蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

トリチウム  (bon)

2023-09-03 | 日々雑感、散策、旅行

 福島原子力発電所が最近「処理水」を海洋に放出したことで、地元漁業関係者らは
困惑し、中国は日本からの海産物の輸入を禁止しました。韓国でも過激なグループは
反発しています。

 政府は、科学的根拠に基づいて日本の放出トリチウム濃度を基準6万Bq/ℓの1/40の
1500Bq/ℓに希釈し安全性を保障し、IAEAのお墨付きもあり、世界の原発からも放出
されているし、十分検査をし問題はないとしています。ただ風評被害による損失は
補償するとして、漁業関係者を抑え込んでいる格好に見えています。

 中国などが騒いでいるのは、元々過激であり、今日的な適対関係からの処置とも
取れますが、日本政府の対応、中国ということではなく本当に安全性が確保されて
いるのかに疑問が残ったままの処置のような印象もあります。

 政府、経産省、経産省資源エネルギー庁、環境省、水産庁、復興庁さらには東電
の関連HPとGreen peaceやFoE(国際環境NGO)などのHPを見ると、それぞれの意見が
対立というか疑問を呈していて、素人筋にはどちらの言い分が正しいのか判別でき
ませんでした。

 ネットや新聞報道などからだけの情報で、この事案について調べてみましたので、
そのエキス部分をここにご紹介し、最後に自身で思ったことを少し・・。

            トリチウム
         (ヤフーニュースより)

 【状況】

 8月24日午後1時ごろ、東京電力が、福島第一原子力発電所にたまる放射性物質を
含む処理水の海洋放出を開始した。現在、廃炉作業中の東京電力福島第一原発では、
熱を発し続けている核燃料を冷やすため、崩壊した原子炉建屋内に毎日数百トンの
水を注入しており、この水が、核燃料や原子炉構造物が固まったデブリに含まれる
放射性物質に触れ、高濃度に汚染された水となる。また、山側から海側に流れている
地下水が原子炉建屋に流れ込んでいて同様に汚染水となる。

 1日に発生する汚染水は94〜150トンになり、これを敷地内のタンクに溜めていて、
2022年で総量は130万トンを超えている。この汚染水から多核種除去設備 (ALPS)
で放射性物質を分離させた水を、東電や政府は「処理水」と呼び、その中には、
ALPSで除去できないトリチウムや炭素14が残留する。さらに、このほか除去すること
になっているストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99なども
基準値を超えて残留していることが指摘された。 そのため、東電はタンクの水を
二次処理してもう一度放射性核種を取り除き、海水で希釈して海に放出するとしま
した。これによって「処理水」の定義が2021.4.1に変更されました。 処理水は、
「トリチウム以外の核種(放射性物質)について環境放出の際の基準を満たす水と
する。」と変更されました。

 ここで分かりますが、トリチウム以外の放射性核種をすべて完全に取り除けるわけ
ではないということです。いくら基準値以下にして放出するとしても、汚染された
水であることには変わりがないのです。しかし、トリチウムはもともと酸素と結び
ついてトリチウム水として存在しており、これを汚染というのは誤解を生じやすく
通常海水中のトリチウムは数Bqより少ないが存在しています。 ここで、放出される
処理水に合計でどれくらいの量の放射性核種が含まれているかが明らかにされていな
いのですね。

 また、海洋に放出する以外の処理方法として、大型タンク貯留案、モルタル固化
処分案などが提案されたようですが期間、費用等からこれらの検討はされずに海洋
放出が決定されました。

【トリチウムとは】

 自然界に普通に存在する水素は、原子核に陽子1つの軽水素(¹H)で、陽子1つと
中性子1つからなる重水素(²H)が安定して存在し、三重水素(トリチウム)は、
陽子1つに中性子が2つ(³H)からなり、不安定なので微量しか存在しない。しかし、
天然においても一定量が常に存在しており、たとえば体重60㎏ 程度の人の場合、50
ベクレル程度のトリチウムを体内に保有しているそうです。 地球環境において、
酸素と結びついてトリチウム水として広く拡散分布しているとあり、海水中ではその
濃度は通常1リットル当たり数ベクレル(Bq)より少ない程度だそうです。

 トリチウムが出す放射線のエネルギーは非常に弱く外部被爆は考えられないが、
体内にとりこんだトリチウム水は半減期が10日程度で、速やかに体外に排出される
とあります。しかし、タンパク質や炭水化物などの有機物の中の水素と置き換わる
有機結合型トリチウムはそのまま体内に留まる可能性が強いがその放射線量は他の
放射線物質より小さいようです。しかし、トリチウムを大量に扱う製造技術者に内部
被ばくによる致死例が報告されているとあります。

【経産省】

 まず、ALPS(多核種除去設備)処理水の説明があり、トリチウム以外の放射性
物質を、安全基準を満たすまで十分浄化することができる性能を持っているとあり、
その安全基準(規制基準)とは人体への照射線量が「年間1ミリシーベルト未満」に
保つよう国内法令で定められている。ある条件のもとで、これを満たす放射能基準
を1500Bqと定め、これを遵守するよう運営し、トリチウムについても安全基準を十分
満たすように海水で大幅に希釈されるとありますが、この部分が明確に規定されて
いないようです。(あいまい)つまり、トリチウム以外で1500Bq以下の基準は分かり
ましたが、肝心のトリチウムに対する基準値が規定されていない。

