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わたしのレコード棚ーブルース163 Dan Pickett

2024年09月10日 | わたしのレコード棚
 ブルースという音楽を特徴づけているものに「コール・アンド・レスポンスCall and response」がある。これは、ブルースに限らず様々な民族音楽にあり、日本の民謡などでは「合いの手」に当たる。今では、聴衆とのやり取り、呼応などをライブで演奏に組み込むことも「コール・アンド・レスポンス」とも言うが、本来は農作業や力仕事などでリズムを取りながら呼応して作業を進めるためのものだろう。ブルースマンが一人で演奏する時には、歌い、それに呼応する様に、ギターなどの楽器で「合いの手」を入れるがごとくに演奏する。歌とギターの「掛け合い」のような形になる。そこには、様々な演奏パターンがあり、それがそのプレーヤーを特徴づけることになる。

 わたしもブルース・セッションに参加して様々なプレーヤーと演奏したが、このコール・アンド・レスポンスを大切にして演奏する人には、いまだに出会っていない。皆、それぞれに高い技術を持っているミュージシャンだが、自分なりの間合いを習得して「コール・アンド・レスポンス」を入れ、ブルースらしい演奏が出来ている人は皆無だ。わたしの友人は、SNSで公開されている、あるブルースセッションの映像を見て「(ブルースナンバーだが)ロックにしか聞こえない」と言っていた。それはセッションに参加している人が、ロック・ミュージシャンの演奏するブルース形式の曲しか聞いていないことに起因している。やはり、ルーツとなっているブルースマンの演奏を聴き込まなければ本当のブルースは出来ない。

 ダン・ピケットは、スライドギターを中心にしたブルースマンで、この人の演奏を聴くと「見事なコール・アンド・レスポンスだ」と感じる。特に、若い人にはぜひ聴いてほしいブルースマンの一人。

 この人に関しては、出自など長く不明とされており、下のCD解説では「"謎の“戦後カントリー・ブルース/スライド・ギターの名手」としている。が、今では彼の事がかなり判ってきているようで、ウィキペディアなどには、かなり詳しい記述がある。それによると、本名はジェイムス・フォウンティー(James Founty)。生まれは1907年8月31日アラバマ州のパイク(Pike County)。亡くなったのは1967年8月16日で、やはりアラバマ州のボアズ(Boaz)だった、という。


 P-ヴァインから1991年に出た、国内盤CDでPCD-2271。解説は、鈴木啓志氏。ゴーサム(GOTHAM)というレーベルに残した、1949年8月フィラデルフィアでの録音18曲。さらに、ターヒール・スリム(Tarheel Slim)の同年7月の4曲をカップリングして22曲を収録。後世に残すべき優れたCDなのだが、残念ながら今では入手が困難なようだ。ユーチューブなどで聴ける曲もあるので、若いプレーヤーには、ぜひ一度聴いて自分の演奏の参考にしてほしい。

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