急増する米国の富豪、大統領選次第では「外国移住」が加速か
世界で富豪が最も多い米ニューヨーク(Francois Roux / shutterstock.com)
英コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズの最新レポートによると、1億ドル(約142億円)以上の現金化できる資産を持つ超富裕層の「センチミリオネア」が世界で増えており、うち3分の1が米国に居住している。だが、米民主党が提案する保有資産の含み益である「未実現利益」への課税を含め、米大統領選の結果によっては一部の超富裕層が居住地を米国から国外に移す可能性があると同社は指摘している。
調査会社ニュー・ワールド・ウェルスのデータを基に作成された年次報告書『センチ・ミリオネア・レポート2024』によると、1億ドル以上の現金化可能な資産を持つ人は全世界で2万9350人で、過去10年で50%以上増加している。 報告書は米国と中国で「センチミリオネア・ブーム」が起こっていると指摘。3月時点で米国のセンチミリオネアは約9850人で、過去10年間で81%増えた。世界で最もセンチミリオネアが多い都市はニューヨーク、カリフォルニア州ベイエリア、同ロサンゼルスと上位3位を米国が占めている。 これらの都市では今後10年でも超富裕層の人口が大幅に増加すると予想されているが、米シンクタンクのコンファレンス・ボードの経済開発委員会の委員長を務めるデビッド・ヤングは報告書で、11月の大統領選の結果によっては「超富裕の人々が経済・政治的により安全な国に向かう」可能性があると述べている。
投資による海外での永住権や市民権の取得を支援しているヘンリー・アンド・パートナーズは、米国の富裕層が国外移住を検討しており、投資による移住の問い合わせが今年5倍増えていると明らかにした(問い合わせ件数は非公開)。 同社の税務サービスのディレクター、ピーター・フェリグノは、民主党の大統領候補者であるカマラ・ハリス副大統領が検討している純資産1億ドル以上の国内の富豪の未実現利益に25%の最低税率をかける政策により、富豪らの「米国での投資に対する見方が非常に慎重なものになるかもしれない」と主張した。 未実現利益、つまりまだ売却して利益を得ていない投資の含み益に他国が課税していないのには「多くの正当な理由 」があるとフェリグノは警告。同社の専門家らは、今後課されるかもしれない税を回避するために、これまで以上に多くの米国の富裕層が外国の永住権や市民権の取得を検討していると指摘している。