政治家の言葉についての話です。
慎重になれば空疎、話せば失言…打つ手なし
まずはやっぱり麻生さんでしょう。例の「高齢者は働くことしか才能がない」発言です。もう数日前の話ですから、だいぶいろいろ言われていますが、新聞・TVの政治報道的には、麻生首相の発言を野党が一斉に攻撃、首相周辺は訂正とともに発言主旨が正しく伝わっていないと反発といった内容に集約されると思います。これまでの失言騒動もそうでしたが、「発言の主旨・目的と違う失言ばかりをマスコミは面白おかしく報道している」との首相周辺の指摘は事実だと思います。マスコミも高邁な思想を掲げていても、所詮は商売だからです。
しかし、問題は、発言の主旨とは違う脇道の話であれば、所謂失言が許されるのかということです。当然のことながら、言葉が命であるはずの政治家にそんなことが許されるはずもなく、首相周辺の反発も所詮論理のすり替えであって、泣きごと以外の何物でもありません。どんなに言い訳をしても、心の底に、「(若い頃からいろんな遊びを覚え、今でもマンガをはじめ若者の流行も知っているオレにくらべ)一所懸命仕事しかしてこなかった年寄りは今更遊びも出来ないし、仕事しかすることがないんだ」という気持ちがあるからです。マスコミはともかく、大多数の国民は、他者への共感を欠いた、こういう上から目線に頭に来ているのです。ついでに言えば、60、80過ぎて遊びは覚えられないというのも、大きな間違いであって、麻生さんのように都心のホテルのバーで飲むような遊びは覚えないでしょうが、60、80過ぎていろんな新しいことにチャレンジする高齢者がたくさんいることは、誰でも知っていることです。マンガを知っていて、ウォーキングをする自分がすごいを自惚れているだけでなく、ここに思いを馳せない限り、麻生首相への支持が回復することはないでしょう(麻生さん流に言えば、今更そういう能力を身につけることは出来ないでしょうから、支持が回復することもないでしょうが…)。
民主党のマニュフェストと自民党のお歴々のヒステリー
先の都議選の結果を受け、今度の総選挙で躍進間違いなしと想定される民主党がマニュフェストを発表しました。現下の経済情勢を色濃く反映している面はあるのでしょうが、まるで社民党か公明党のような「生活防衛」を前面に出したマニュフェストです。これに対して、自民党の麻生首相をはじめ、各閣僚が次々に口をきわめて批判をしました。その批判の中心は、財源が不確かなバラマキで無責任というものです。
私は特定の政治的立場はありませんが、今回の自民党のお歴々の発言はヒステリーにしか見えません(顔は出来るだけ余裕を見せようとしていますが…)。民主党の政策に財源の問題があるのは事実だと思います。しかし、その財源を徹底した「無駄遣いの排除」に求めるのは正論だと思います。ただし、それで全てが補えない可能性もあるので(何しろ敵は日本一偏差値が高い既得権益集団ですから…)、その時には消費税増税の余地も残しておくのがベストのシナリオだと思います。そして、財源問題よりも問題なのは、批判する自民党が自らのマニュフェストも出していないのに、各閣僚が必死になって民主党のマニュフェストを批判していることだと思います。それこそ、後だしジャンケンの無責任さだと思います。自らの言葉に責任を持つのであれば、自らがどうするかを語ってからにすべきでしょう。政策全般を含め自民党がすべてにおいて閉塞感を漂わせているからこその、支持率の低迷です。民主党を批判する前に自ら自問すべきです(冗談ではなく、自民党と打つつもりで、何度かミスタッチで自問等、自問等と出てきました…)。
これまで国民の意識は移ろいやすく、ちょっとしたことで支持率が振り子のように揺れたり、アナウンス効果で、高支持率が伝えられた政党が敗北したりということが起きてきました。今回も選挙戦が長く、何が起こるか分からないと言われていますが、今回ばかりは、政党云々ではなく、政権交代への期待が大きすぎて、このうねりは止めようはないのではないかと思います。なんだかんだ言いながら、国民が政治に関心を持つのは、経済情勢が悪くなった時です。しかも、その時に大多数の国民に直接影響のない公共工事にカネをばらまく自民党よりも、これまで政治にあまり関心がないと言われていた若年層にダイレクトに届く政策を発表した民主党では、残念ながら自民党がどんなにポピュリズムと批判しようが、マーケティング的には民主党の勝利です。自民党はこれまでそうした層は選挙に関係がないと割り切ってきたからこそ、所謂組織票を狙える、既得権益団体向けの政策を打ち出してきて、所謂無党派層は無視してきたのですから(小泉首相以外は)。実際、民主党の子育て支援は、すごいですよね。中学卒業まで一人2万6千円/月、公立高校の無償化など、子どもを抱える家庭には非常に魅力的な政策です。自民党の公共事業で潤う人数より、子どもを抱える家庭の方が多いのは間違いありません。先に言ったように、財源の問題はありますが、子どもを持つことへのインセンティブも働き、決して悪い政策とは思いません(欲を言えば、我が家の子どもがもっと小さい時にこうした政策が出ていればもっと良かったのですが)。これで、子どもがたくさん増えて、散ドラへの入部希望が増えたらいうことありません(ひいては、それが日本の活力につながるのです)。
8月末にどんな結果が出るのでしょうね。今の国民の気持ちは「チェンジ」でしょうね(アメリカだけの専売特許ではありません)。