フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

2月18日(月) 小雨のち曇り

2013-02-19 02:01:26 | Weblog

  8時、起床。郵便局と薬局に行く用事があったので、そのついでサンロードカマタ(昔は蒲田銀座といった)の奥にある『麦』という喫茶店でモーニングセットの朝食。

   店の前はよく通り、古風な店名とたくさんの看板が気になっていたが、入るのは今日が初めて。直接のきっかけは先日購入した『蒲田Walker』に載っていた記事である。「ジモト自慢ランキングBEST50」の第15位として紹介されていた。

  店に入ると、写真でみた通りの82歳のマダムが客と元気な声で話をしていた。店で出している野菜ジュースがいかに健康によいか、近所の常田病院がいかによい病院であるかを、熱心に語っていた。昭和31年、25歳のときに開業して、以来56年間、今日に至っている。親子二代に渡ってとかであれば珍しくないかもしれないが、一代で56年間というのはすごい。私が2歳の頃からということになる。地元の大先輩である。ちなみに開店当時のコーヒー一杯の金額は30円だった。

  会計のとき、『麦』という店名の由来を尋ねてみた。マダムは、喫茶店を始める前、日本橋の白木屋で働いていた。若い人は居酒屋のチェーン店のことかと思うであろうが、そうではなく、当時、日本を代表する百貨店であった。いまと違って、百貨店は夕方には閉まるから、そこで働いていた若い女性たちは、仕事が終わってから、銀座界隈で青春を謳歌していた。マダムはよく昭和通にあった『麦』という喫茶店に行った。老夫婦がやっていた喫茶店で、そこが店仕舞いをすることになったとき、自分が蒲田で始める予定の喫茶店にその名前を使わせてもらいたいと頼んで、譲り受けたのだという。なのでそもそもの店名の由来はわからいとのこと。その先代の『麦』は大正の頃からあったそうだから、モダンボーイやモダンガールの社交空間だったのだろう。

  私がマダムに尋ねたのは店名の由来だったが、マダムは話好きで、私はライフストーリーを聞くことにかけてはプロであるから、話はどんどん膨らんで、レジの前で20分ばかり立ち話をしただろうか。

  モーニングセットは、表の看板には500円とあったが、請求金額は650円であった。何か勘違いがあったのかもしれないが、私はおしゃべり料込みであろうと解釈して、黙って650円を支払った。少しも高いとは思わなかった。また来よう。

  帰宅して、メールをチェックすると、ゼミ一期生のSさんから「近況報告」という件名のメールが届いていた。直感的に、今度結婚することになりましたという内容であろうと思ったが、直感は半分当り、半分外れていた。「結婚することになりました」ではなく、「今月、結婚しました」という報告だった。親族だけの結婚式だったので、私を招待できなかったことが残念ですと書かれていた。お相手のことは知っていた。同じ職場の(といってもいいだろう)かなり年上の方である。もっともSさん自身が、東大の法学部を出て、しばらくしてから、学士入学で文化構想学部に入ってきた方なので、早婚というわけではない。研究室に来て報告がしたいとのことだったので、来週、来てもらうことになった。まさか相手の方も一緒ということはないよね、と念のため尋ねると、「はい、もちろん一人でうかがいますよ!」とのことだった。そうだろう、もし、彼氏同伴なんてことになったら、私は上機嫌で応対する自信はない。「教え子」の結婚という場合、それが女子学生であれば、どうしたって「娘の父親」に近似したポジションで振舞うことになるであろうから。

  年末から痔の具合がよろしくない。悪化したり、回復したりをくり返している。市販の薬でしのいできたが、昨日から痛みがあり(原稿書きに集中できない)、今日はネットで検索して、駅の近くに去年新しく出来た肛門外科のある医院に行ってみた。そこの若い医師は私と小学校が同じで、看護師さんの息子さんはいま早稲田大学を受験中とのことだった。肛門外科だけに、思わぬところで知り(尻)合いだ。

  就活真っ只中のゼミ生のMさんからメールが来て、エントリーシートに「あなたを一言で表すキャッチフレーズ」を親しい人や先生など10人から集めて書く欄があって、先生にもお願いしたいと書いてあった。いろいろな課題があるものである。Mさんは大変に気配りの利く人で、先日のゼミ4年生の送別会の幹事役も就活で忙しい中、ちゃんとやってくれた。医院の待合室であれこれ考えたキャッチフレーズの中から、ひとつを選んで、帰宅してからメールで送る。「息子のお嫁さんにしたいような」。これでいかがだろか(大喜利か)。ほどなくしてMさんから「とても嬉しいです。エントリーシートに書かせていただきます」と返信があった。

  いま就活中のゼミ生諸君、たぶん打ちのめされるような経験をしていることと思うが、君たちはいい学生だと私は思っている。エントリーシートや短時間の面接から君たちのよさをわかる人間がどのくらいいるのかは心配だが、それはシステム上いたしかたのないことで、だから、そんなことで自分を見失ってはいけない。めげずに立ち向かっていきなさい。そんなことでめげない人間であることを見せてやることです。私は、君たちが思っている以上に、君たちのことが好きだから(「モヤモヤさまぁ~ず2」で三村が大江アナに贈った言葉を拝借しました)。