突然ですが、舞というと、能楽のようなイメージがしますし、踊りは、阿波踊りや盆踊り
などにぎやかなイメージがしますが、どうなんでしょうか? 舞踊という言葉もあり、
舞踏ということもありますから、この辺のことがどうなっているかちょっと調べてみました。
なぜ、このようなことを取り上げているかといえば、少し前に届いた会報の中に、「舞と
踊り」(長谷川晃氏、阪大名誉教授)なる記事があり、氏の体験も含めた一つの定義みたいな
内容が書かれていました。 これに触発されて、一般的にはどのように認識されていてこれら
の流れはどのようなものであるか知りたくなったからでした。
前置きが長くなりましたが、例によってネット調べで、私なりに理解した(であろう)こと
をかいつまんで記事にしました。
ウイキペディアに『舞とは、日本舞踊のうちメロディーに合わせた旋回運動を主としたもの』
『古典的な神楽に大陸からの渡来芸が加わったものとされ、民衆の中から生まれた踊りに較べ
て専門的技能を要するものである。伝統芸能としては能楽の要素として残される。』
一方、
『踊りとは、日本舞踊のうちリズムに合わせた跳躍運動を主としたもの』『人間の喜怒哀楽を
表すのに適した音楽的な動きであり、舞が専門的技能を有する少数で演じられるのに対し、
素人が群れをなす場合が多く、場も特殊な舞台などは必要としないという特徴がある。』
難しい表現ですが、ブリタニカの中にわかりやすい分類がありました。、
・ 舞ふ (まふ、まう) … 上下動を伴わない。その場でくるくる舞う・回る。
・踊る (をどる、おどる) … 上下動を伴う。飛び跳ねて踊る・躍る・踴る。
とあり、つまるところ、舞は、すり足でシズシズと舞う、能のあのスタイルで、踊るは、飛び
跳ねたり、にぎやかな盆踊りが代表格なのでしょう。
室町時代から江戸時代初期あたりまでは、舞といえば幸若舞(こうわかまい)をさすことが
多いとありましたが、まさに今日の能を思わせるものですね。 また、舞は今日、重要無形
民俗文化財として全国多くの地で指定されているようです。 そして、その他の舞としても、
稚児舞、翁舞、地唄舞、獅子舞など多くの芸能が伝承されています。
舞
(ウイキペディアより)
踊りの方は、出雲阿国らの歌舞伎踊りがあり江戸時代に大流行しましたが、これは語源の
「カブク」が示すように次第にみだらな要素が取り締まりの対象となり、とうとう禁止となっ
てしまうのです。300年近く暗黒の時代を過ごし、明治になって男性だけの芸能として「女形」
を配した現在の歌舞伎のスタイルとなって復活したのです。
なので、踊りは舞よりも新しいとの見方がありますが、もともと、踊りは、民族的、宗教的
なものとして生まれ発展してきたとみれば、踊りの起源がより古いかもしれません。
盆踊り
(ネット画像より)
舞と踊りはわかりましたが、西洋のダンスが日本に入ってきて、これの訳語から一部混乱を
きたしたのです。
『日本で、はじめdanceの訳語として、舞(狭義の「ダンス」)と踏(「ステップ」)を組み
合わせた舞踏(ぶとう)が使われた。しかし、坪内逍遥の「新楽劇論」(1904年(明治37年))
で舞踊(ぶよう)という言葉が使われるようになり、現代ではこちらの方が一般的である。
舞踊は、坪内逍遥と福地桜痴による造語で、日本の伝統的な舞と踊りを組み合わせたものであ
る。』
それで、舞と踊りが組み合わされて舞踊となったために、明確に区別されないことが多くなっ
たと思われます。 また、日本伝統の「舞踊」をダンスの翻訳語である「舞踊」と区別する
必要性から、「日本舞踊」という表現が用いられるようになったとありました。 京では舞妓、
芸妓といい、江戸では踊り子なんですね。
ちなみに、ダンスについては、ウイキペディアに以下のようにありました。
『ダンスは伴奏に合わせて演じられる一連の動作である。ソロ、デュエットあるいは集団で
演じられ、祭りや儀式の場においても行われる。太古から神々への礼拝、国事の祝い、歴史の
伝承、言葉を用いない権力への抵抗、戦闘前の行事といった役割から 身体を動かして自己を
表現し、感情的、精神的、肉体的に自らを称賛したり、労働の際に共同体の協力を得る手段
としても、またあるものは長い年月を経て洗練された舞台芸術となっている』
蓼科農園の近くの、尖石縄文考古館に、土偶、国宝『縄文のヴィーナス』に続いて同じく
国宝『仮面の女神』が展示されていますが、会報記事の長谷川氏が かってここを訪問された
ことを取り上げた次のような下りがありました。『逆三角形の仮面をつけた女神が、紀元前
4世紀ころ、すでに面をつける風習があったのは驚きだ。お能の起源はやはり縄文時代であり、
日本固有の文化を象徴していることがうかがえる。この女神像が当時の舞を現わすのではない
かと想像すると一段と興味がわく。』
仮面の女神(国宝)
(ネット画像より)
最後に、余談ですが、踊りを「おどり」とか「をどり」と書くことがあります。京おどり、
都をどりなどですが、その違いが気になりましたが、なんの、単に「を」は歴史的仮名づかい
をして、歴史を強調している以外の意味はないようです。
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