紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

「LONESOME・隼人」

2004-07-16 06:27:54 | 13・本・映画・演劇・音楽など
去年あたりから、郷隼人さんのことが天声人語にのったりして、世間でもその名前を聞くようになった。それだけ、郷さんの歌に引きつけられる人が多いということだろう。それと同時に、去年の暮れあたりから朝日歌壇に歌がのらなくなったので、どうしたのだろうと思っていた。それから、しばらくして、歌集「LONESOME・隼人」が幻冬社から出ることを知った。歌だけでなく、刑務所生活をつづったエッセイもおさめられているという。その準備に忙しくて歌の投稿ができなかったことがわかった。

歌集を買って、読んだ。殺人を犯して、終身刑の判決をうけ、1984年より米国の刑務所(現在はカリフォルニアのソルダットの刑務所)に服役しているとのことだった。現在55歳。

胸がしめつけられるような歌が並んでいて、涙がこぼれた。エッセイの文章も、気負わず淡々としてユーモアもあり、気品がある。表現したい思いがあふれ出ているような人だと思った。


「LONESOME・隼人」の歌集から

十年の歳月を経て初めての 母の便りに胸がつまりぬ

「イマジン」を何度も聴いて偲びます あの夜は冷たい雨が降ってた

ジャンボ機が真綿を曳いて通り過ぐ 西へ向かえば乗りてゆきたき

獄房に夜長も日永もながながし 短針の如き時間(とき)が過ぎゆく

「ICHIRO!」と囚人仲間に呼ばれれば まんざら悪い気はせぬぞ俺

学びたい聞きたい読みたい知りたいと 囚人我の朽ちぬ欲望

「紅白」も鐘・蕎麦もなく夜が明けて 同じ格子の景去年今年

計画は短期滞在(ステイ)のはずだった 在米三十周年記念日 
 (2004・7月11日付・朝日歌壇)


歌人「郷隼人」さんのこと