介入も辞さない構えとのこと。国内向けには強気のコメントができても、果たして同じことを対外的にも発信できるのか?という部分はさておき、実際のドル買い・円売り介入のハードルの高さを考えてみましょう。
①②はすでにオーバーしていますので、③の設定より、今後GDP2%以上の為替介入が実施されれば日本は米国の制裁措置の対象となります。具体的には実質GDPから換算するなら10.6兆円、名目GDPなら10.0兆円相当が米国から制裁措置を発動されないためのドル買い・円売り介入の限度額となります。
10兆円の為替介入が果たして効果があるのか。2011年、東日本大震災の後、1ドル75円を見た当時、民主党政権下で為替介入が実施されましたが、その年のドル買い・円売り介入の総額は14.3兆円でした。同規模の介入を今実施すれば「為替操作国」と認定されてしまうわけです。それでも当時はこれを機に、為替レートは反転してドル高円安方向に進んだのだから、それなりに効果があったのではないか?と結論づけるのは尚早です。この時は日本の震災という異例事態を受けて、直後にG7から「日本における悲劇的な出来事に関連した円相場の最近の動きへの対応として、日本当局からの要請に基づき、米国、英国、カナダ当局、および欧州中央銀行は、日本とともに為替市場における協調介入に参加する」との緊急合意があったのです。
現状では各国どころか、米国から合意を取るのは難しいだけに、協調介入の可能性は震災当時のような余程の激しい値動きや円高水準でなければ現実的ではありません。ここ20年ほどの協調介入と言えば1995年の円売り介入、1998年の円買い介入、2000年のユーロ買い介入ですが、為替市場でトレーディングをしていた経験則から申し上げると、各国との協調介入でないと効果が期待できず、日本だけの単独介入となれば、その効果については懐疑的にならざるをえません。つまり、日本が手持ちの10兆円枠をギリギリ使ったとしても、単独介入である限り円安となる効果は極めて限定的で、効果がほとんど期待できない上に、しかも「為替操作国」と同盟国から認定されるリスクを抱えながら実施する介入に意味があるのか?という疑問がわいてきます。そして、そもそも日本経済全体にとって円安の効果はいかばかりなのか、真摯に分析・検証する必要があるはずです。
ちなみに2011年の協調介入での各当局の介入額ですが、米国10.00億ドル(1ドル当時の80円換算で800億円)、カナダ1.24億ドル(99億円)、英国1.25億ドル(100億円)と公表しています。ECBは金額の公表はしていませんが、ECBの外貨準備の変動額から4.20億ドル(336億円)相当ではないかとの試算がされています。斯様に日本以外の各国の介入実施額は極めて少ないのです。大量の資金を投入して力技で為替市場を反転させるというより(為替市場の規模を考えれば、各国当局が総力を結集しても土台無理)、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に則って、逸脱した為替レートはアナウンスメント効果を狙って修正する作業に徹する、ということになります
なお、為替介入の資金は皆さんの銀行預金などが巡り巡って充てられます(ドル買い・円売りをするために、売るための円をまず財務省は調達しなければなりません。その際には短期国債を発行して、それを金融機関が購入することで円資金を手に入れます。金融機関が購入するのですから、原資は皆さんの預金等となります。ちなみに、そうして発行された短期国債は政府の借金として計上され、消費税増税の大義名分とされる政府の借金の額を大きく見せる効果も持ち合わせます)。米国では国民の資金を使うということで米国議会からの突き上げが厳しく、為替介入には極めて消極的と言われています。
昨年6月に「ドル売り介入」の最大の好機としましたが、120円台でドル売りをしておけば、70円台で購入したドルの為替差益を確定でき実現益を懐に入れられただけでなく、再度円高になった際にはドル買いと機動的に動けます。今回の米財務省の報告書の新査定基準でも触れられている「一方的な為替介入」を逆手に取り、1年以内にドルを高値で売っておけば、協調介入が無理だとしても、単独のドル買いをする際のエクスキューズとして効力を発揮できただろうに、と今さらながら思う訳です。もはや機会収益を逸し、交渉のカードもない。
外国為替レートが一国の力で如何ともしがたい以上、各国の動向を睨んだ上での戦略的な発想は必要で、そうした発想が欠落すれば当局と言えど、市場の動きにただ翻弄されるだけ。さらには外交交渉でも不利になるという憂き目にも遭いかねません。目先の為替動向に囚われるべきではないというのは大所高所から、50年、100年国家のグランドデザインをどう描くのかと深く関係することでもありますが、短期的発想(=目先の利益)、一部への利益誘導に終始するような、天下国家を考える発想の欠如は結果的に国益を損なうことに繋がります。
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● 矛盾している彼女の考え。
❶ 一国では為替に介入しても効果はない、多国間の協調が必要と言いながら、
可能性の低い今後の日本の為替介入を牽制している。
❶ そもそも日本の円安の行き過ぎを各国は懸念している以上、円安の為の
協調をどこの国が、日本の為にするというのです?
