2/10(土)千葉劇場にて。監督はアン・テジン。主演はリュ・ジュンヨル。
韓国の映画やテレビドラマを見ていると、過度とも言えるヒロイズムやロマンティシズムを感じてしまい、個人的には敬遠しているところがある。この作品にも、その傾向は感じられたが、サスペンス仕立てのスピード感にあふれた構成で、なかなか見ごたえがあった。
時代は17世紀中頃、中国大陸では明から清へと時代が移り、陸続きの朝鮮王朝にも大きな時代の波が打ち寄せている。権謀術数が渦巻く朝廷内で、権力に利用されるために採用された、眼には障害を持つ優れた鍼灸医。しかし、彼は闇の中ではわずかに見えていることを誰にも言わず、それを護身の術としていたのだった。やがて彼の眼前で、夜の闇に紛れて殺人が行われるが・・。
題名の『梟フクロウ』について、感じたことを書いておこう。猛禽類のフクロウは昼間は木陰で眠り、夜、優れた視力を駆使して獲物を狙う。この作品の主人公が、夜陰でのみ目が利くのにそれを譬えたのだろう。さらに、最後に大きな権力に向かって尖った嘴を向ける・・そんな姿をも譬えたのかもしれない。
ちなみに、フクロウの視力は人間の10倍ともいわれる。が、これは自然な生活をしている人の場合で、都市部でパソコンやスマホを1日中見ている人間と比較すれば、おそらく数十倍と思われる。視力検査の時3メートル離れたところのスプリットなどを見て測るが、仮にフクロウだったら、夜でも30メートル離れて読み取れることになる。すごい視力だ。
以下は、千葉劇場のホームページより転載。
『17世紀・朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわる謎を題材に、史実に残された最大の謎に迫るサスペンス・スリラー。盲目の天才鍼医ギョンスは、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王の子の死を‟目撃“し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。見えない男は、常闇に何を見たのか―?追われる身となった彼は、制御不能な狂気が迫るなか、昼夜に隠された謎を暴くために闇常闇を駆ける。絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで―。‟盲目の目撃者”が謎めいた死の真相を暴くために常闇を奔走する予測不可能な物語は、圧倒的な没入感と、緊張感をもたらし、息もできないほどの狂気が支配する118分は、観る者すべての五感を麻痺させる。2023年韓国映画賞《25冠》最多受賞。』