先日の宮川紗江選手の記者会見に対し、「全部ウソ」、「もう黙ってないわよ」などと発言し、ファックスでのプレスリリースで、宮川選手の発言を一部認めながらも、パワハラに該当する部分は完全否定していた塚原光男体操協会副会長と妻で女子強化本部長の塚原千恵子氏が、一転宮川選手に直接会って謝罪したいと態度を豹変させました。
しかし、本当に謝罪する気はまったくなく、最初のプレスリリースに対して、マスコミをはじめとする世間の反応が圧倒的に自分たちに逆風となっている状況を知り、慌てて火消しに走った印象がありありです。
宮川選手に「誤解を与え」「このような状況に追い込んでしまったこと」についてお詫びしたいということで、パワハラ問題については、第三者委員会の調査結果を待ちたいという内容でした。しかし、宮川選手が求めているのは、パワハラ問題を素直に認め、体操協会の体制を改めてほしいということだと思いますが、今日の塚原夫妻のファックスは、これにまったく応えていません。
今回の謝罪文を読んで思ったのは、顧客からのクレームに対する謝罪に似ているなということでした。そして、変な言質を取られないようにと、明らかに弁護士が監修しているとしか思えない文面です。「今回のような騒動にしてしまったことについてはお詫びしますが、(本質的な問題である)ハラスメントについては第三者委員会の調査に委ねます」と、お詫びしているようで、クレームの本質に対しては詫びていません。
こうした対応は、悪質なクレーマーに対しては正しいものですが、今回の件では、宮川選手はどう考えても悪質なクレーマーではあり得ません。リオ五輪にも出場し、4位入賞に貢献した、バリバリの現役選手であり、本来はいろいろ守られていいはずの選手なのです。
また、パワハラの問題は、世間で騒がれるほど認定されていないのが実態です。何故かと言えば、基準が明確なセクハラなどと違って、パワハラの場合は、仕事における指導との区別がつけづらいということがあるからです。仕事で厳しく指導されたことをもって、パワハラされたと訴える人も多いのです。しかし、今回のケースは、仕事の上司関係ではなく、絶大な権限を持っている協会副会長と強化本部長が一選手を呼びつけて、長時間に渡り詰問ともとられるような言動をすれば、これはパワハラと認定されても仕方がないと思います。
このパワハラ問題について、塚原夫妻はあくまで第三者委員会の判断に委ねるとしていますが、これ自体がまさにハラスメント問題の本質を表わしています。ハラスメントは、受ける側がどう感じているかがポイントであって、している側が「そんなつもりはなかった」は通用しないわけですが、塚原夫妻はまさに「自分たちはそんなつもりはなかったので、第三者委員会の調査に委ねる」と言っているわけです。こんな人たちに宮川選手も謝罪してもらいたいと思うわけもないでしょう。
「権力は腐敗する」。残念ながら、これはかなりの確率で発生する真理のような気がします。株主に監視される企業でも、容易に起こり得るこですが、そうした監視がない、こうした競技団体では尚更ということを改めて考えさせられました。先日も書きましたが、本当に監視する組織が必要な気がします。そして、何よりも一刻も早く宮川選手が練習や競技を出来る環境を整えてほしいものです。