東京都の新型コロナウイルス感染者は、連日300名台、400名台とまったく収束の気配が見えません。また、以前「東京問題」と政府首脳が言っていましたが、今では大阪、愛知、神奈川、沖縄など全国各地で100名台、200名台と、「全国問題」となっているのは明白です。
にもかかわらず、政府、各都道府県の対応は、ほとんど具体的なものはありません。
政府は、緊急事態宣言の発出には慎重姿勢を崩さず、一方で経済を回すGo Toトラベルキャンペーンをやめる気はなく、ちぐはぐな対応が目立ちます。安倍首相に至っては、つい最近までだんまりを決め込み、国民に向けてのメッセージすらありませんでした。都道府県知事も打ち手が限られるのは分かりますが、それぞれ勝手に効果が期待できない「~宣言」を言っているだけです。一番影響力が大きい小池東京都知事も、毎日感染者数を発表するだけで、まったくの無策です。
国家の危機的状況で、政策判断、決定をすべき政治家がまったく無能無策、機能不全としか言いようがありません。経済を回さないといけないというアクセルと、強制力がない法的側面とない袖は振れないという財政的側面からのブレーキを同時に踏んで、立ちすくんでいるという状況です。
組織論、戦略論の古典で『失敗の本質ー日本軍の組織論的研究』という書籍があります。戦争の是非を検討するものではなく、純粋に日本軍の作戦を、組織論、戦略論の側面から検討したものです。その中で、日本軍の特質として、「戦力の逐次投入」ということがあります。ガダルカナル島での防衛戦に関して、問題の本質を見誤り、戦力投入を小出しにして、結果として、トータルでは大きな戦力を投じながら、島の防衛に失敗したというケースです。
今回のコロナ禍でも、同じ失敗を繰り返していると思います。もちろん、財政的に厳しいことは誰もが承知をしています。しかし、この状況を収束させずに、ダラダラと今の状況が続く、あるいは、もっと状況が悪化すれば、今以上の財政的な投入をせざるを得なくなります。つまり、戦力を逐次投入をしていたら、将来もっと大きな被害が出るということです。
第2波の兆しが出始めた頃、感染の火種は「夜の街」でした。ここに休業補償をするのは、財源の問題や他の事業との整合性など、乗り越えなければならない課題があったのは確かです。しかし、この時の問題の本質は夜の街にあり、ここに集中的に資金を投じて、封じ込めをすれば、今のような拡大は避けれらたと思います。それを出来るのは役人ではなく、政治家です。現に、台湾や韓国、ニューヨーク市長など、抑制に成功しているところは政治家が的確に資源の集中投下をしています。
しかし、日本はかつての日本軍の失敗の頃とまったく変わっていません。決断する政治家はおらず、戦力の逐次投入すらしておらず、ただただ精神論とお願いをするだけです。これって、本当に戦争中と同じだと恐ろしくなってしまいます。
しかし、こうした政治家を選んでいるのは、間違いなく私たち自身なのです。しかし、今からでも遅くはありません。こうした状況を変えていけるのも、私たち自身ですので、諦めることなく、少しずつでも現状を変えていくしかないですね。