じゅかいえ と読み、仏教各宗派とも最重要行事の一つに位置付けられていて、
「戒」すなわち「戒法」とは、人として正しい生き方をし、仏様との約束を守る
規範のようなもので、これを僧侶から授かる儀式のことを指しています。
今さら何を‥という方も多いかもしれませんが、曹洞宗両大本山(永平寺、総持
寺)では、4月に授戒会が行われていて、横浜市鶴見の総持寺は、新型コロナがこ
こに来て第4波となり急遽中止の案内がありましたが、昨年中止された福井県の永
平寺では、今年は実施されるようです。 この(4月)23~29日までの1週間永平寺
に泊まり込んで、僧侶と共に暮らして「菩薩戒」を受けるのです。
永平寺勅使門
(ウイキペディアより)
何年か前に、ここ永平寺の授戒会に行かれた方の体験記事がネットにありました
ので、その模様などを参考に、どんなことをするかの概要を拾ってみました。
この人は、初めて参加されたようですが、この時80名ほどの参加者のうち初参加
は1/4ほどで、何回も参加されている人が多くいて、中には8回目、16回目という
人もいたそうです。トレーニング姿でもよいし、ベテランは作務衣や絡子などのい
で立ちの人もいたとか。年配者が多く女性が多かったそうです。外国人もみられた
とか。 授戒会はいわゆる「戒名」をいただく儀式?なのに、なぜ、何度も参加さ
れているのか? の疑問を持たれていました。戒名は一度でいいですものね。
「戒名」というのは、冒頭にあります「戒」を授かるわけで、『戒名とは本来、
授戒会を受けた方がその証に授かる仏弟子(ぶつでし)としての名前であって、死後、
葬儀の際に贈られるのを本義とするものではありません。』 とあるように、亡く
なってからあわてて遺族が菩提寺にお願いして付けてもらうものではなく、生前か
ら自ら授戒会へ出向き、自分で戒名をいただく人も多いようです。
で、体験談に戻りますと、本堂に集まり、一連の儀式が始まり、読経に入る頃に
は僧侶は100名近くになっていたそうです。
また、説戒という講話があります。説戒師を囲んで車座になり、講話を聴くので
す。道元禅師の言葉など難しい話もあったようですが、例えや事例を交えて分かり
やすい話もあったとあります。
(ネット画像より)
本来は、食事、入浴、東司(トイレ)は三黙道場(私語禁止の修行)とされてい
ますが、授戒会では、食事中のみ私語禁止で、入浴、トイレは自由とされていたそ
うです。夕方からは晩のお経。とにかく読経の繰り返しだそうで、僧侶たちの読経
に合わせ、修行のつもりで皆、一心不乱にお経本を読むのだそうです。
食事を飯台(はんだい)と呼び、朝食・昼食・夕食をそれぞれ小食(しょうじき)
・中食(ちゅうじき)・薬石(やくせき)といい、それぞれ修行のひとつとして作
法通りに進められる。お弁当と汁椀の精進料理で、三黙の一つで、みんな黙々と食
べ、5分もすると「さいしん」と声がかかり、汁椀のお代わり。お代わりをしない
人も、希望した人が終わるまで箸をおいて待っている。3分ほどすると「じょうすい」
と声がかかり、お茶の給仕が始まる。このお茶で、お椀、箸を洗う。 2分ほどで
「せっすい」と声がかかり残したお茶を回収しに来る。餓鬼や衆生に施すとあります。
(ネット画像より)
午後7時からは法堂での五十仏を礼拝する法要となり、これは4日間あり一番の苦
行だとありました。立って拝礼・額づいて拝礼を50回以上も繰り返すため途中で
息が切れる人や、ようやく終わってもふらふらとなる辛い修行のようだそうです。
この礼拝法要が終わると、場所を移動して法話を聞き、その間に雲水たちは法堂
に布団を敷き、参加者たちは 9時ころに、法堂に来た順番に布団が決められ、そそ
くさと歯磨きなどして9時10分には消灯。
朝、3時10分に起床、30分後から朝の座禅が始まり、10分ほどで終わり、朝の法話、
朝の読経があり、7時ころに小食(朝食)となり、それが終わると一列になって
「南無釈迦牟尼仏」と唱えながら巡堂とよばれる歩行禅に入る。 午後は、講義
(説戒)、3時ころ入浴、晩のお経、夕食・・と淡々と繰り返してゆくのです。
この間、さらに詳しくはいろいろな行事があり、これらが滞りなく終了すると、
大禅師の前で一人づつ懺悔し、滅罪してもらい、いよいよクライマックスの正授道
場で、「この戒を持(たも)つや否や」と大禅師から問われ、皆さんで「能く持つ
(よくたもつ)」と宣言・誓約する。そして、大禅師から一人づつ念願の血脈(け
ちみゃく)を授かると、これに戒名が書かれていて、初めて自分の生前戒名がわか
るのです。
参加者は、お別れの時、それぞれに親しくなっていて「また来年!」などといっ
て別れるようです。そんなにいくつも戒名をもらっても仕方ないと思いますが、こ
の1週間の体験によって、自我がすう~と抜けて清々しい気持ちになるのでしょう。
この感覚、何となくわかるような気がします。
私は、永平寺には、何度かお邪魔していますがいずれも観光で、雲水の案内で寺
内を巡るだけで、授戒会には参加したことはありませんが、かって30年ほど前に、
会社の部長連中の研修の一環として 9名で、横浜市、鶴見にある総持寺で、中食付
き半日座禅コースを受けたことがありました。 わずか半日でしたが、日頃の堅い
苔が落ちたような感じを今でも覚えています。
戒名についてのお話です。
多くの人が知らない、人生の指針を定める大切な儀式【生前授戒会】