 しかし、結論的に、国連の機関であり、原子力について高い専門性を持つIAEAも、
ALPS処理水の海洋放出は「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線
影響は無視できるほどである」と、包括報告書で結論付けています。と安全性を強調
されています。

   

   

   

【経産省・資源エネルギー庁】

 ALPS処理水の定義を2021.4.1に変更しています。トリチウム以外の放射線物質
が約7割のタンクに残っていることから、風評被害を避けるために定義を明確にした
とされていました。この定義変更によって、従来のALPS処理に「二次処理」が
追加せれ、トリチウム以外の核種を取り除くこととされたのです。

【環境省】

 トリチウムの性質の説明、安全性が強調されていました。トリチウムを含む水は、
生物学的半減期が10日で、体内に取り込んだ場合も速やかに体外に排出され、特定
の臓器に蓄積することもありません。 →有機結合型トリチウムの説明はなかった。

【水産庁】

 トリチウムの説明。「水のなかま」などの身近な語句で安全性を強調。

【復興庁】

 トリチウムの放射エネルギーが微小で問題ない。Q/A形式で記事が構成されてい
ましたが、正しい回答でなかったり、安全性をことさらに強調したお粗末なHPで
した。

【東電】

 ALPS処理水の海洋放出に当たって、国内法による安全基準や国際法・国際慣行
等に基づいて人や環境への影響を評価・測定し。安全性を確認するとともに公衆や
周辺環境、農林水産品の安全を確保する。海洋放出を事故前と同じ、22兆Bq/年とする。
 また、再浄化処理(二次処理)の設備は汚染水に含まれる62種類の放射線物質を
国の基準値以下の濃度とする。と、ポイントをしっかりと抑えた記述であるが、肝心
の基準が示されていない。あと、処理装置、豊水設備等について記述がありました。

            

 さらに懸念を表明している団体等の論調を以下に要点だけ示します。

【Green peace】

 国や東電が主張し喧伝している「科学的に安全」とは、実は「科学的に」ではなく、
科学論文の「安全かもしれない」という一方的な結果だけを集めて、国と東電が
「恣意的に」主張しているだけにすぎない。

 トリチウムがベータ線放出核種で「弱い放射性物質」という考え方は、外部被ばく
にのみ適用されるものです。トリチウムが摂取され有機物に取り込まれて、有機結合
型トリチウム(OBT)として濃縮された場合、内部被ばくはさらに大きくなります。
トリチウムが低いエネルギーを放出することは、必ずしも影響が小さいことを意味
しない。

 トリチウムとがんに関する現在の知識は、十数件の実験的研究と、ほんの一握りの
疫学的研究があるだけです。すなわち、トリチウムががんを引き起こすことはない、
と主張する科学的根拠はないということです。

 

【FoE】(国際環境NGO)

 現在の処理水は、事故前(2010年)の22兆Bqから(2021.5)時点で780兆Bqと35倍
の放射能をALPS処理するというが、トリチウム以外のヨウ素、ストロンチウム、
セシウム、プルトニウム他を含めた放射線物質の総量が示されていない。(記事では、
2.2兆Bqで、350倍とありましたが、22兆Bqの誤りだと思います。)

 毒性については、体内に入った時に問題が残る。さらに、他の原発と事態が異なる
のは、今回はデブリに触れた水であり、通常の原発とは違う。トリチウム以外に多
種類の核種が含まれている。年間1ミリシーベルトの基準から、トリチウムから年間
0.2ミリシーベルトとして、1500Bq/ℓが決められているがこれは妥当か? 

 また、海洋放出以外の処理方法として、大型タンク貯留案やモルタル固化処理案
は検討されていない。福島県の多くの自治体が海洋放出反対を唱えていたが、公聴会
は1度だけであった。地下水流入を防ぐ対策も検討されていない。IAEAは日本政府
の見解を繰り返すだけである。

               

 生煮えの感は否めませんが、ざっとこのような状況で、やはり、政府の行動に拙速
感があり、福島県はもとより、関係事業者組合さらには、近隣諸国との意見交換など
事案の大きさに比してコミュニケーションが極めて貧弱な印象を受けます。それゆえ、
独断専行のきらいが否めず、ともすれば誤解や反発を招く元ともなり得るのではない
か。 よく聞き、丁寧に説明を行う内閣は看板だけかもしれないとの不安すら与えて
いるのかもしれません。

 

 外野席から何を言っても始まらないのかもしれませんが、本当に未来に禍根を残
さないかどうか。10年以上経って未だ、ジブリを取り出す術すら具体化出来ていない
頼りない政府が、海洋放出にだけ力が入っている?ように見え、それが正しいのか?
そこが疑わしいから騒ぎが大きくなっているのではないでしょうか? 関係筋に補償
金(税金)を支給して口封じをするその場しのぎではないでしょうね。

 

注)ベクレル(Bq)は、放射能の単位で、放射線を出す側に着目した強さの単位で、シーベルト(Sv)
は、人が受ける被ばく線量の単位で、放射線を受ける側、すなわち人体に対して用いられます。
 1Bq=α×10⁻⁵mSv  αは、放射性物質による係数。例セシウム137は、α=1.3

 

 

Sad Angel

 

 

 

コメント (2)
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