糖質制限の現状
先月の9日からスタンダード糖質制限(朝食、夕食の主食=炭水化物抜き)を始めて、3週間以上になります。それまでは、朝はおにぎりかパン、昼食は同僚と外食、夕食は自宅でおかずとご飯は少な目で1杯という感じでしたが、今は、朝はゆで卵(または目玉焼き)とウインナーか、ナッツ主体のグラノーラもどきにヨーグルトをかけたもの、昼食はこれまでと同じく同僚と外食ですが、「ご飯少な目」とオーダー、夕食は米は食べずに、おかずに加え納豆か枝豆か豆腐を食べるようにしています。
で、何か変わったのか? 『炭水化物が人類を滅ぼす』では、以下の効果が記されていました。
・高血圧、高脂血症が治った。
・昼食後の昼寝をしなくなった。
・二日酔いしなくなった。
・朝の寝覚めが良くなった。
一つめは、次の健康診断をするまで分かりません(私は高血圧ではありませんが、コレステロール値では高脂血症とは診断されるでしょうね)。二つめの昼寝はしますね(もちろん、休みの日です)。著者は昼も炭水化物を摂っていませんが、私は昼は普通の食事なので。三つめ、四つめの二日酔いしないと、朝の目覚めが良いは、実感しています。酒飲みの私としては、非常にありがたい限りです。加えて、今までお腹を壊しやすかったのが治りました。赤ちゃんが離乳食を始めると下痢しやすいと言いますが、同じ理由なのかもしれませんね。我が家の黒ポメのクロも、たまにゆるくなることはありますが、下痢はしませんしね。
一方で、マイナス面はないでしょうか。禁煙した時のタバコへの渇望感のような飢餓感はありません。もちろん、昼は普通の食事ですし、夜もおかずに納豆を食べるくらいでも、もともと食が細いので、「もっと食べたい」というような気にはなりません。栄養が足りてないというふうなこともないようです。
少し気になるのは、ジョギングをする際のスタミナがないと感じる点でしょうか。言うまでもなく、炭水化物(糖質)はブドウ糖となり吸収され、脳や身体を動かすエネルギーとなるものです。摂り過ぎがいけないのであって、ブドウ糖は人間の活動に必要不可欠です(もっとも、脂質やアミノ酸からブドウ糖を作り出す糖新生という仕組みを持っているので、必ずしも糖質を摂る必要はないというのが、糖質制限の理屈です)。そのため、本格的にランニングをする人は、カーボローディングといって、大会前に集中的に炭水化物を摂取してグリコーゲンをため込むこともあるそうです。ただ、実際に人間が肝臓や筋肉に蓄えられるグリーコーゲンは限度があるので、カーボローディングの効果はよく分からないそうですが、少なくとも走る前に糖質の朝食を摂っているのと、糖質抜きの朝食では、血中のブドウ糖には差が出て、活用できるエネルギーに違いがあるかもしれません。もっとも、再開後のジョギングは休みの日だけなので、全然調子があがっていないので、糖質制限のせいかどうかは分かりません。単なる気のせいかもしれません。今度走る時には、お握りかバナナでも食べて走ってみようかと思います。
反論はないのか…
『炭水化物が人類を滅ぼす』の著者は、当初は反論があったが、最近ではめっきり反論が減り、対論なども出来ないと語っていました。そこで、家にある書物をあさってみたら、メインテーマではないものの、否定的な論調のものが2冊ありましたので、紹介します。
奥田昌子(2016) 『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』 講談社
日本人は炭水化物や砂糖の摂取が減少しており、脂肪の摂取が増えているという疫学的データを根拠に、糖尿病の原因を脂肪の摂り過ぎとし、炭水化物を減らすのは問題としています。しかし、疫学的データは、必ずしも因果関係の科学的根拠とならない場合もあります。相関関係の事例としてよく取り上げられるが、「アイスクリームの消費が増えると、犯罪が増える」というものがあります。これは単に暑くなるとアイスクリームの消費が増えるということと、夏になると犯罪が増えるということの偶然の一致にすぎず、誰も犯罪が増える原因をアイスクリームの消費が増えたせいだとは考えませんが、疫学とは、アイスクリームを原因とするようなことが結構あります。
それともう一つ、「炭水化物の摂取が減ると、少ないインスリンではブドウ糖を十分確保できません。膵臓はインスリンの分泌を高めようと頑張りますが、次第に疲れて機能が低下します」とありましたが、これは素人から見ても誤りなのではないかと思います。というのは、この著者も書いていますが、血糖値が高い場合、それを吸収しようと膵臓はインスリンを分泌し続け、次第に膵臓からインスリンを分泌する機能が低下した結果、多量の血糖が吸収されずに、尿とともに排出されるというのが、糖尿病のメカニズムであり、血糖が少ないのに、インスリンが頑張る必要はなく、ブドウ糖が必要であれば、脂肪やアミノ酸から作ればいいことだからです。話が矛盾しています。
もう一冊はこちらです。
阿部尚樹×上原万里子×中沢彰吾(2015) 『食をめぐるほんとうの話』 講談社現代新書
序の中で、筆者の一人が実体験した炭水化物ダイエットの顛末があります。引用します。
「まず、食事の回数を一日1~2回に制限。朝は起き抜けに市販の野菜ジュースを1杯。昼は何も食べずにブラックコーヒーや水などでまぎらせました。夜は気のすむまでたくさん食べましたが、肉や魚をメインにし、野菜は生のサラダか、野菜炒め、味噌汁の具などとしてできるだけ多く食す。」
結果どうなったか。体重は目に見えて減ったものの、2週間くらい経つと体調に変化が出て、唇の両端がただれ、口内炎もでき、ものが食べづらくなったとのことです。ご飯に対する飢餓感はなくならず、さらに体調は悪化し、朝起きる時は立ちくらみ、便秘はひどくなり、疲労感、倦怠感、脱力感に襲われ、遂に中止したそうです。
しかし、これは炭水化物ダイエット、あるいは糖質制限のやり方が明らかに間違っていますし、そもそも食事の摂り方としても間違っていますよね。そもそも規則正しく三食摂るのが前提でしょうが、朝食の野菜ジュース1本は食事とは言えず、昼食も抜いていたら、実質一日一食ですから、その中でバランスのとれた十分な栄養が摂れるとはとても思えません。こんなお粗末な実体験を序に載せていることもどうかと思いますね。
結論として
私は今のところ、特に不都合は感じておらず、むしろ得ることの方が多いので、このまま糖質制限を続けていこうと思います。
ただし、『炭水化物が人類を滅ぼす』の著者が「肉、魚はどれだけ食べてもいい」と言っていますが、肉はほどほどにして、魚と大豆など植物性タンパク質の方を中心にしていこうと思います。魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が身体に良いと言われますし、食の欧米化により増えているガンなどもあり、肉は食べすぎないようにするつもりです。
そして、炭水化物を摂らない分、葉物野菜や芋類を除く根菜などの食物繊維やキノコ類、海藻類などを摂ることも心がけ、出来るだけ多様な食材を摂るようにしたいと思います。