蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

リーダシップ  (bon)

2015-07-18 | 日々雑感、散策、旅行

 新国立競技場の建設についてです。

 一昨年(2013年)9月、2020年のオリンピック・パラリンピックは、“東京開催”と決まった時、
日本中が喜びに沸き、折しもスタートを切ったアベノミクスをも加速するかのムードメーカーとなって
いたと思います。

 それがここに来て、メイン会場となる新国立競技場の総工費が揺れに揺れ、昨日(7月17日)夕方、
安倍総理の会見で、“設計はすべて白紙に戻し、ゼロベースで見直すこととし、早急に検討に入るように
指示した”と発表しました。
 オリンピックが具体化するための各組織、委員会はどのようなスタンスで取り組んで来たのか、
どれもこれも、そのリーダシップ欠如、責任所在不明確のまま、あるまじき醜態をさらしてしまいました。

          新国立競技場
            (ネット画像より) 

 

 招致のための準備が各方面で推進され、今回問題となっている、“新国立競技場”の最初のデザインは、
2012年11月に、建築家の安藤忠雄氏が委員長を務めた審査委員会で、建設費を1300億円とする
想定のもとに、女性建築家の作品を最優秀賞に選びました。しかし、このデザインを忠実に再現した場合、
費用が想定の2倍を超える3000億円に上ることが分かり、去年(2014年)5月にまとまった
基本設計では、当初デザインに比し、延べ床面積を25%程度縮小するなどして1625億円まで
費用を圧縮しました。

 その後、競技場の建設に向けて解体作業が進められてくると、建築資材や人件費の高騰なども加わり、
建設会社の試算では、費用が3000億円を超えるとともに、工期も間に合わないことが判明した。
このため国は、デザインの象徴である「キール・アーチ」は残す一方、開閉式の屋根の設置は、
先送りするなどして、費用を圧縮し、建設費は基本設計からおよそ900億円多い2520億円に
なることが、日本スポーツ振興センタ(JSC)による有識者会議(委員長、文部事務次官)で了承された。
これが7月7日でした。 この決定に、アンケート調査などでは、95%におよぶ反対が示され、
政府部内でも議論が噴出していたようで、下村文科相は、この14日に、1046億円の改修費は国が払う
といったり、その前日には、菅官房長官は、いろいろあるが、原案で進めるといっており、
森組織委会長(元首相)などは、50年70年後に名所として残すものとして原案で進めると言明したところ、
7月15日のNHK世論調査では、建設計画に納得できないと答えた人が81%に上り、読売新聞アンケートでも
9割が反対するなど建設費が膨らんだことへの批判が高まり、ついに、昨日(17日午後)安倍首相の
“設計の白紙撤回”となったのです。

 まさしく、無責任構造が露呈したと言わざるを得ません。 組織の“長”や“相”は、いわずもがな、
リーダシップに満ちた御仁がなられているのでしょう。 が、このリーダシップの意味する中の重要な
要素に、広く先を見た決断力があります。 この決断力が曖昧で、場当たり的の感さえ覚えるのですが、
単にその地位(権力)においてイエス、ノーをいうことが決断ではないはずです。 全体と先を見た、
そして国民の代表としての自覚に基づいた判断が伴っていなくてはならないことは言うまでもありません。

“設計の白紙撤回、ゼロベースで検討”は、いかにも一大英断のように発現されていますが、
NHK調査始め国民の反対意見が8割以上を占めたことがそうさせたと思わざるを得ないのですね。
世論調査が出るまでは、取り巻く“長”“相”たちは、みな既定路線を踏襲する発言をしていた。
否定すると問題が大きすぎるので、内心問題があると思いつつ、意に反した行動をとったというのであれば、
なおさら罪は深い。 決断とはそういうものだと思います。もし、世論調査が無かったら、工期が
間に合わないとかなんとかの理由で、原案で進んでいたかも知れない。 そして、何よりも、無責任だと
思われるのは、7月7日の有識者会議の決定時点で、なぜそのような結論となったか(させたか)
有識者も無責任なら、その委員長である文科省事務次官、そしてその長である相・・あたりの
判断基準の信念が疑われてなりません。(デザインを決定してから、2年以上も検討して来たあげくの
白紙撤回なんですよ。ギリギリになるまで、何がなされていたのか?) 

 2012年11月の国際デザインコンクール審査委員長の安藤建築家も、先の記者会見で、そもそもの
問題意識が無かったことが露呈されていました。自分はデザインを選定するという立場であるから、
そこまでコストを詰めなかった・・との発言は、素人ながら全く腑に落ちないのですね。千億円台の
金額が2倍にもなるというのですから・・。 
もう20年近く前になりますが、北九州メディアドーム(小倉競輪場リニューアル)コンペに、
私の会社は、建築家の黒川紀章のチームに入り検討しましたが、工費予算が、確か300億円位の
ドーム型競輪場の企画提案で、ドームの内面全周に、映像スクリーンを円形に貼り付け、
バンクを走る選手を拡大表示して躍動溢れる環境を提案しましたが、そのとき、黒川議長は、
即座に予算を問われ、その金額の大きさが全体予算に照らして、企画案を断念されたことを想い出しました。
これまでにない、新しい面白い、メディアドームに相応しい企画であっても、予算面から棄却された
のでした。

 2520億円という建設費は、直近のオリンピック5か国のメインスタジアムの合計工費よりもまだ
高額であり、その額は群を抜いているのです。 ネットで見ますと、他の建造物では、東京スカイツリーが
650億、横浜ランドマークタワーが2700億、TDLが1580億、TDSは3380億、アベノハルカスが1300億、
H2Aロケットは1000億なんだそうです。

 このブログでは、もっぱら浪漫寄りのテーマを選んでいますが、今回は、やや路線を変えてしまいました。

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする