「恥ずかしい」「2024年とは思えない」 鉄道会社の“ポンコツ内情”に全英唖然 市長が激怒したIT化を拒む「英国流のブラック言い訳」
数兆円規模の巨額投資でテコ入れしてきたが・・・
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ノーザンの列車(赤川薫撮影)。
「恥ずかしい!」。英国第2位の鉄道運行会社「ノーザン」について、英国メディアが一斉に報じました。何があったのでしょうか。 【青と黄】カラフルなノーザンの列車を見る(写真) イングランド北部の鉄道運行を担うノーザンは、英国の全駅の約20%に相当する約550駅を結ぶ巨大な運行区域を誇っています。 同社ではキャッシュレス化も進んでいます。スマートフォンのアプリでチケットを買えるのはもちろんのこと、乗車予定の列車が運休になってしまった場合、アプリやウェブサイトから申請すれば瞬時に返金されるシステムも用意しています。 線路や信号などの鉄道インフラも、2022年から数兆円規模の巨額出資でテコ入れしています(英国政府公式ウェブサイトによる)。
特に、英国第2の都市でもあるマンチェスターの近郊は、ノーザンの運行区域の中でも鉄道インフラの近代化を目指している肝煎りの場所で、2025年の工事完了に向けて慌ただしい動きを見せています(ネットワーク・レイル社ウェブサイトによる)。 このように、国を挙げて、ノーザンの運行区域のインフラをアップグレードしていこうと盛り上がっている中、冒頭のように、英国中をガッカリさせる現状が次々に露呈していったのです。
「運転手が足りなくて」「最新すぎて」列車運休
ことの発端は、ノーザンがマンチェスター近郊の4路線の利用者に対して「10月20日(日)には列車を利用しないように」と呼びかけた警告(Do not travel warning)でした。こともあろうか、人員不足で列車の運行ができないというのです。 この一件から、最近のノーザンが運休・遅延だらけの杜撰(ずさん)な運行状況にあったことが注目を浴び、事態に焦ったマンチェスター市長のアンディ・バーナム氏が招集した臨時会合で、人員不足の原因となった驚きの実情が次々と明るみに出ました。
まず判明したのは、ノーザンの職員が休日にも働くことを義務付けた「休日労働協定」が失効して(BBCによる)、日曜に職員を招集できる権限が会社になくなっていたビックリな事実です。労働組合の力が強い英国で休日労働協定が失効していては、休日に誰も顔を出さないのは無理もない話。 次に市長の怒りに油を注いだのは、数兆円規模の支援でインフラを整備したにもかかわらず、その新しいシステムを使えるように職員を計画的にトレーニングしてこなかったため、新インフラで鉄道を運行できる人員が全然いないという、あきれ果てる言い訳でした。
実は、今回と同様、オーバースペックな新インフラが「豚に真珠」の状態となり運休が続発してしまった問題は、過去にもノーザンでありました。2018年5月、設備投資した新しいシステムに合わせてダイヤを改正したものの、運転手のトレーニングが追いつかず、新ダイヤの通りに運行できなくなり、ダイヤ改正から1年間で、全線運休が1万5800件、一部運休が1万8696件発生していたのです(The Guardianによる)。その後、資本形態なども変わりましたが失態からまったく学ばず、同じ過ちを繰り返したのですから、救いようがありません。