7時、起床。パンとバターと牛乳の朝食。ブログの更新を済ませたから、もう一眠りする。
昼食は妻がジム帰りに買ってきた握り鮨。それを食べてから池上散歩に出かける。私にとって蒲田は日常的世界であるが、目蒲線で2つ隣の池上は、日常的世界と隣接してそこから半歩踏み出した亜日常的世界である。半歩ではあっても脱日常の感覚が伴い、同時に親密感は保持されている。この絶妙なバランスが池上散歩(一般化していえば隣町散歩)の特徴である。親密感の源泉は馴染みの店である。今日は昼食は済ませているので、「薫風」の前は素通りして、「甘味あらい」に直行する。天気のよい週末の午後の「甘味あらい」は混んでいる。店内で席が空くのを少し待つ。久しぶりでこの店の看板メニューの贅沢あんみつを注文した。いきなり黒蜜はかけずに、白玉やフルーツにあんを付けて食べ、寒天が見えてきてから黒蜜をかけて食べる。これ、地元のケーブルTVにご主人が出演したときに推奨していた食べ方である。あんの甘さと黒蜜の甘さを別々に楽しむ趣向である。
久しぶりで贅沢あんみつを注文
店を出て、池上梅園へ足を延ばす。いよいよ見頃である。入園料は百円。ただ同然であるが、まったくのただではないから、梅を見たいと思う人しかいない。それが百円の効果である。閉園時間は午後4時半。桜には夜桜見物があるが、池上梅園の梅は昼間でないと見物できない。昼間は暖かくても夕方は冷えるし、見物人は高齢者が多いから、ちょうどいい閉園時間の設定だと思う。
梅園を4時頃に出て、池上駅までの道をぶらぶら歩く。
池上駅前商店街の「コロラド」で一服。持参した『atプラス』の最新号(07)に載っている大澤真幸「可能なる革命 第1回 「幸福だ」と答える若者たちの時代」を読む。NHK放送文化研究所が1973年から5年ごとに実施している「日本人の意識」調査によれば、日本人の生活満足度は時代と共に上昇してきた。それはバブル崩壊以後の長期化する不況の時代でも変わらない。とくに若者たちの生活満足度の上昇が目立つ。これほど社会経済的な低迷や困難が叫ばれる時代にあって、その混迷や困難の影響を強く受けているはずの若者たちの生活満足度が高いのはなぜなのか。いろんな人がいろんな説明をしている。大澤は既存の説明を検証しながら、自説を展開していく。大澤らしさが随所に見られる興味深い考察だが、いま、ここでそれを紹介することはしない(新学期の授業でとりあげようと思うので)。ここでは別の2つのことを述べておきたい。
第一は、大澤に限らず、社会学者は一般に社会現象を危機的なものとして解釈する傾向があるということ。単純に考えれば、人々の生活満足度が高いというのはよいことである。しかし、社会学者はそうは考えない。高い生活満足度=よい社会、ということでは社会学者の出る幕がない。商売上がったりだ。客観的にはひどい状況に置かれている人々が生活に満足していると答えているのには、何か訳があるに違いない、裏があるはずだと考えるのである。その意味で、社会学者は素直じゃない。ひねくれている。そして社会学者の多くは大学で教えている。学生は青年期にある人間がほとんどで、青年期は人間の一生の中では危機的な(不安定な)時期だから、社会学者と学生の間で社会学の危機的性格は相乗効果を生んでいるといってよいだろう。
第二は、社会学者は学生の目からみておじさん、おばさん、つまり大人であるが、その大人たちの書いた若者論を若者が読んで、若者は自分たちのことを「理解してしまう」傾向がある。大学生の「若者」をテーマにしたレポートにはおじさん、おばさんの書いた本が参考文献として使われるが、それが批判的な使われ方をすることはめったになくて、「○○がこういっている通り・・・」と自分の考察の妥当性の根拠として使われるのである。とても素直なのだ。「大人に自分たち若者のことがわかってたまるか」的な文章に出会うことはめったにない。もしかしたら、レポートで考察の対象になっている「若者」の中にレポートを書いている学生本人は含まれていないのではないかといぶかしく思うときがある。「ここでいう若者たちは若者一般のことで、私自身はその若者の一部でありません」とどこかに注釈が書かれているのではないかと思ってしまうほど、学生は大人が書いた若者論を素直に受け入れている。今回の大澤の論文も授業で教材として取り上げたら同じことが起きるだろう(と、あらかじめいっておけば、そうはならないのはないかという期待を込めて)。
「大黒」で百円均一の古本を6冊購入して、蒲田に帰る。「くまざわ書店」で新書を4冊購入。
瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』(中公新書)
豊田義博『就活エリートの迷走』(ちくま新書)
海原純子『ツイッター幸福論 ネットワークサイズと日本人』(角川ワンテーマ21)
山脇伸介『Facebook 世界を征服するソーシャルプラットフォーム』(ソフトバンク新書)