以前、ブルース・セッションで若い人と話していた時「俺は元々はアコースティックギターでやってたんだよ」と言うと、彼は驚いて「アコギでブルースやるんですかあ?」と言った。啞然として、次に発する言葉が出てこなかった。今思えば「エレキギターが出来るずっと前からブルースはあったんだよ・・」と言えば、納得してくれたような気もする。と、いうわけで、録音されたブルースの歴史の初期に活躍した、アコースティックなジム・ジャクソンを取り上げることにしよう。ちなみに、エレキギターが商品化されたのは1938年頃だが、その前年にジャクソンは亡くなっている。
ジム・ジャクソン(Jim jackson)。生まれは、はっきりとしたことは不明だが、1890年頃としている資料が多く、下のLPレコードでは1884年頃としている。生地はミシシッピー州ハーナンド(Hernando)らしい。ショーをして薬などを売る「メディスン・ショー」や、エンターテインメント性の高い「ミンストレル」で芸人生活を送っていた人で、今風にいう「ブルースマン」というよりは「エンターテナー」に近い人だった。1927年10月にヴォキャリオンに吹き込んだ『Jim jackson's Kansas City Blues』がヒットし、1928年にはメンフィスへ移動、様々なプレーヤー達と演奏活動をしている。『Kansas City Blues』は、100枚のミリオンセラーだったという。が、それに見合った報酬は得られなかったのだろう、1930年に最後の録音をした後は故郷のハーナンドへ帰り1937年に亡くなった、という。ミリオンセラーを記録した人が、それに見合ったギャランティーを得られず、40代で亡くなる。これが、100年程前のアメリカの音楽業界の厳しい現実だったわけだ。
オランダのレーベルAGRAMのLPでAB2004。『Kansas City Blues』のパート1~4など、1927年から1929年までの16曲を収録。歌詞と解説付き。
同じレコードの裏面。中央が発売当時のVocalion(ヴォキャリオン)のSP盤のレーベルだろう。
ブルースの歴史において注視すべき重要な点は、ジム・ジャクソンの「歌詞ー言葉」である。LPに付属している歌詞を見ると、後にシカゴで活躍したブルースマン達が、ここからフレーズを取ってきたと思われる言葉が多くあるのに気付く。「音」ではなく「言葉」が中心だった頃のブルースがここにあり、リズムはシャッフルではなく2ビートに近く、アイリッシュ系のマウンテン・ミュージックにも通じている。ここで聴かれる豊かな言葉、それら全てがジャクソンのものかは分からない。おそらく、当時のアメリカ南部の庶民達が歌っていた言葉を拾い、編集したのだろう。それはそれで、大きな仕事だったのである。
ジム・ジャクソン(Jim jackson)。生まれは、はっきりとしたことは不明だが、1890年頃としている資料が多く、下のLPレコードでは1884年頃としている。生地はミシシッピー州ハーナンド(Hernando)らしい。ショーをして薬などを売る「メディスン・ショー」や、エンターテインメント性の高い「ミンストレル」で芸人生活を送っていた人で、今風にいう「ブルースマン」というよりは「エンターテナー」に近い人だった。1927年10月にヴォキャリオンに吹き込んだ『Jim jackson's Kansas City Blues』がヒットし、1928年にはメンフィスへ移動、様々なプレーヤー達と演奏活動をしている。『Kansas City Blues』は、100枚のミリオンセラーだったという。が、それに見合った報酬は得られなかったのだろう、1930年に最後の録音をした後は故郷のハーナンドへ帰り1937年に亡くなった、という。ミリオンセラーを記録した人が、それに見合ったギャランティーを得られず、40代で亡くなる。これが、100年程前のアメリカの音楽業界の厳しい現実だったわけだ。
オランダのレーベルAGRAMのLPでAB2004。『Kansas City Blues』のパート1~4など、1927年から1929年までの16曲を収録。歌詞と解説付き。
同じレコードの裏面。中央が発売当時のVocalion(ヴォキャリオン)のSP盤のレーベルだろう。
ブルースの歴史において注視すべき重要な点は、ジム・ジャクソンの「歌詞ー言葉」である。LPに付属している歌詞を見ると、後にシカゴで活躍したブルースマン達が、ここからフレーズを取ってきたと思われる言葉が多くあるのに気付く。「音」ではなく「言葉」が中心だった頃のブルースがここにあり、リズムはシャッフルではなく2ビートに近く、アイリッシュ系のマウンテン・ミュージックにも通じている。ここで聴かれる豊かな言葉、それら全てがジャクソンのものかは分からない。おそらく、当時のアメリカ南部の庶民達が歌っていた言葉を拾い、編集したのだろう。それはそれで、大きな仕事だったのである。