空襲が激しくなると、福島の寒村にも都会から親戚縁者を頼って疎開してくる人々が多くなった。そうした人々は言葉も違うし、持ち物も田舎者には珍しい物を持っていた。近所に越してきたK兄さんは、美しい模様の入ったビー玉を沢山持っていた。Aは、それが欲しくてたまらない。ビー玉遊び(相手の玉に当てると自分の物になる)をするにも玉がない。Aはカンプライモ(ジャガイモのこと)で勝負しようと提案する。Kさんたちは食べ物に不自由していたのを知っていたからである。早速試みたがカンプラはまっすぐに転がらない。相手のビー玉の餌食になるばかりである。瞬く間にカンプラがなくなる。何度か納屋に駆け込んでカンプラを持ち出す内に,母に見つかり叱られたのを思い出す。疎開者の中には栄養失調でなくなる気の毒な方もいたのである。厳しい時代でした。