❶ 彼女の書いているように、日本は為替介入はしていないし、やる必要もありません。
問題はもうけ過ぎている(対米黒字や経常黒字)という事だけです。
● 既に円高が進行しているのは、私が去年からいっているように、105円段階までは
再び円高が有りえると予測した通りの展開ですから、今回の円高は
USA当局の思惑とは関係ないと言えます。
● 変動相場制にして、自由貿易を信奉して、資金の自由移動を勧めている以上、
上記の為替の変動は、自然な流れです。125円まで上がりその後105円まで
円高になっているのは、予測通りですから、自然なのです。
● 再び140円の円安になる予測も出しましたが、それも為替介入をしなくても起こる
自然な変動でしょう。勿論USAが我慢できるかどうかは別ですが。
● USAが我慢できなくなっても、すぐには行動できない事を見れば(1年の猶予期間)、
やはり140円まで円安になってから、USAが耐えられなくなり、その後の大円高が
やってくるのも、すでにそれも予想の範囲なのです。
● 今年の暮れ~来年の春以降は、再び円高が進行し、限りなく100円に向かいUSAは満足するのでしょう。
● 今の105円の円高が、USAの望むような102円まで行くかは微妙な所ですが、
やがて来る世界的株価大暴落では、USAの望み通りの102円までは行くでしょう。
たぶん2018~2019年ごろには、100円前後でしょう。
● 今の日本のやり方、つまり経済を復活させて、財政を均衡させようとするなら、
当然金融緩和は避けられません。つまり140円までの円安もあり得るのです。
● 今回の為替操作国認定は、現実的には、中韓への牽制の意味が強いと見るべきです。
世界の厄介者の中韓を抑制する大戦略と言う事です。日本と敵対しても、
今のUSAには全く利益はないどころか危険です。
● しかし長期的には、USAの政治状況を見れば分かるように、USA/大西洋ヨーロッパが崩壊する時
が近付いていますから、そもそもの自由貿易の前提が崩れるのが未来の予測です。
● 資本主義が崩壊するのに、いつまでも自由貿易などとは言っておれないのです。
混乱の中で、力で物事を解決する時代が来ますから、当然USAの方向は、
稼いでいる国を恫喝して、自国に優位に操作するのはあり得ます。
● 中韓朝を見ても分かるように。武人の時代とは、相手を恫喝してでも利益を得ようとする時代
ですから、USAもそのような時代へとなるのは、歴史の必然です。
● 2027年以降は、さすがのUSAも耐えれなくなり、円高を強引に要請するとは思いますが、
それも予測の範囲であり、2027年以降は徐々に円高が基調になるでしょう。
2027年の160円の円安までは、止むを得ない流れなのです。
◆ それまでUSAが我慢できないと言うなら、その時点で資本主義的自由貿易が破たんすると
言う事です。遅かれ早かれ破たんは避けられないが、問題は何時かと言う事です。
◆ 2029~2046年の株価の大崩壊で、自由貿易の破たんは避けられませんが、
それ以前となれば、何らかの強制が必要になります。つまり、
❶ 日本は今は、為替介入をしていないし今後も必要はないですが、財政の均衡の為には
金融緩和は避けられないので、円安は当然の流れとなります。
❶ それをUSAが変えたいのなら、
Ⓐ USA自らが為替を操作する。つまり、円や元やユーロなどをUSAが購入して
自国の外貨準備とするのです。そのほうがむしろ自然でしょうが、
しかしそれは、通貨戦争をUSA自らが布告すると言う事です。
Ⓑ もしくはUSA自らが、金融緩和を大々的にするという事です。今は共和党の
反対でもはや金融緩和は出来ませんが、しかし背に腹は替えられないのです。
Ⓒ つまり、今年の末=来年の春から始まる、2000年から始まっている30年㌟の不景気の
時代の総決算としての大暴落が起これば、金融緩和はせざるを得ないのです。
◆ 金融帝国で生きている以上、中韓台、日独のような産業立国に戻る事は、歴史と現実が
許さないですから、ドル高が嫌なら、自分で通貨をいじくって、為替を動かすしかないのです。
◆ たとえそれでも、今までの予想通りの為替の展開は避けられないのでしょう。
いやなら、USA自体の戦略の大転換が必要なのです。
1971年にニクソンショックでの大転換があったようにです。
◆ USAの今の政治状況を見ていれば分かるように、USAの戦略的大転換は、もうすぐそこまで
来ています。分裂と混乱と対決と内戦と革命を伴いながら・・・・・。